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すゆばなし しばしの物語 002

猫が顔を上げた。耳が平らになったあと、尻尾がだらりと垂れた。部屋の空気が少し揺れて、仏壇に飾った桔梗の青が少し濃くなった。あなたの三回忌は明日ですから、お母さん。遺影の中で微笑む母に声をかけて手を合わせた。気がつけば猫は目を閉じていた。
                               

朗読歌劇そらのおと座付き作家・原田佳夏が書く120字小説を、女優で歌い手の日高恵が読み、作曲家で主宰の杜哲也のジングルに乗せてお届けします。【YouTubeチャンネル】https://youtube.com/channel/UCIX0DuHVDeWDufFVpi5TrkQ