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#17 死闘を制した自信を胸に

昇格戦線の生き残りを懸けた、まさに死闘を終了間際のゴールで制しました。大一番で白星をつかみ取り、実に4か月ぶりとなる連勝です。選手たちの自信もさらに深まったことでしょう。私たちは勝ち続けるしかありません。開幕からの連勝は5で止まりましたが13戦負けなしでした。今度は13連勝といきたいですね。

アルビレックス新潟はJ2第31節の9月25日、ホームのデンカビッグスワンで甲府と戦い、1―0で勝利しました。勝ち点で並ぶ3位と4位の戦いは、意地と意地のぶつかり合う激しい戦いとなりましたが、ロスタイム1分、新潟に歓喜の瞬間が訪れました。

みなさんもその場面を、何度も何度も見返したのではないでしょうか。DF千葉和彦選手が斜め前方のMF島田譲選手に縦パスを通すと、島田選手がフワリと浮かせたループパスを前に入れ、FW谷口海斗選手が相手と競り合いながら肩で落とし、ロメロ・フランク選手が左足を振り抜いてゴールネットに突き刺しました。

絶妙なループパスを出した島田選手をはじめ、それぞれの選手の持ち味が発揮されて、つかみ取った値千金のゴールでした。このゴールの場面に限らず、アルビは終止、右へ左へとボールを動かし続け、時に鋭い縦パスを入れ、相手の堅守を崩そう試み続けました。

スタジアムで取材されたフリーライターの大中祐二さんは、この試合を「入念に準備された『ブロック崩し』が随所に見られた90分。」と評し、新潟フットボールプレスの甲府戦のレビューを「遂行されたミッション」というタイトルで書いておられます。「ブロック崩し」いい言葉ですね。それは、具体的にどういうことでしょうか?

この試合、アルベルト監督は前節の東京V戦からスタメンを4人変えてきました。ワントップにはFW鈴木孝司選手を起用し、その1列下の左サイドにMF本間至恩選手、左サイドバックにDF田上大地選手が入り、右のサイドバックはDF藤原奏哉選手が務めました。目についたのは、トップ下の高木善朗選手の左に本間選手、右にMF三戸舜介選手という若い2人が入ったことと、田上選手の今季初めての先発起用でした。

この狙いについて、アルベルト監督は試合後のコメントで、甲府について「おそらくJ2において最も守備の堅いチームの1つだと思う」とした上で、次のように語っています。

「堅い守備を打開するために両サイドにウイングを配置した。両サイドの幅を取った攻撃、中央では(高木)善朗による攻撃を狙った。そしてSBが中央のゾーンで攻撃参加することを、(田上)大地を含めて考えた」。

大中さんの試合についての、後半の一部分だけ紹介させていただくと、「甲府の陣形が間延びし始めた。すると、次第に縦へのスピード感が強まっていった。幅を使って甲府を揺さぶり、縦パスを付ける意識は前半から顕著だったが、加えてスペースを一気に持ち上がるドリブルも映えるようになり、攻撃が加速していったのだ。だが66分の鈴木、79分の高木のシュートは甲府GK河田のセーブに遭う。」と書いています。

甲府の堅固な「ブロック崩し」というミッションを、途中出場を含む選手たちが共通認識を持ちながらやり続け、それにより劇的な結末が訪れた、ということでしょう。今回それをコンプリートしたことは、今後に向けて大きな意味があります。残留争いの渦中にあるチームには、引き分けでもいいと堅いブロックで固めてくるチームも多くあるかもしれません。もちろんそのスタイルは違うでしょうが、甲府戦で自信を深めたことで、きっとどんなブロックでも崩してくれるに違いありません。

この試合では、「サイドバックが中央のゾーンで攻撃参加する」というアルベルト監督の狙いに応えた田上選手のプレーも印象的でした。大中さんは「ニイガタフットボールプレス」は「サイドバックの働きにうなる」というタイトルの成岡翔さんとの感想戦の1回目で、田上選手のプレーについて詳しく書いています。有料コンテンツでが、ぜひ読んでいただければと思います。

Jリーグ公式サイトの選手コメントで、田上選手は「チームの総合力が出てきている?」との問いに、「自分もそうですが、試合になかなか絡めていない選手が良いパフォーマンスをすることでチームの活性化につながる。前節は三戸ちゃん、(鈴木)孝司さんが担ってくれたので、今日はなんとか自分がという思いでやった。そういった選手が活躍することでほかの選手のモチベーションを上げられると思うので、良いチームの循環になると思います。」

と答えていました。

甲府戦の終了後、中央で整列した際の田上選手の目にはうっすらと光るものがあったように見えました。「試合になかなか絡めていない選手が良いパフォーマンスをすること」ができ、そして大事な試合の勝利に貢献できた達成感に加え、安ど感もあったのかもしれません。今後の田上選手、そして他の「試合になかなか絡めていない選手」たちの活躍が楽しみです。

     ◇     ◇

今節は首位の京都、2位の磐田とも勝ったため、勝ち点差は10と9のままです。残り11試合ですが、磐田とは直接対決がありますし、磐田と京都の直接対決も残っていますから、まだまだ昇格の可能性は十分あるといえるでしょう。次節は京都がアウェーで5位の長崎戦、磐田も敵地で4位の町田戦と、ともに上位との対戦ですから、アルビはしっかりと勝たなければなりません。

アルビは10月3日に敵地で金沢と戦います。金沢は第18節(6月13日・愛媛に3―1)を最後に、ここ13試合勝利がなく、降格圏の21位に沈んでいます。しかし、勝ち点3をつかめば17位に浮上する可能性がありますから、ホームで久々の勝利を挙げようと燃えていることでしょう。

金沢には2019年に天皇杯含めて3連敗するという嫌な思い出があります。しかし、今季はリーグ戦の前半はホームで1―0、天皇杯では4―1で勝利しています。リーグ戦の敵地でも勝って、2年前のリベンジをしましょう。

今季の金沢戦は、FW矢村健選手がリーグ戦で決勝ゴールを決め、天皇杯では2得点しています。このところ出場できていない矢村選手や、他の選手の出番はあるのでしょうか。甲府戦では、惜しいシュートを放ったFW鈴木選手とMF高木選手や、切れのあるドリブルで躍動していた至恩選手と三戸選手らのゴールにも期待です。ワクワクしますね。

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アルビ戦の翌日は、同じデンカビッグスワンでアルビレックス新潟レディースも勝利しました。WEリーグ3試合目での初勝利です。こちらも勝利への強い思いが感じられた、ナイスゲームでした。試合後の選手たちの笑顔から元気をもらい、まさに「この街にサッカーのある幸せ」を実感できました。レディースについては、次回#18で書こうと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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