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宝石箱
わたしには自分の思いを書く場所がふたつある。noteと、あともうひとつ。どちらも大切なものだ。
noteは楽しい。日々新しい出会いがあって、世界がどんどん広がっていく。ひとり置いていかれないように、前を向いて、みんなのあとを追って走る。ただひたすら、がむしゃらに。
もうひとつは、数えるくらいのひとしか知らないとても小さな世界だ。大切な友人と、わたしだけ。自分らしくいられて、やさしい気持ちになる、温かい場所。たとえるなら淡い色をしたちっちゃい宝石箱だ。
わたしは、noteを書き終えると、決まってその宝石箱の中に入りこむ。
ここに来る友人は、もういない。こうなったのはわたしのせいだ。
大好きだったのに、わたしが一方的にさよならを告げた。大好きだったから、わたしが先にさよならを告げた。
ネットの世界で言葉を紡ぐのは難しい。
同じ言葉でも、相手の顔を見ながら伝えるのと、文字だけで伝えるのとでは、ニュアンスが変わることだってある。いつまでたっても上手に言葉にすることができない。話したいことはたくさんあるのに伝えられない。
だから、一緒にいて楽しいときも、お別れのときも、わたしは相手の言葉を待つほうだった。そんなわたしをわかってくれる優しいひとがいてくれた。
それなのに。
現実の世界でもネットの世界でも、生まれてはじめて、大切な人に自分からさよならを言った。
このひとだけは、君がわたしの前から先に去っていくのが怖かったんだ。
ずっと後悔している。あのとき、君がいなくなるのを待つべきだったと。今までみたいに、わたしが最後まで笑顔で君を見送らなきゃだめだったと。
「笑ってよーな」
やさしい君の言葉がいつまでも胸に刺さって抜けない。わたしは自分勝手で最低だ。
もし、わたしの髪の色が一瞬で虹色になるくらいのとんでもない奇跡が起きて、君がまたわたしの前に現れたとしても、きっともう何も言葉は返ってこないだろう。
君へのわたしの気持ちを知っている、誠実で、控えめで、やさしいひとだから。
宝石箱のなかを覗くたび、瞼が滲む。夢でもいいから、もう一度、君の言葉が聞きたいんだ。
わたしは宝石箱のなかにいる。お願い。わたしの名前を呼んで。
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