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17年勤めた楽天のエンジニアが退職して、令和トラベルというスタートアップに転職した話

はじめまして、大浦貴幸(おおうらたかゆき)です。

最初のnoteでいきなり退職エントリーになるのですが、およそ17年間在籍した楽天グループ株式会社(以下「楽天」という)を、2022年3月31日を持ちまして退職いたします。

今回は自己紹介も兼ねて、これまで関わりのあった方々に感謝を伝えたいのと、あわせて楽天でエンジニアとしてどのようにキャリアを積んできたのかという話、そして今後のことを少し書きたいと思います。

楽天でのキャリア

営業研修

私は2005年5月に楽天にエンジニアとして中途入社しました。当時の楽天は職種関係なく、楽天市場への新規出店店舗獲得の営業研修があり、月で定められた営業目標を達成しないと本配属がされませんでした。エンジニアとして入社して、なぜやったこともない営業の研修だろうと当時は思いましたが、これがやってみると、楽天のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を身を持って体感でき、同期とのつながりもできた良い研修でした。
楽天のブランドコンセプトと成功のコンセプトは本当に素晴らしいと思います。

アプリケーションエンジニア

05年6月に楽天トラベルのアプリケーションエンジニアに配属されました。私の記憶では、当時の開発チームの規模は、インフラ5名ほど、アプリケーションエンジニアが10名ほどの組織だったと思います。

私はここから3年ほどは、IC(Individual Contributor)としてプログラミングが主業務でした。プロダクトは日本国内のホテル予約サービスが中心で、そのシステムは、楽天が「旅の窓口」というサービスを運営していたマイトリップ・ネットを買収したため1996年から開発されたものでした。今のエンジニアは驚くかもしれませんが、そのプログラム言語はC言語、Oracle社のPL/SQLがwebアプリケーションで使われていました。そして2004年に2社のサービスが合併した直後だったため、楽天会員システムとのシステムとの連携からはじまり、楽天市場のビジネス成功体験を横展開した機能開発をしながら、総合旅行代理店として、航空券、バス、レンタカー、ダイナミックパッケージなどのインターネット予約サービスを新規にどんどん立ち上げていった時期で、個人で担当する範囲は広く、システムの安定化や機能リリースで忙しく徹夜も何回もしました。

そんな中でもこの当時の上司で、旅の窓口のシステムの生みの親である和田俊弘さんは、どんなシステム障害が起きてもエンジニアリングを楽しめる人で、失敗をしても前向きにサポートしてくれました。そんな環境だったのでどんなに忙しくてもチーム全員で楽しんで仕事ができました。

プロダクトマネージメント

08年ごろより、ICのエンジニアから徐々にエンジニアチームのリードをしながら、ビジネス側にあったプロディース部(現在で言うところのプロダクトマネージメントの役割)を兼務しました。ここではビジネスクライアントへのセールスやカスタママーケティングの課題を整理し、優先度を考え、そこからプロダクト要件と仕様を定義し、デザイナーとデザインをつくり、それをそのまま自身の開発チームで開発をしていました。具体的には様々な切り口から情報(PV、ドロップ、ユーザフロー、閲覧情報、予約情報、会員情報、商品情報など)を分析し、ABテストとUI改善、レコメンデーション、パーソナライゼーションおよびリターティングシステムなどの開発をしました。
自身の裁量で開発案件を決定できる体制であった一方で、ビジネスのグロースのためのKPIに責任を持っていたので、三木谷社長に直接プロダクト開発による流通や売上のグロースをレポートする場があり、フィードバックを受けながら緊張感をもって仕事をすることができました。

この当時の私の開発部の上司だった田中かおるさん、兼務したプロデュース部の上司(現楽天LIFULL STAY 社長)太田宗克さん、当時マーケティング部の(現コマースカンパニー ヴァイスプレジデント トラベル&モビリティ事業事業長)高野芳行さんが楽天トラベル黎明期をリードしている背中を見ながら、一緒に仕事ができた経験は今の私の働き方や、これまで、そしてこれからのキャリアにも大きく影響しました。

楽天のグローバル化

2010年頃から、ご存知の方もいると思いますが、楽天は英語が社内公用語となりました。自身のキャリアとして、英語を学びグローバルな環境でエンジニアとして働くことができるようになることは、私にとって、大きなメリットだったのでポジティブに取り組むことができました。振り返ると、私はこれがあったからこそ長く楽天に勤めることになったと思います。

しかし当時の私は英語がまったくできなかったので、英語学習と業務を並行することに大変悩み苦しみました。1オン1や社内外のMTGなどでコミュニケーションすることに抵抗なくなるまでには5年以上はかかりました。私は外国籍で日本語ができないエンジニアが周囲に徐々に増えたことで必要に迫られる形で上達できたと思います。全く基礎を忘れてしまっていた私にはTOEICのスコア取得もプラスになったと思います。

また社内に居ながら興味深かったのは、英語を社内公用語化するのは、ビジネスをグローバルに向け、スケールさせるために会社として基盤をつくることだと思っていますが、楽天としての組織カルチャーは単に欧米化せず、残しつつ進めていることです。
ただどういったカルチャーをつくるとしても、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方はとても重要で、組織が多国籍になり、かつこの時期にマネージャーとして仕事ができたことで、その考え方の重要さをより深く理解できたと思います。

テックリード

12年ごろより、楽天トラベルが急速にビジネス成長していくと、システムは高トラフィックなトランザクションと大量の蓄積されたデータをいかに高速に検索スピードを保ちつつ、さらに安定稼働させるかという課題にぶつかりました。またこの頃に、楽天スーパーSALEがはじまり、楽天イーグルスが優勝したり、これまでと比べ物にならないトラフィックが集まり、システムのキャパシティプランニングや安定化に苦しみましたが、これらがシステムのスケーラビリティを一気に強くしました。

その後は、モノリスなシステムと積み上がったコードの複雑性により、開発品質や生産性が下がりはじめました。オラクルのSQLやPL/SQLのチューニングを繰り返し、複雑なビジネスロジックもオラクルの性能頼りになっていました。そこから徐々にCQRSとして、ホテルの日々の部屋在庫のデータは引き続きオラクルで、旅行者ユーザーの検索クエリーによるホテルの部屋在庫マッチングと料金のソーティングは、高い検索スピードが要求されるため、データ同期されたインメモリストレージを利用し、閲覧履歴情報などの独立したシンプルな機能はKVSへ、徐々にマイクロサービスアーキテクチャーが浸透し、機能ドメインに分割設計したものを、他のNOSQLデータベースとAPIとして切り出していきました。

エンジニアリングマネージャー

14年頃から現在まで、エンジニアリングマネージャーとして、キャリアを本格的に意識しました。エンジニアリング、プロダクトマネージメント、QAの役割と組織が独立し、開発プロセスが整備され、開発組織として生産性をあげていくことにやりがいを見出していきました。そして楽天の海外支社にも開発チームを立ち上げ、また協力会社のオフショア開発チームも立ち上げ、グローバルなマルチロケーションの開発チームとしてプロダクト開発をすることができるようになりました。

プロダクトにおいても、楽天トラベルのビジネスのグローバル展開を見据えて、ゼロからプロダクト定義し、またシステムもこれまで積み上げてきた技術負債を刷新するためにスクラッチから新システムを開発する機会に恵まれて、DDD、マイクロサービスアーキテクチャ、CI/CD環境、テスト自動化、社内クラウドでK8s、およびフロントでReactなどのテクノロジーを採用することができました。

こうした活動は現楽天コマースカンパニーCTOの星野俊介さん、およびプロダクトマネージャーの齊藤満さんには、私がエンジニアマネージャとしてキャリアを形成する上で多大な影響をうけました。本当にありがとうございました。

システムアーキテクト

21年は、楽天トラベルの開発だけでなく、楽天市場をはじめとした楽天コマースサービスの各システムアーキテクトから構成されるアーキテクチャーコミッティのメンバーとして活動をしました。楽天には複数の事業とそれに対する開発チームがあり、システムアーキテクチャーの設計、開発プロセス、組織マネージメントの課題はばらばらでしたが、共通の課題も多いので、楽天ではここの横串の機能コミュニケーションが強化され始めました。道半ばで抜けることになりましたが、楽天グループのシステムや開発組織をさらに強化できる素晴らしいエンジニアの集まったチームでした。楽天トラベルよりトランザクション規模が数倍大きい楽天市場から、オフラインの物流倉庫のシステム、プロスポーツ、社内情報システム、ラクマなど複数のインキュベーションサービス、社内クラウドなどたくさんの興味深いシステムアーキテクトの方々とコミュニケーションができたことは、非常にいい経験になりました。ここのアーキテクトコミッティのリードであり、元上司の鬼本康博さんは、常に私のキャリアの模範となる人でした。

楽天のよかったこと

自身のキャリアを形成する上で幸運だったことは、目指したいキャリアのロールモデルになる人や、そのキャリアのチャンスが良いタイミングで訪れてきたことです。その結果、17年という長い期間、楽天で働くことになりました。各時期に謝辞として何人か書かせてもらいましたが、他にも書ききれないたくさんの人たちのおかげで成長することができました。この場を借りて御礼申し上げます。

楽天トラベル開発チーム

良い点をまとめると

  • 日本最大規模のトラフィックを支える開発と運用技術を経験できる。

  • 社会インフラ規模のプロダクト開発を通して、カスタマー(ユーザ、ビジネスクライアント)および社会に大きな影響と貢献を感じることができる。

  • グローバルな環境で、優秀な多国籍なエンジニアたちと仕事ができる。

興味をもっていただけましたら、楽天トラベル開発部へ、ぜひエントリーして、カジュアルに話を聞いてみてはいかがでしょうか?
バックエンドエンジニア
フロントエンドエンジニア

これからのこと

そして、実はコレが私にとって一番重要でお伝えしたかったことになります。22年4月より大浦貴幸は令和トラベルというスタートアップで海外旅行DXを目指しCTOを務めることになります。次は、何を考えて令和トラベルに転職したのか、そして今後は令和トラベルの技術、エンジニア組織、プロダクト、エンジニアリング情報などを発信していきたいと思います。

今後とも皆様よろしくお願いいたします😃

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