自死した弟のこと【14】自死後②

 一睡もできないまま朝を迎えた。私と母はとりあえず朝ごはんを食べたけれど、妹は布団から出てこられないようだ。

 これからのことを考えなくてはならない。

 母と弟は公営の集合住宅に住んでおり、そこの駐車場内に置いてある弟自身の車の中で亡くなった。第一発見者は母ではなく、通りすがりの女性で、その方が警察に通報してくれた。(その節はありがとうございました)。検死後に発行される「死体検案書」がないと火葬場を抑えることができないとのことで、まずは「死体検案書」の発行を待つ間に弟の身の回りを片づけようということになった。
 自治体の清掃工場へ何往復もして粗大ゴミを自己搬入した。ゴミだけでなく他にも色々な物が出てくる。高価なブランドのキャンプ用品、一眼レフカメラとおそらく一度も使われていないレンズ、ゴミだらけの部屋でどうやって使うつもりだったか分からないダイソンの掃除機、そして私の息子に失くされたと主張していたiPod…。iPodは弟が友だちから借りたと言っていたので、処分できないが、ゴミ以外の大半の物はリサイクルショップに引き取ってもらった。
 物の片づけはまだマシで、大変だったのはお金の清算だった。今思い出してもドッと疲れが押し寄せてくる。

 何が大変かって…書類が一切ない!のである。

 カードの明細もないし、どこの携帯電話会社と契約しているのかも全く分からない。奨学金の書類もないから、奨学生番号も分からない。ローン(後にバイクだと判明)の書類も自動車保険の証券も手元にない。仕方ないので、弟の通帳を全て記帳し、どこから引き落とされているかを確認し、1件ずつ潰していった。以下の通り、処理していった順番に詳細を記す。どうして私が順番まで覚えているかと言うと、私が処理したからだ。母も妹も憔悴しきっており、動けるのは私しかいなかった。この3日後には息子の小学校の遠足が控えている。お弁当をつくるため一旦家に帰らないといけない私に憔悴している暇などない。プラレールのお弁当箱にエビフライを入れるという約束を果たさないといけないのだから。

 <弟の死後のお金関係の清算>
①JCBカードとVISAカード
 JCBは比較的早い段階でコールセンターに繋がりすぐに停止し、残50万程度を支払った。
 VISAカードは全くコールセンターに繋がらず、仕方ないので遠くの三井住友銀行支店へ出向いた。しかし、別会社だと言われ、何十回とかけても繋がらないコールセンターの番号を渡されて終わった。(振り返れば、そりゃそうだと思うが、その時はとにかく必死だった)。その後、チャットで用件を伝え、電話でやり取りすることができた。残は60万円程度だった。

②ジャックス
 電話で問い合わせたところ、バイクのローンだとのことだった。こちらも残りの15万円程度を支払い、完済した。

③投資信託の解約
 なぜか弟は投資信託をしていたようで、解約して現金を相続人である母に振り込んでもらえるよう手続きをした。(電話で伝える→書類が届く→返送という流れ)。

④生命保険の解約
 生命保険の営業担当者へ電話連絡をした。

⑤携帯電話の解約
 解約時、JCBカードの人へ「毎月引き落としになっている料金はないか」と尋ねたところ、auから引き落としがあるとのことで、ショップで解約手続きをした。

⑥奨学金
 日本学生支援機構に電話で事情を伝え、奨学生番号を確認した上で返還免除願いを送付した。

 どれも相続人は母なので、まず私が担当者へ電話で事情を伝え、担当者と母が話をしてから私が手続きを進めた。
 この後、バイクと弟が最後を過ごした車の売却(保険の解約も)を進めたが、それについては次回で書く。
 

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