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“暮らしの力”を最大化することで、“回復力(レジリエンス)”を引き出す広域避難の新しいあり方『シェアハウス輪っか』


5ヶ月が経ちました。

私たちの災害支援プロジェクトは今なお続いています。

関わり方や支え方は大きく変化しています。

視野は、日常と暮らしを積み上げて、人生という視点まで開いていくこと。

手法は、その人の回復していく力(レジリエンス)を信じること。

そして超高齢社会における災害についての情報を整理すること、未来に向けて。

超高齢社会災害の災害関連死とはどのようなものか、きっと今回の経験には新しい気づきがたくさんあるはず、決めつけないように柔軟に・・・と常に考えながら、在宅医療の現場で感じている「暮らしの力」を再証明していきたいとも思います。「お家パワー」は「家」という物理的存在ではなく「暮らし」というプロセスを積み上げる営みのことを指しているのだと、改めて感じます。(医療的ケア児が、初めて帰る「家」でも「お家パワー」が存在することからも証明できます)

具体的には

①福井県勝山市における広域避難その後

 ・シェアハウスで地域と供に暮らす

 ・施設での暮らしを整える

②私たちが見てきたものと見えているものを整理・発信する

 ・輪島市への定期的な訪問と情報収集

 ・勝山市へ広域避難している皆さんの体調管理と情報収集

 ・未来に向けた発信方法を模索する

といった点に力を置いています。

勝山市の避難所が閉鎖される際に

ボランティアで避難所を支えてくれていた勝山市民の方から、お家を貸していただけることになりました。

被災後の暮らし、また仮設住宅における、メンタル不調や閉じこもりからの廃用症候群、原病の悪化やフレイルの進行。東日本大震災後に長純一先生が発信されてきたものを再確認しながら、プライマリヘルスケアを考えます。「早く輪島市に帰って頂くのがいちばん良いはず」というご意見を頂くこともありますが、東日本大震災後の仮設住宅における健康問題の記録や文献を見ながら、いちばん良いタイミングや方法を模索しているところです。

現在は6人の輪島市から広域避難した皆さんが勝山市内の3つの住まいに分かれて、それぞれの暮らしを重ねています。その中のひとつ、3名の高齢女性がシェアハウスとして一緒に暮らす「シェアハウス輪っか」を紹介します。

勝山市の福祉避難所で、暮らしながら関係性を構築していく時間に伴走してきた、若手看護師・西谷咲希さんの気づきがきっかけでした。避難所の「プライバシーを守れる空間が少ない」というストレスに気を配りながらも、「完全にカギのかかる部屋」じゃないからこその、つながりや気のかけ合いが、お互いを支え合っている姿を見つつ、避難所の次のステップは「シェアハウス」という方法があるのではないか、と咲希さんから提案をもらいました。

すぐに思い出したのは「かあさんの家」。「暮らしの力」を最大化することで、回復力(レジリエンス)を引き出せる方法だと思いました。

そして誕生した「シェアハウス輪っか」

3人が暮らしながら、他のメンバーも昼間に集まる集いの場になっています。

避難所の時と比べて暮らしの中での役割が増えていきます。調理や掃除や洗濯などはもちろん、「今日の天気をちょっと気にかける」なんて行為や気持ちが暮らしに軸足を戻していきます。

みなさんの視線や表情が良くなっていることを実感しています。週に3回のオレンジグループ内の朝のミーティングにも参加してくれ元気な表情と声を見せてくれます。

地域に溶けこんだシェアハウスは、近隣の皆さんもほどよい距離でいつも気にかけてくれていて、声をかけてくれたり、畑仕事にさそってくれたり。近所にお一人でいた方も、昼間は「輪っか」に集まって皆で過ごしたりするリズムも生まれました。地震がきっかけで避難という理由でやってきた人たちの暮らしが、その街にもともといた人たちの暮らしのリズムに溶けこみ始めました。

人生の大先輩の、暮らしの力に驚き感動することがしばしば。

年取って、被災して、避難して、かわいそう。という視点ではなく、この方々の強さと安定感をこちらがもらって教わり循環するイメージ。ケアするケアされるの関係から脱却することで、お互いにエンパワメントし合う関係になっていくのは、普段の在宅医療やキッズケアで感じているスタンスそのもの。

こんな暮らしの重ね方、すごく大事な方法だとやっぱり思います。

そして、いくつかの調査や研究も動き始めました。

これから日本で起こる災害は、やっぱり超高齢社会での災害。暮らしを支える手法での災害支援のあり方を再考していきたいと思います。

もう5ヶ月、まだ5ヶ月。

能登半島現地からもまだまだ踏ん張っているエネルギーが伝わってきます。そんな中でも暮らしを楽しむ人間の底力みたいなものも同時に伝わっています。

どうか忘れないで、時々気にかけていてくださいね。


この住まいを支えるボランティアを引き続き募集しています。まとまって数日来て頂ける方を常時1名募集中。


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