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『君の名は・・・』Vol.3

第二場 海賊船 シェスタの時間

 カモメの鳴き声、波の音。穏やかな感じのシーン。
 暗転幕が開く。箱台、下手奥に階段一つ、上手側に正面向きの階段があ
 る。上手中央寄りに帆を張るための棒があり、下手奥(台上)に手すりが
 ある。
 下手階段の2段目と3段目に葡萄酒の入った樽が置いてある。舞台奥に帆。
 
 レイラ(アストレイア)は棒のあるところに腰かけて転寝をしている。
 自分の叫び声で目が覚める。
 ルドルフ、声を聞きつけて下手前から急いででてくる。

レイラ:うわぁ~~~
ルドルフ:どうした!!
レイラ:いや・・・また、あの夢を見た・・・
ルドルフ:大丈夫か?
レイラ:ああ。あれから3年も経つというのに、私の家族を殺したやつらは
    のうのうと生きている。それを思うといてもたってもいられないん
    だ。

 ルドルフ、うなづく。

ルドルフ:(やさしく説き伏せるように)機会を待つんだレイラ。そう簡単
     にやれる奴らじゃない。
レイラ:わかっている。
    夜、目を閉じると悲鳴が聞こえてくる。あの日の出来事が、昨日の
    ことのように蘇る。父は姉たちを守り、母は弟を抱きかかえてい
    た。
    武器を持たない彼らを奴らは皆殺しにしたんだ。
ルドルフ:レイラ・・・

 下手舞台奥より、手に宝石を持った海賊たち、奇声を上げながら登場す
 る。

グラナダ:イヤッホー!今日の戦利品はすごいぜ。ほら、見ろよ!

 グラナダ、レイラに宝石を見せる。
 レイラはその中に姉のネックレスが含まれていることに気づく。

レイラ:あっ、これは!

 レイラ、グラナダからネックレスを取り上げ、手に取って握りしめる。

グラナダ:なんだよ。お前そんなものに興味があるのか? こっちの方が価
     値があると思うけどな。
レイラ:グラナダ、私にこれをくれないか?
グラナダ:いいけど、大将に聞いてみないとな。

 コルドバ、舞台奥よりマーニャと共に歩いてくる。

コルドバ:グラナダ、くれてやれ。(と、アゴで示す)
     まさか、お前さんがしようっていうんじゃないだろうな?
マラガ:へぇ~じゃ、これか?(と小指を立てるて笑う)
レイラ:そんなんじゃない・・・
マーニャ:兄さんたち、からかうもんじゃないわ。
レイラ:これをしていたのはどんな奴だった?
グラナダ:さぁ・・・どんな奴って言われても普通の貴族さ。
カディス:そう、俺たちは貴族の船しか襲わない。
マラガ:いい海賊なんだ。
マーニャ:あまってるところから、ちょっとおすそ分けしてもらってるだけ
     よ。
コルドバ:しかし、以前と比べると宝石の量が異常に増えている。
     殺された王族の持ち物がオークションにかけられているって噂
     だ。
レイラ:なんだって!
カディス:市民は今日食べるパンやミルクに困っているというのに、貴族は
     チャラチャラした格好で夜通し舞踏会で踊っているって寸法よ。
マラガ:まったくいやんなるね。
グラナダ:だから、俺たちがこうしてもとに戻しているんじゃないか。
マラガ:その通り!
コルドバ:さあ、今日は飲もう!明日になったら街へ行くぞ。
3人:アイアイサー!(3人とも少しづつ異なるポーズでコルドバに敬礼)

 マラガとマーニャ、上手にコップを取りに行く。下手階段の樽から葡萄酒
 を酌み、手渡しで回していく。海賊たち飲んで歌い踊る。

 M2 俺たち海賊

 俺たちゃ海賊だ イヤッホー イヤッホー
 悪を倒し 弱きを守る
 俺たちゃ海賊だ イヤッホー イヤッホー
 ここはすばらしい 太陽の国

 飲め 飲め 酔うまで飲め
 気が付きゃ次の朝が来る

 俺たちゃ海賊だ イヤッホー イヤッホー
 いきで楽しい 海の男
 俺たちゃ海賊だ イヤッホー イヤッホー
 強くてたくましい 船乗りさ

 飲め 飲め 酔うまで飲め
 気が付きゃ次の朝が来る

 海賊たち、酔いつぶれて寝てしまう。

マーニャ:あらあら、寝ちゃったわ。
コルドバ:困ったやつらだ。
レイラ:でも、気のいい人たちです。
 
 レイラ、下手前より、ふらっと上手花道の方へ歩き出す。

ルドルフ:レイラ、どこへ?
レイラ:少し夜風にあたってくる。
ルドルフ:気をつけろよ。

 レイラ、わかっているというように、右手を振る。
 下手より歩いてきて歌う。舞台上薄暗くしてレイラにピンスポット。

 M3 誓い

 この宝石は姉さんのもの 何故ここにあるのだろう
 今ここに生きている私 家族を殺され復讐を誓った
 憎しみ それだけが 私を支える
 つぶれそうになる 弱い心

 いつか必ず 成し遂げてみせる
 平和な日々が訪れるように

 最後のメロディーを残しフェイドアウト。
 レイラ上手に退場。暗転幕閉じる。