見出し画像

私の読書論。

家に置いておきたくなる本ってあると思う。
わたしは読書家というほどではないが、じぶん専用のちいさな本棚を持っていて、詩や短歌やすきなイラストレーターの漫画や聖書やエッセイなんかが、ぎゅうぎゅうにつめこまれたそのちいさな本棚をとても愛おしく感じている。
元々は自分の本棚なるものは持っていなくて、本を購入するたびに家のあちこちにあるばあちゃんの本棚にお邪魔させてもらっていた。読書感想文の推薦図書は今でもそこにいる。「楽隊のうさぎ」とか、「真夜中のピクニック」とか。
で、最近になって突然、ばあちゃんに「ものを整理したら本棚が空きそうなんだけど、いる?」と言われ、お下がりでくれたのだ。
当時は休職中の身で、じぶんの本棚ができたことがとてもうれしかった。人とあまり会わずに、背の低いかわいい本棚のあたまを撫でてやって、かわいいハンカチなんかかけちゃって、うつくしい本棚にはうつくしくてお気に入りの本を、なんて思って、TOKYO ART BOOK FAIRで買ったそれらを置いては眺めていた。
やさしい陽の光がはいる部屋は、休職していたじぶんにはちょうどよく、ふだん客間として使われて誰もつかっていない部屋としてはもったいないなかった。今年になって、姉が出産帰省するぎりぎりまでその部屋は使っていた。

閑話休題。表題の件について。
本屋にいくと必ずと言っていいほど本を買ってしまう。わたしの本を買う基準は二つあって、「内容がきになるもの」「家に置いておきたくなるもの」だ。前者はいわずもがな。例えば、いまわたしは哲学に興味があり、先日その入門編である「考える教室/大人のための哲学入門」(若松英輔・NHK出版)や「哲学用語図鑑」(プレジデント社)をセットでジュンク堂で買った。あとは、本職が(一応)コピーライターなので、それ関連の本を買ったりする。ジェームス・ヤングの「アイデアのつくり方」は、数多あるアイデア関連の書籍のなかでもずばぬけてためになった。とても有名ではあるのだけれど、この際だからおすすめしておく。

で、家に置いておきたくなる、とは「この本が家にあるだけでうれしい気持ちになる本」の意、なのである。とつぜんの感情論、やめな~って感じかもしれないが、わかってほしい。前者の本がうれしい気持ちにならない本、と言っているわけではないので、そこはご理解いただきたいのだが、本棚にある、それを眺めているだけでこころが落ち着いたり、うれしい気持ちになる本ってありませんか。
たとえば、わたしは詩人の最果タヒさんがだいすきで、詩集はほぼぜんぶ持っている。おなじA5変形の背表紙が並んでいるだけでなんともいえないよろこびを感じる。そうやってシリーズのものを手にとって読むときには、ワンホールのケーキを切り分けているときのような緊張感と多幸感につつまれる。
写真集でいえば、中川正子さんの「ダレオド」がだいすきだ。写真のうつくしさもさることながら、一ページ目に「ステートメント」がwebで公開されていて、ああこれはわたしにとってひつような本だ、これはお守りのように持っておくべきだと信じて購入したのだ。
そういえば、わたしは本を買うとき「はじめに」か「おわりに」をためしよみする人間で、だいたいそのどちらかを読んでずわわんと心にきた瞬間、レジに足を運ぶ。そうだ、家に置いておきたくなる本とは、「わたしのこころのお守りになるもの」なのか、と執筆中に思いつく。それは詩集や写真集だけでなく、レシピ本や少年漫画も含まれる。本よ、いつもありがとう。そこに存在してくれてどうもありがとう。いつもわたしのそばにいてくれてありがとう。ありがとう。

「本棚が好き、本屋が好き」という話も、どこかでしたいなと思いつつ。
2019年のおわり、みんなあったかくして、本でも読もうね。いついつまでも。


哲学用語図鑑www.amazon.co.jp 1,980円(2019年12月06日 14:19時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する



(おわり)

この記事が参加している募集

買ってよかったもの

サポートの意味があまりわかっていませんが、もしサポートしていただいたら、詩集をだすためにつかったり、写真のフィルム代にとんでゆきます。