牛乳について語るからちょっと見てってくれないか
私は牛乳が好きだ。
2カ月前に北海道のアゴのとこ十勝にきて、酪農ヘルパーという仕事をやった。
それでもっと牛乳が好きになった。
牛を育てる、牛乳を搾る、酪農家さんの大変さ、仕事の尊さ、、
たった2カ月されど2カ月。
私が目にした
酪農という世界で一生懸命に生きる人々、
それによって作り出される一杯の牛乳を飲むまでの物語、
牛乳に情熱を注ぐ彼らの生き様を
少しでも伝えられたらこの記事は本望です。
私は、ちっちゃい時から牛乳をガブガブ飲んで育った。
小学3年生から柔道をしていた私にカラダが丈夫になるようにと、母はいつも牛乳とオレンジジュースを冷蔵庫に常備してくれていた。
「練習が終わった30分以内のゴールデンタイムにたらふく白米と肉食って、牛乳流し込め!」
と当時の柔道監督に言われるがまま、(今私が指導するならもっと的確な食事指導をしますがw)私は牛乳を体に流し込み、みるみると大きくなっていった。
1日1人で500mlの牛乳パックを朝昼晩に分けて飲んでいた。
当時の家計の食費はどうなっていたのだろうか。
オカンオトン、ごめんよ、そしてありがとう。
そんなこんなで私の血液の3/1は牛乳でできています。
昨年オーストラリアにいた時にも牛乳を飲んでいた。
向こうのは2Lサイズのペットボトルで売られているものが多く、日本の牛乳に比べて濃かった。
ものすごい濃い牛乳に、
「これが牛乳の味かー!」
と感動しているのを覚えている。
飲み切る最後の方になると、飲み口に薄い膜が張り出して、
「これくらい濃い牛乳飲んでるんですよ!あなたは!」
と牛乳はよく訴えかけてきた。
しかし、ところがどっこい、後述しますが、この膜にもヒミツがあった。
「膜があるから濃いんだ!」
という私の常識は、この酪農王国十勝でひっくり返った。
十勝の牛乳が最高で最強。
日本人が一番美味しいと思う牛乳は北海道産牛乳なんだ。
もうこれは譲れない。
なーんで北海道は酪農が盛んなの?
それは牛様は熱いのが苦手でいらっしゃるからだ。
年中クーラーがなくてもなんとか生きていけるここ北海道は牛様が過ごすのに快適な環境だからだ。
牛にもいろんな種類がいるが、日本の牛乳の90%をしめているホルスタイン種(牛と言われてあなたの頭に一番最初に思い浮かぶ牛がホルスタインです)のメスが乳用として飼われている。
そんな彼らは熱いと立っちゃう。
立っちゃダメなんだ牛様は。
牛乳が減っちゃう。
美味しい牛乳をいっぱい作ってもらわなきゃならないから、いっぱい食べて、いっぱい寝て、いっぱい牛乳を搾る。
そんなルーティーンがめちゃくちゃ大事。
よく
「ご飯食べてすぐ寝たら牛になっちゃうよ!」
という言葉があるがその通りだと思う。
酪農家の朝はべらぼうに早い。
はっきり言って朝ではない。
深夜だ。
酪農家は深夜に起きる。
私は6軒の農家さん(以下酪農家さんのことを農家さんという)に携わっていたが、一番最速で4時から仕事が始まる。
つまり最低3時半には起きて準備をして牧場に移動しなければならない。
ということは逆算して9時頃にはもうオフトゥンの中に入っていなければならない。
そんな早寝は小学生以来だった。
おかげ様でとても健康体になった。
体力仕事でカラダも痩せて引き締まって、早起きが苦にならなくなった。
農家さんは若手からベテランまでいろんな世代がいるが、みんな元気だ。
80歳のおばあちゃんもめちゃめちゃ元気に働いていた。
早起きはすごい、そしてやっぱり人間はできることならカラダを動かしたほうがいい、そう私は確信した。
早朝3〜4時間、昼の3時あたりからもう3〜4時間働くのが大体の農家さんの大まかな1日のスケジュールだ。
牛さんはだいたい12時間おきに搾乳させてくれる。
パーラーと呼ばれる搾乳エリアの中に牛さんをおいでおいでする。
だいたいの牛さんは毎度のことだから言わずもがなだいたいすんなり入ってくれる。
んでもって毎回、乳房炎という病気になっていないか確認したり、乳房の乳頭を機械でゴシゴシしたりして洗って、4本分のライナーがついた機械で牛さんの乳房を吸い込み、搾乳する。
1日に2回も乳房と呼ばれる牛のお乳をパンパンにして牛乳を搾らせてくれる。
1回の搾乳でだいたい15〜25リットルくらいの牛乳を搾れる。
500mlの牛乳パックが30〜50本分くらい搾れる。
だから搾る前の乳房の硬さはまるで岩のようだ。
ぱんっぱんのカッチコチ。
搾り終わった後はヨボヨボフニャフニャ。
私の携わった農家さんはフリーストール形式といって、牛を一頭一頭繋いでいるわけでもなく、外に放牧しているわけでもなく、牛舎の中に牛さんが寝れるベッドがたくさんあり、
「牛さん、どうぞお好きなところでお好きなように寝てちょーだい!
時間になったらエサ置いとくからねー」
のスタイルだった。
そのベッドを掃除したり藁でメイクアップしたり、搾乳を補助したり、が私の大まかな仕事内容だった。
後は牛のウンコとおしっことの格闘。
彼らはいつどこであろうと構わずウンコする。
作業着がウンコまみれになったり、顔にウンコやおしっこがついたりなんてことは日常茶飯事だ。
全国の酪農家さんの大変な仕事に私は敬意を表する。
私が面白いと思ったのは、各農家さんによって牛の性格が全然違うことだ。
なんでかっていうと
牛は臆病な動物である、という基本性質は変わらないが、ゆっくりマイペースに移動する牛さん、ちょっぴりどう猛な牛さん、温厚な牛さんとあって、それらは一頭単位で性格が違うのではなく、農家さん単位で性格が違う。
つまり何が言いたいかというと、農家さんがどのように牛さんに接しているかで牛さんの性格は変わる。
だれかれ構わず引っ叩いて移動させる農家さんもいれば、慎重に優しくゆっくり移動させる農家さんもいる。
これはほんと100の農家さんがいれば100通りの正解がある。
このやり方が正解、だなんてものはない。
人間に寄りすぎてもいけないし、牛に寄りすぎてもいけない、と私は思う。
彼らにとって牛は経済動物であり、ペットではないからだ。
牛乳が出なくなった牛は廃用といって、家畜市場と呼ばれるセリに出され、お肉屋さんに買って行ってもらう。
その度に悲しがっていては仕事にならない。
しかし、子牛から育てて、全く同じに見える牛を個体番号を見ずに理解できるレベルの彼らの心情を、私が理解したと言い切るには無責任すぎる。
間違いなくそこにあったのは、牛とともにあることで、
「私たちは人間で、彼らは牛だ」
という各々の尊厳。
それは確実にそこにあった。
ふつうに生きていて、
「私たちは人間だ」
などと確認する場面などそう多くはないと思う。
あまた大勢いる人間の中で、
「あぁ、私ってあの人よりあぁでこうで、、」
「あぁ、僕ってあの人よりあぁでこうで、、」
と思い悩み、あぁでもないこうでもないと右往左往する。
比べる物差しがないからそう思うんだ。
物差しなんてもっちゃダメだけど。
もしあなたが他者との劣等感に苛まれているなら、どうか牧場にいって牛を見てきてほしい。
人間を実感してほしい。
もちろんわかってくれていると思うが、私は牛様を下等動物扱いしているわけではない。
「私は人間だ。私たちは人間だ。」
というシンプルな人間の尊厳がそこにはある。
そしてカバラ数秘学で、理想の自分を追い求めてほしい。
農家さんと話をしていて面白かったのは、
「TAKUJIくん、警察官してたんでしょー?
それって対人間の仕事ばっかだよねー?
人間ばっか相手にしてたら疲れないー?」
と言われたことがある。
対人間の仕事が人間の仕事の主たるものだと思い込んでいた私にとって、この言葉は衝撃的だった。
「そうか、彼らにとっては対牛の仕事がふつうで、対人間の仕事は普通ではないのか。
そんな目線考えたこともなかった。」
とまさに目からウロコだった。
いや、目から牛乳とでもいうのだろうか。
話はそれるが、農家さんは本当に温かかった。
本当に居心地が良かった。
彼らにとって私は、自分たちの狭い世界を広げてくれる大切なお客さん、だった。
もちろん、私にとっても同じくだ。
だから家族のような距離感で大切に接してくれた。
私もそう接した。
田舎で働き手が少ないと、こうも人を大切にしてくれるのかとしみじみした。
そんな彼らに挨拶もせず、退職代行を使い逃げるように辞めていく私。
心苦しかったが、仕方のないことだった。
この話はまた後日掲載する。
牛乳に話を戻そう。
搾りたての牛乳を機械で低温殺菌して一口飲ませてもらったことがある。
もうびっくりするくらい甘い牛乳だ。
牛乳ってあんなに甘い飲み物なんだと心の底から感動した。
まさに目から牛乳だった←しつこい
日本の牛乳は日本人が飲みやすいように創意工夫がなされている。
その1つが脂肪球だ。
牧場からタンクローリー車によって工場に運ばれた牛乳は、何度も何度も殺菌、精査、検査が行われる。
その工程の1つに、牛乳の中の脂肪分を遠心力の機械でちっさくして、日本人の口に合うようにちっさい脂肪球にする、という工程がある。
そんなマル秘テクニックのおかげで、日本の紙パック牛乳は最後になっても牛乳の膜が張らない加工になっている。
美味しく気持ちよく牛乳を飲んでほしいという生産者の想いが牛乳には詰まっている。
話は変わるが、十勝には田んぼがない。
土地柄、水田が向いてないのだ。
なんてったって、水を引いたら冬は凍っちゃうから。
そのかわり麦畑とデントコーンと呼ばれる牛のエサ用のトウモロコシ畑がありえないくらいある。
本州の人がイメージする畑の何十倍もデカい。
見る角度にもよるが、水平線で畑の端っこが見えないレベル。
もうめちゃんこデカい。
最後に、私からのメッセージをまとめたい。
このご時世、いろんな飲み物を飲めるようになった。
牛乳以外にも海外産のティー、海外の炭酸、ジュースetc...
自動販売機、コンビニ、スーパー、海外商品専用のショップ、私たちの生活は便利であふれかえっている。
2〜30年前と比べて消費者の選択肢はグンと広がった。
真新しいものというのは人間誰でも興味が惹かれる。
十勝の田舎にスターバックスができてみようもんなら、老若男女問わずテンションアップ間違いない。
でもこんな時代だからこそ、消費選択力を上げ、真に自分に、パートナーに、子どもに必要なものを選択して購入してほしい。
その中の1つに、私は自信を持って北海道産牛乳をおすすめできる。
牛乳は栄養価が高く、何より美味しい。
ミロとか買っちゃって混ぜちゃってもいい。
お子さんがいる家庭ならなおさらだ。
1日500ml子どもに飲ませてくれとは口が裂けても言わないが、繊細で敏感で成長期な子どもにとって、カルシウムは必須。
カルシウムを手軽に摂取できる飲み物といえば牛乳。
どうかあなた自身の消費選択力を鍛えてほしい。
その選択力がきっとあなたの生活を豊かにするから。
自分を、近くにいる人を、大切に想う気持ちこそ、愛だから。
人間にとって一番大切なものだから。
そして対人関係に疲れたり、自分が嫌になったりしたら、Googleでもyoutubeでもいいから
「牛 画像」「牧場 動画」
とでも検索して牛を眺めてほしい。
「私たちは人間である。それ以上でも以下でもない。」
と人間の尊厳を思い出してほしい。
そして自分は自分、他人は他人と割り切って、どうかあなたの人生を歩んでほしい。
そのあとコンビニで牛乳を買って、ふふふと笑ってくれたらもう100点だ。
他に言うことがない。
残念なことに私たち消費者の
「今日も牛乳搾ってくれてありがとう!」
はなかなか農家さんには伝わらない。
前の会社にもう少し長くいたら、そういうウェブ上のサービスをつくろうかとも思ったが、やめてしまっては元も子もない。
私はこれからも変わらず牛乳を愛飲していこうと思う。
何か新しいブルーオーシャンを求めて一発起業してやろうかという若者がこの記事を読んでくれているなら、ぜひ酪農界をオススメする。
時代錯誤の酪農界には隙間産業で溢れ返っている。
ビジネスでワンチャン狙うなら酪農界はブルーオーシャンだ。
こんな駄文を最後まで読んでくれてありがとう!
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