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『彼女の行方』 【第8話】

『きっかけ』

「あっ、この子、漣の好みでしょ」

「えっ? そうかなぁ・・・」

会社の歓送迎会の写真を見ていると
奈緒が突然言い出した。

目が大きく凛としていて、
どちらかというと中性的で奈緒とは正反対のタイプだ。
今年連の部署に配属になった新入社員だった。

奈緒に言われるまでまったく意識したことがなかった。

「彼女がいるのは知っているけど、好きになっちゃった。」
仕事帰りに食事に誘われ告白された。

今思えばどうしてあの時誘われるがまま食事に行ったのか。
断るという選択肢もあったはずだった。

もしかしたら俺自身もすでに彼女に惹かれていたのかもしれない。
仕事で遅くなったからと、時々外泊するようになっていた。

奈緒との生活に何の不満もなかった。
むしろ家事一切を引き受け
早く帰りたくなる家にしてくれている奈緒に感謝していた。

刺激が欲しかったのか。
自分のもともと持っていた性癖のせいなのか。

奈緒と付き合う前はフラフラと日々
花の蜜を集めるハチのごとく飛び回っていた。
その先に捧げるべく女王バチはいなかったけれど・・・

特段気にしたことはなかったが
仕事はできるが人間関係と生活環境が酷い。

あいつには気をつけろ
と当時陰口をたたかれていたのも知っていた。

まぁ、おおよそどの話も残念ながら事実だった。

だから彼女なんて作る気はなかったんだ。

でも、奈緒と出会って俺は自分が変わったと思っていた。
いや変わろうとしていたのか
いまとなっては自分でもよくわからなかった。

移動中窓の外を眺めながら
昔のことを思い出していた。

すべては俺がしたことだ。
彼女を壊したのは間違いなく俺だった。

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