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ALS×人生会議 +オランダで見聞きした安楽死のこと

ALSは刻々と病状が進行して行く病気です。
かつて「毎日が絶望の更新だ」と表現された患者さんもいらっしゃいました。

だからこそ、医師や家族をはじめとした支援者は、日々襲って来る不安や恐怖を、自分自身の不安や恐怖として共有し、共感し、
また、そんな日々の中にも時々訪れる、嬉しい時間や喜びを
小さなものでも一緒に見つけ、そちらも共有しながら一緒に進んでいく、伴走する、という姿勢がとても大事だと考えて来ました。

そんなたくさんの不安と喜びの時間を共有していることをベースにしているからこそ、大事なことについても話し合いができるのだと思います。

このnoteは、今回のニュースを最初に聞いたのをきっかけに
患者さんへの向き合い方をもう一度整理してみた、というものです。
事件・ニュースがきっかけですが、その患者さんについてや、事件そのものに対する意見ではありませんので、
過剰な解釈(特に結論のようなものの一人歩き)は
されませんように・・・思考プロセスですから。
また、「安楽死」という言葉は国によって捉え方が違い、また定義はあれど言葉の解釈に個人差があります。ここでは、オランダで安楽死とされているものを見聞きした時の、僕の気づきを書いています。


人生会議をもう一度考える

ALSをきっかけに色々考え出してみたけれど、何か大事なことを決める時に大事にしている「人生会議」についても改めて考えてみる・・・

これまでの人生の中で大切にして来たこと、大好きなこと、こだわり。
病気になったことで変わった考え、変わらない思い。

今後起こりうる病状のさらなる進行や訪れうる苦痛、その不安。
そんな状況でも大切にしたいことは何か、我慢できないことは何か。

結論なんて簡単には出ないし、一度結論に達したと思ってもそれは何度も大きく変化する。
だから、結論よりも話のプロセスを大事にしていく。それが大事だと思います。
いわゆる「人生会議」と呼ばれる方法です。

「本人」が出した「結論」は意外と脆い

「本人」が「結論」を示す。これがいちばんわかりやすい、と思われるかもしれませんが
その人といろんな話をしたり、好きなことや嫌いなことをよく知る友人などからすると
「あれ?それを選ぶなんてこの人らしくないな」
って気づくことがあります。

そんな時、「本人」が出した「結論」の後ろには
気遣い、遠慮、不安、恐怖、後悔、怒り、などが隠れていることが多いです。

その感情にも共感し、同じ立ち位置に立って、もう一度話をすると
「実は・・・」と、結論がガラッと変わることがあります。

寝たきりになった患者さんが「家には帰りたくない、施設を探して欲しい」とはっきりおっしゃっても
実は家族への遠慮、申し訳なさ、生活への不安、病気への怒り、自分をコントロールできない苛立ち、があって、「自分の建てた家で病気になっても家族に囲まれて過ごしていたい」という想いを見失っていること、なんて良くあります。

「死にたい」という結論に、どう接するか

だから、

死にたい。

そんな結論に達した方と、どんな風に、どんな距離で、どっちを向いて、どれくらい時間をかけて、話をするか。話をしたい、と思えるか。そんなことをみんなで話したり共有できたらいいな。

ちゃんと共感できるくらいまで話を聞きたい。
共感=同意、ではありません。
そして、そこから話を再開したい。

本人が希望したからそれを全て叶えるのが人生会議、じゃありません。


オランダの安楽死はとことん対話の積み重ね

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以前、現状の取材とお話を聞きに、安楽死が認められているオランダに行きました。

欧米の安楽死って、本人が決めればOK、というような本人主義なのでは?なんて思っていたのですが

まるで違いました。

本人、家族、主治医。が納得いくまで話し合いを重ねる。地域の倫理委員会。倫理や法律の専門家もしっかり入って話し合いを続けます。
そして、みんなが「それがいいね」って結論に達して、初めて計画に入る。
本人が決めても、主治医が納得できなければ、計画には進まない。
主治医は「薬を投与する係」ではなく、共にその人の人生を考えるメンバーの一人なのです。
本当にたくさんの話し合い、笑って泣いて、いっぱい話し合って、悩んだり躊躇したりする時間も共有して。
これだけたくさんの人がしっかり時間をかけて、その人の人生に向き合う。
それが安楽死へのプロセスなのだ、と学びました。

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その時、安楽死に関わっているクリニックなどを案内してくれた、安楽死に関する講演や著書も多くあるシャボットあかねさんは、講演会では必ずおっしゃいます。「安楽死と自殺は、最も大きく異なります。安楽死はつながりがあり、自殺は孤独である」



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