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2章 デザイン原則 内容紹介(1)

今日から新しい章、2章「デザイン原則」を見ていきましょう。1章で「デザインシステムとは何か」を考えましたが、デザインシステムを検討する上での最上流とも言える「デザイン原則」や、原則を定義する方法をいくつか紹介していきます。

このマガジンは、12月21日に全国書店、25日ごろにAamazonで発売になる「Design Systems − デジタルプロダクトのためのデザインシステム実践ガイド(仮)」を編集している私が、個人アカウントでこの本の作りかけの断片を紹介するものです。予約ヨロシクでございます。

2章「デザイン原則」
ちゃんと機能するシステムは、必ず明確な原則にもとづいています。この章では、効果的なデザイン原則の特徴と、そうした原則を定義する方法をいくつか紹介します。

1.効果的なデザイン原則の特徴(その1)※この記事で一部を紹介しています 
2.効果的なデザイン原則の特徴(その2)
3.効果的なデザイン原則の特徴(その3)
4.原則を定義する
5.原則からパターンへ

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第1章で述べたように、インターフェースをデザインするときは、プロダクトの目的とエートスから始めることが重要です。目的の明確化が優先されるのは、たとえ間接的であっても、目的を踏まえてあらゆる決定を下す必要があるからです。デザインを通してプロダクトの目的を明示するには、どうすればよいでしょうか? 基礎となる価値と原則を確立する必要があります。

企業によっては、ガイドラインをまとめ、共有することが難しい場合があります。特に早い段階では難しいものです。デザイン原則は、測定や数値化できないため、定義には数回のイテレーション(反復作業)が必要です。また、ひと口に原則と言っても、とらえ方はさまざまです。ブランドに焦点を当てる企業もあれば、チームカルチャーやデザインプロセスに焦点を当てる企業もあります。Pinterestの原則はブランド重視ですが(「明解」、「活気」、「壊れない」)、イギリス政府のデジタルサービス(GDS)は、チームがどのように行動するかに重きを置いています(「効率化」、「イテレーション」、「イテレーションの積み重ね」)。

時として、原則は特定のプロジェクトに期間限定で使われます。デザイナーのダン・モールは、プロジェクトを始めるときには「デザインマニフェスト」を書き、クリエイティブ面の方向性と目標を明確に示すようにしています。一方で、原則が継続的に使われ、その伝統が企業エートスの一部になることもあります。酒造メーカーのJack Daniel'sの「信頼」、「独立」、「誠実」という価値は、この1世紀の間変わっていません。

大企業では、ユーザーエクスペリエンス、ブランド、デザインシステムで原則を分けていることもあります。また、社内のチームそれぞれが独自の原則を持っている場合もあります。このやり方が有効な企業もあれば、複数のガイドラインを持つことがデザインシステムの分断につながると考える企業もあります。エンタープライズ向けソフトウェア企業のAtlassianでは、当初はマーケティングとプロダクトで原則が異なっていました。しかし、時間とともにチーム間の距離が縮まり、今では原則の統一を図っています。目標は、理念を共有して、マーケティング、プロダクト、サポートのギャップを埋めることです。

ユルゲン・スパングル(Atlassianデザイン責任者)は、「システムは1 つです。原則は点を結ぶために存在します」と言っています。

効果的なデザインの原則の特徴

デザイン原則へのアプローチは、それぞれの企業に特有のもので、さまざまな形態をとります。包括的な原則もあれば、限定的な原則もありますし、一時的な原則もあれば、長きにわたって使用される原則もあります。重要なのは、原則がどれほど効果的にデザイン思想を統一し、クリエイティブ面の方向性をチームに広められるかです。本書で言うところのデザイン原則とは、チームにとっての優れたデザインの本質をとらえた共用のガイドラインであり、同時に優れたデザインの作成方法に関する指南書です。言い換えれば、何をもってプロダクトにふさわしいデザインとするのかに関して、組織内で合意された基準です。

効果的なガイドラインには以下のような共通した特徴があります。

▷1. 本当であり、本質である
「シンプル、便利、楽しい」という原則は、みなさんよくご存じでしょう。あちこちで目や耳にします。巧みにデザインされたプロダクトは共通の原則に従っているという点に、議論の余地はありません。ディーター・ラムス(Dieter Rams|ドイツの工業デザイナー)による「良いデザインの十か条」が良い例です。こうしたプロダクトの品質はデザインで実現されるべきであり、アクセシビリティやパフォーマンスなどと同じく担保されるべきです。コンシューマ向けのデジタルプロダクトで、「複雑」、「不便」、「使いにくい」などの原則は見たことがありません。

便利で楽しいプロダクトにする必要があるとわかっていても、デザインが決めやすくなるわけではなりません。これらの特徴はさまざまに解釈可能だからです。チームやプロダクトにとって、それらの言葉が何を意味するのかを正確に理解することが大切です。革新的だと何が起きますか? デザインが便利と思われるのは、どのようなときですか? 本当に楽しいかどうかはどうしてわかるのですか? 優れたデザイン原則は、さまざまに解釈可能な特徴を定義し、特定のプロダクトに合わせて意味づけします。

TEDを例に考えましょう。TEDデザインの原則に、「最先端ではなく、時代を超越流行を追うために、新しいテクノロジーを採用したり、表現方法を取り入れたりはしないということです。何よりも優先されるのは、目的を果たし、可能な限り多くのユーザーに役立つことです。TEDにとって、「時代を超越する」とは、平易であることに加え、効果が実証されていない見た目の導入に敏感になることです。たとえば、パララックス効果(視差による効果)が流行しても、デザイン上の真の問題を解決するのでなければ、TEDのチームは導入しないでしょう。

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noteの機能では表現しにくい画像のキャプションや、発言の引用や脚注などは省略しています。あくまで、書籍の概要としてイメージしてもらえれば幸いです。全貌はぜひ書籍でお確かめください。

効果的なデザイン原則の特徴は、全部で4つありますが、そのうちの1つをこのノートでは紹介しました(読み進めるの大変ですよね💦) 。次回は、特徴の2つめ「▷2.実用的かつ実行可能である」へと進みます。

では、次回をお楽しみに。


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