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『彼女の行方』【第5話】

「クリスマス」

蓮は会社に連絡して休暇を申し出た。

もともと自宅で仕事を片付けることもあったので、最低限の業務はこなすという条件付きで、1週間は出社せずに済むようにしてもらった。

週末の休みだけで探すのには無理があった。

部長が電話の向こうでブツブツ言っていたが

「家族が体調不良なのでスミマセン」

と半ば強引に話を進めてしまった。
まぁ一人暮らしなのは周知の事実なので、信憑性のない言い訳だ。

奈緒は確実に証跡を残している。
これは俺に対するメッセージだと思った。

携帯電話を持って出かけていない以上
奈緒の居場所を探すヒントは
手元にあるパズルのピースと写真だけ。

すぐ探しに行かなければ見失ってしまう気がした。

2枚目の写真の場所へたどり着く。

奈緒と最初のクリスマスを過ごした
港町にある夜景がきれいなホテルだった。

チェックインの時、念の為預かり物があるか聞いてみる。
特にないとの回答だった。

部屋に入って荷物を置き
手元の写真を見ながら当時を思い出す。

街はクリスマスのイルミネーションで彩られ
特別な時を演出していた。
そんな中手を繋いでホテルまでの道をゆっくり歩いた。

ホテルでの写真はルームサービスを頼んだ時にボーイに撮ってもらったものだった。

奈緒の少し茶色がかったふんわりした髪の毛がキラキラしていた。

シャンパンを片手に大きな窓の前に腰かけながら外を眺める。

「わぁきれい。星空が下にあるみたい。」

「気にいった?」

「もちろん。蓮はちゃんと私の好きなものわかってくれてる。」

グラスを傾け見つめ合う。

「メリークリスマス」

ここは2人とも気に入っていたのでその後も何度か来ていた。

仕事を片付けたあと、外に行く気にもならずルームサービスを頼んだ。

夜景はあの時と変わらない輝きを放っている。
違うのはここに俺が一人でいるということか・・・

翌日写真に写っている観覧車に行き、
奈緒が行方不明になった日以降の忘れものについて問い合わせたが収穫はなかった。

写真に写っているのはホテルの窓から見える観覧車だが、見逃した場所があるのだろうか。

結局パズルを見つけることなく家に戻ると
郵便受けに1通の手紙が届いていた。

奈緒からだ。

部屋に入るのももどかしく
急いで封を開ける。

パズルが3ピースのみ。

前回より1枚多い。
ピースの数にも何か意味があるのだろうか。

良く見ると昨日泊ったホテルの封筒だった。

再度ホテルに問い合わせる。

もし10日経っても訪れないようであれば
送ってほしいと奈緒から依頼されたということだった。

昨日フロントで確認した時は
すでに発送後で担当者からの共有が遅れ
状況が把握できておらず申し訳なかった。

と支配人から丁寧に詫びられた。

期限を過ぎたところで俺が現れたということか。

蓮は6枚のパズルを並べてみる。
四つ角はそろったものの全体像はまったくわからなかった。

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