自死した弟のこと【8】休職①
弟と連絡を取らないまま年月が過ぎ、2021年になった。
2021年3月某日、母から私のもとにLINEが届いた。
「〇〇(弟)が精神科病院に今日、入院したから。躁うつ病!報告しとくね。叔母たちには内緒にして行う」
名前以外は原文そのままである。
母と電話し、状況を確認したところ、弟がその日の朝4時に母へ電話をかけ、精神病院へ連れて行って欲しいと助けを求めた。母が弟のアパートへ駆けつけ、病院へかかろうとするも、多くの心療内科・精神科は完全予約制なので断られた。しかし、1か所だけ当日診察を受けてくれるところが見つかり母と共に受診。医師が「このままでは自死してしまう。家に帰すことはできない」と判断し、そのまま入院した。入院が決まった日、弟は上司へ連絡し、休職を申請した。
入院してから、ゴミ屋敷と化した弟のアパートを母が独りで片づけた。家とアパートまで車で片道1時間はかかるところを何日も何日も往復し、ゴミの片づけや止まっていた支払いも全て清算した。何より大変だったのは、弟が飼っていたウサギで、動物嫌いの母はヒィヒィ言いながら大きなゲージごとウサギを運び、自宅で最低限の世話をしていた。
がん治療後に復職し、正社員で働きながら、クタクタになっている母が一体何をしたというのだろう。若い頃にDVを受け、不倫され、離婚し、挙句養育費を払わない夫(その後、差し押さえ)から自由になり、やっと子ども達も独立し安心したところで病魔に襲われる。回復したところに今回の弟の件である。一体全体母が何をしたというのか。
姉である私も手伝いに行くべきだったのだろうが、当時、私の住む自治体は新型コロナウィルスの緊急事態宣言が出されていた。基礎疾患のある母に感染させてはいけないし、何より重度知的障害のある息子の預け先がない。夫も激務で頼れそうにない状況だった。せめてもと思い、5万円を送金したが、仕事を辞めて4月から息子のサポートに専念する予定の私には決して小さくない出費だった。
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