自死した弟のこと【11】休職④(LINE)
そろそろ夏休みの計画を立てようと考えていた頃、母からSOSが届いた。その内容は、もう家に弟と2人で居るのは限界だから、会いに来て欲しいというものだった。母に息子と共に6日間帰ることを伝え、弟にも帰省の日程を連絡した。それに対する返信はなかった。
その2週間後、私から弟に転職活動はどうか、何か困っていることはないかという旨のLINEを送った。それに対する返信は、
「とりあえず大学職員は全落ちして何もやる気が起きずに昼夜逆転したのを戻してる感じ」
だった。昼夜逆転はまずいと感じていたが、何も言えなかった。
2022年8月某日朝6時58分に弟からLINEが届いた。
「今日お母さんに病気が再発したことを伝えました」
「『好きにして』と言ってもらえました」
「嬉しかったです」
ただ事ではないなと感じた私は、病院へは行っているのか、双極性障害とは長く付き合うしかないよね等返信し、やり取りと続けた。その後、
「甘えているようだけど、病気が再発したことを伝えた時、少しでいいから心配してほしかった」
「もういい」
「全部全部嫌い」
「ごめんね」
「もういいっていうのは俺の人生がって意味」
と立て続けに送られてきた。すぐに私から電話をかけたが、話す気力がないのか、「ああ」と返ってくるだけだった。
同じ日の午後も
「家から出たい」
「お母さんのいる場所にいたくない」
「引きこもりを治したい」
とLINEがあり、具体的に家から出るためにはお金が必要なので、私はどの程度の貯金があるか尋ねた。
「ごめんね、アプリで30万円使っちゃったから一気になくなら」
ここで弟からのLINEは途絶えた。
弟の死後に分かったことだが、どうやらインターネット上でお気に入りの女性に30万円近く投げ銭していたらしい。しかもリボ払いになっていた。高額な手数料を取られ、支払いがなかなか減らなくて苦しかったことだろう。
その後、お金を使ってしまったことは仕方のないことだと伝え、自治体のひきこもり相談支援センターを案内した。(既読にはなったが、読んだのかは分からない)
この時、すぐに実家へ飛んで行くべきだった。すぐに動いて自治体に相談すべきだった。もしも時間が巻き戻るならばこの日に戻して欲しい。もし、この日に戻れたら、すぐに駆け付けて弟のことも母のこともケアしたい。でももう遅い――弟は旅立ってしまった。
(注)LINEの内容は句読点が無く読みにくいが、原文そのままなのでご容赦頂きたい。
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