【業務日報】10年後の農業マンへ。
2021年5月14日の岩手日報に、衝撃的な記事が掲載されました。見出しは「果樹の凍霜被害深刻」。ぼくにも盛岡や江刺といった県内の生産地にはそれぞれ尊敬する先輩方がおりまして、今年のりんごは厳しい、ということを耳にしていたのですが、こうして岩手のメディアを通じて大きく報道されると震えあがります。原因は4月の低温で、天候云々という話は度々記しているのですが、東北の中でも温暖と言われるここ陸前高田でも寒さを感じたくらいなので、内陸は言うまでもないでしょう。「県央部では7~8割の木で果実となる雌しべが壊死した園地も確認」とのこと。これがどういうことかお分かりでしょうか。「5月の時点で、7~8割のりんごの実が成らないことが決まってしまった」ということ。
比べて、陸前高田では。
県央部ほどではないにしろ、陸前高田も全く被害がないわけではありません。イドバダアップルではLAMPメンバーと結託して、例年は開花したあと3~4日間で終わらせる人工授粉を、開花状況が畑によってバラバラだったこともあり今年は1週間以上をかけて丁寧に丁寧に行いました。ここまで受粉をするのは蛇足だったかもしれませんが、不安で不安で仕方がなかったのです。結実しないとりんご自体が成りませんから。後悔だけはしたくなかったですし、何よりクラウドファンディングで応援いただいた方々に最高のりんごを届けたかったので。とにかく今は、例年のように摘果をガンガンせず、ひとまず長果枝の先端のみを落としています。様子を見ながら。
双方の畑の面積は約1町5反歩(うちイドバダアップルは6反歩)。花すら咲かない枝もあったり、シカに芽を食べられたり、病気になってしまった木もいくつかあります。それでも、陸前高田のりんご達は健気に実を成らそうとしています。そのお手伝いをするのが、ぼくたちりんご農家です。天気に仕え、りんご達が育つお世話をする。それを人に届ける。人に届けるまでが仕事なんです。
そんな中、10年後を見据えて既に次の一手を展開した農家さんも少なくありません。果樹は苗を植えてある程度収穫できるのは5年以上かかるので、ぼくら農業マンも常に変化していかないと時代と気候に置いて行かれます。ここまで行くと、農作物は「商品」というより、「作品」と言っても過言ではないような気がします。
ここで言う「商品」とは「顧客に買ってもらうことが目的」で、買ってもらうためのリサーチやマーケティングを行い、できるだけ失敗しないような打ち出しをしますが、「作品」は「ニーズはおいといて、作り手の思想や理念を形にしたもの」。
りんごで言うと、贈答品として需要がある&蜜入りで味もバランスの良い「サンふじ」「ぐんま名月」を植えるか、火を通したりスイーツなどの加工用としてポテンシャルを発揮する「ブラムリー」「紅玉」を植えるか、栽培は難しいが味は一級品の「北斗」「きおう」、又は最新の着色品種…といった感じでしょうか。品種選びは考えるだけで面白いです。ここをどうやってビジネスとして展開していくか。
そんなこんなでイドバダアップルでは、最新の農機器でもある”AI草刈り機”ロボモアMR-300(和銅産業株式会社 花巻市)が設置されました。畑の草刈りをルンバのように行うだけではなく、常に動いているので害獣対策にもなるという優れもの。今週は雨マークも多いので、この隙に事務作業を片付けましょうか。
それでは素敵な1日をお過ごしください。
イドバダアップル 吉田司でした。
クラウドファンディングの記録
https://camp-fire.jp/projects/view/407030