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【最新】FTM4名の研究事例からの報告①【2018年】

はじめに

それぞれ異なる経路を歩んでいても、非可逆的な時間の流れの中で辿りつく等しくあるいは類似した経験が等至点である。
また、分岐点とは、等至点から次の等至点に到達するまで,あるいは必須通過点から等至点に到達するまでの間で行われる人生の選択や出来事のことである。

それでは早速、4名における等至点を見ていきたい。

(1)「自分らしさ」を模索する(等至点①)
(2)自分を抑制し適応しようとする・ありのままに生きる(分岐点①
(3)「性同一性障害(性別違和)」という言葉を知る(等至点②)
(4)親に性別違和感を伝える・伝えられない(分岐点②
(5)サポート・グループに参加する(等至点③)
(6)高校に進学する(等至点④)
(7)制服の選択(分岐点③)、理解ある教師との出会いの有無
  (分岐点④
(8)ジェンダークリニックを受診する(等至点⑤)
(9)大学・専門学校に進学する(等至点⑥)
(10)「性同一性障害(性別違和)」診断の有無(分岐点⑤)、
    ホルモン治療開始の有無(分岐点⑥)

☆☆☆4名の分岐点と等至点☆☆☆

【(8)ジェンダークリニックを受診する】という等至点後の径路は、【(10)「性同一性障害(性別違和)」 の診断を受けたA,B,C と、約 2 年間通院を続けているが【診断が出ていないD とでは大きく異なった
また、【(10)ホルモン治療を開始】するか否かとも関連性があった。
キャリア選択時にすでに【「性同一性障害(性別違和)」の診断を受け】【ホルモン治療を始めていたC は,【治療費捻出のために複数のアルバイト】に従事していた。(性別移行前であるため )保険適用外のホルモン治療を受け続けるには,費用を稼ぐために過重労働をしなければならない状況にあった(SD)。
C は、そのアルバイト経験を通して,【社会の現実を知る】こととなった。 アルバイト先でハラスメントを受けたのである。「スカート姿が見たい」,「女らしく色気を出して」 などと言われ,それを断ると暴言を吐かれることもあったという。その経験から《社会に出ることの恐れ》を感じ,「特にやりたいことはないが,人生の選択を先延ばしにしたくて【大学へ進学】する」と語っていた。
一方、【性同一性障害(性別違和)」の診断は受けている】が、【ホルモン治療は開始できていない A と B は,見た目も《自認する性(男性)にもっと近づきたい》が、主に経済的な理由から治療は始められずにいた。
願望と現実の乖離で《焦燥感》が高まり、2 名とも同時期に【自傷行為】を繰り返すようになった。
また、【診断を受けていない】D は,「いつになったら診断がもらえるのか。この医者は本当に自分のことを分かっているのか。「目の前に分厚く高い壁があって、先が全く閉ざされた感覚で毎日を過ごしている」と、その只中のセッションで語り、A,B 同様に D も【自傷行為】を頻繁 に行うようになっていった。
だが,D の場合はそのことが契機となり,【親と話し合いを重ねる】ことができ,「自分自身の苦しみをようやく親が受け止めてくれた」と語り,自傷行為は次第に収束していった。
その頃に、D の救いとなっていたのは、ロールモデルの存在(SG)であった。サポート・グループで出会った成人やメディアに登場する当事者が、困難をどのように抱え、乗り越えてきたのかを語るのを聴くにつれ、「将来の自分の姿が少しずつではあるが想像できるようになってきた」と語っていた。
このように、それぞれの径路は異なるが,A,B,D の 3 名の【大学・専門学校に進学する】意味は、「《生き方の選択肢を拡げたい》からである」と語っていた。

出典:沖縄大学人文学部
   トランスジェンダー青年が抱く性別違和感の思春期・青年期における
           変容過程 : 複線径路・等至性モデル(TEM)による分析

☆☆☆倫理的配慮☆☆☆

同意書には「研究で記録を使用する場合には、用いられるデータを本人と確認し、承諾が得られた部分のみを使用すること」という項目が設けられている。
本研究で使用するデータは,28 回のグループ・セッションのうち 4 名が自身のことを語った部分のみとし,分析に使用する音声データを逐語化した時点で本人とグループ参加者に内容を確認してもらい,1 名でも使用を控えて欲しいと申し出があった箇所は削除した。

■■■考察については下記リンク先をお読みください■■■

最後までお読みくださり、ありがとうございます。
また、次の記事で、お会いしましょう!!!


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