農業とサッカーは似ている?~埼玉の農業者が、アルディージャをカイゼンする~
突然ですが、読者の皆さまに問題です。
「ねぎ・ほうれんそう・きゅうり・ブロッコリー・さといも・かぶ」
こちら、何のことかわかりますか?
正解は「埼玉県が収穫量ベスト3に入っている農産物」です。ピン芸人・SAKURAIのネタのようなつかみになってしまいました。
ちなみにベスト5まで広げると、小麦・枝豆・栗・コンニャクイモなども入ってきます。「翔んで埼玉」など、何かと馬鹿にされがちな埼玉県ですが、日本の台所、とりわけ首都圏の台所を支えているのは、他でもない「農業大国」埼玉なのです。
通行手形を作ったり草を食わせたりしてくる東京都民も、もはや埼玉なくして生きてなどいけないのです。これからは足を北に向けて寝ないように。
では続いて、
「3年連続J1昇格失敗、今季はJ3降格圏内の21位と大きく低迷」
こちらは、何のことかわかりますか?
そう、大宮アルディージャのことです。埼玉県が誇る…はずのJリーグクラブ。私も地元である大宮のチームということで、小さい頃から熱心に応援していますが、ここのところずっと低迷していて、気が付けばJ1昇格どころかJ3に片足を突っ込んでいるような状況です。
実は私、農業者なんです
ところで、私には農家の血が色濃く流れています。
父方の家は元々、今ソニックシティがそびえ立っているあたりでお茶屋さんを営んでいましたが、西口駅前の開発に伴って立ち退きを余儀なくされました。その際に得た資金で大宮郊外の水田を取得し、茶屋を続ける傍らで兼業農家を始めたそうです。
一方で母方の家は深谷の専業農家。全国的に有名な「深谷ねぎ」をはじめ、とうもろこしやキャベツなど、様々な農作物を育てていました。
今は他界や高齢などが原因で、近隣の方々に維持管理を任せてしまっていますが、私自身も時折田畑に出向き、農作業を手伝っています。
都内に勤務するサラリーマンというのは、世を忍ぶ仮の姿。田畑でトラクターやコンバインを動かしている時こそが本来の姿だと言っても過言ではないくらい、農業には強い関心があります。
ちょうど先日、梅雨前の手入れで収穫があったので、写真を載せておきますね!
大宮アルディージャを「カイゼン」する
そんな農業大国埼玉の農業者でもある私が、溺愛する大宮アルディージャをどうやって「カイゼン」していくべきかということを、今回は考えていきたいと思います。
「カイゼン」とは農業において、作業のムダを解消し、生産効率を高めていく活動のことを指します。もともとは製造業の世界から持ち込まれたもので、現在は農業に限らず、サービスや小売などの非製造業にも応用されているようです。
「ものづくり大国・日本」において、長い年月をかけて培われたノウハウなので、サッカーに置き換えても、必ずやその効果を発揮するはずです。
農業現場にはびこるムダ
農業の現場で排除すべきムダの典型例として、今回は「作りすぎのムダ」「在庫のムダ」「手待ちのムダ」「不良を作るムダ」の4つを挙げたいと思います。
この中で最も悪質なのは、作りすぎのムダです。農産品を余分に作ると、余分な在庫は増えるし、運搬量も増えるし、作業量も増えるし、兎にも角にも悪いこと三昧です。
しかも、不良品が多少発生しても、たくさん作ることによって良品ノルマを達成してしまうので、不良品が発生しているという重大な問題が隠れてしまうことにもなります。
つまり、作りすぎのムダは、他のあらゆるムダまでをも、雪崩の如く引き起こすのです。
この作りすぎのムダは、サッカーに置き換えると守備の崩壊です。早い時間帯から失点を重ねてしまうと、少しでも早く追いつくために、放り込みや縦ポンなどのような大味な攻めになってしまいがちです。これでは試合を重ねても、なかなかチームとしての成熟度は深まりません。
そのうえ、結局得点できなくても、あるいは更に失点を重ねても、早い時間から失点したことが原因で負けたということになり、チームが抱える本質的な問題を隠してしまうことになります。アルディージャも、まずは守備を安定させることが先決です。
次に排除すべきは在庫のムダ。在庫は「適正在庫」を守って運用しないといけません。これはサッカーに置き換えると、適切なリザーブ選手の運用。過剰でも過少でもない質と量を確保したうえで、常に控え選手の状態をチェックし、最適な状態を保ち続けることが肝要です。
手待ちのムダはわかりやすいでしょう。これはすなわち、農業者がやるべき仕事がない状態を指します。
手待ちのムダを省くということは、田畑に出てもやることがない、という状態をできるだけなくそうということです。いくら良い選手がたくさんいても、同じ選手ばかりが起用され、その他の選手はずっとベンチに座っているようでは、チームとして適正な状態とは言えません。
不良を作るムダ、これもわかりやすいですね。不良品を作ってしまっては、時間と種苗のムダ遣いです。不良、すなわち失敗・ミス。サッカーはミスのスポーツとは言うものの、勝つためにはミスは極力減らさなければいけません。
農業で不作の時に分析するのは「変化点」。どこで数値が悪化したのか、そのターニングポイントと原因を分析することによって、良かった頃に立ち戻ろうという考え方です。アルディージャも上手くいっていた時代を分析し、そこに立ち戻ることによって、本来居るべき場所に戻ることができるのではないでしょうか。
勝てない原因を考える
今シーズンのアルディージャに話を移しましょう。
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