『彼女の行方』【第3話】

「思い出の場所」

自宅マンションに戻って
写真をテーブルに出してみる。

彼女はいったいどこへ行ったのか。

紙袋に入っていた写真は7枚
出かけた時に撮ったツーショット写真・・・

野本春美は今年の春受け取ったと言っていたから
旦那の目に触れないために預けたということはなさそうだ。

これらの写真だけ抜き出しているのには
何か意図があるのではないか

そう思えてきた。

だとしたら理由は何だろう・・・

奈緒は几帳面で一緒に暮らしていた頃は
写真は基本アルバムに収めていた。

アルバムに入れる時は
時系列にするよな

ん、待てよ・・・

それか？

別れた時に奈緒がアルバムごと持って行ったので
順番が分かるようなものはここには残っていなかった。

蓮は記憶を辿りながら
遊園地・水族館・旅行・・・

ひとまず7枚の写真を並べ替えてみる。

同封されていたパズルのピース
これも何かのメッセージなのだろうか・・・

まったく見当もつかない。

「最初はこれだな」

1枚の写真を手に取る。

付き合いたての頃に出かけた遊園地
メリーゴーランドの前で撮ったものだった。

蓮はひとまず写真の場所に行ってみることにした。

休日のせいか家族づれが多い。
男一人で入るのは場違いな気もしたが
奈緒の行方を捜すためだ。

気を取り直し
チケットを手に中へと進んだ。

あたりを見渡すと
アトラクションは以前とさほど変わっていない。

インフォメーションで奈緒の写真を見せてみたが
さすがに来客数が多すぎてわからないという回答だった。

まぁ仕方ないよな。

当時、メリーゴーランドの前で迷子を見つけ
二人で子供をインフォメーションまで
連れて行ったことを思い出した。

泣いている子供に
やさしく話しかける奈緒

子供はたどりつくまでの間に
笑顔に変わっていた。

念の為メリーゴーランドのスタッフにも聞いてみる。

「そのお客さんなら2週間くらい前に見ましたよ。この写真と同じ赤い服着てたんじゃないかな。」

パレードが始まる時間帯で空いていたのと
一人で3回ほど乗っていたため

よほどメリーゴーランドが好きなんだな
と思って覚えていたとのことだった。

奈緒はここに来ていた。

だとすると何かメッセージを残しているのではないか・・・

見当違いかもしれないとは思ったが
遺失物預り所に行き

「あの、ここ2週間くらいの落し物で
パズルのピースが届いていませんでしょうか？」

と尋ねてみた。

「あっ、もしかして藤咲さんちのお父さんですか？」

「？？？」

どうやら10日くらい前に奈緒から確認の電話があり

「子供が大事にしていたものなので、
取りに行くから残しておいてほしい。」

と頼まれたということだった。

パズルのピースが入った巾着は
メリーゴーランドのユニコーンのツノに引っかかっていたらしい。

奈緒のことだ
忘れものとして発見されるところまで
見届けていたのではないだろうか。

「お子さんのパズル見つかって良かったですね」

と笑顔で返された。

奈緒は藤咲と名乗っていたようだ。

巾着の中身は2ピース

手元にあるのは四つ角のうち3ピース
パズルを完成させろということなのか。

彼女を探す旅はまだ始まったばかりだった。

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