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バンコクのスコール

夜、外に出てみると

秋にバンコクに行った時、夜に豪雨になった。

バンコクの秋は雨季で雨がよく降るとは聞いていた。日本の夕立ちのように、夕方ザーッと降って涼しくなるのかと思っていたが、まさか夜も降るんだなと少しびっくりした。

その日はカオサンロードにあるホテルに泊まっていたので、晩ごはんを食べに外に出たところだった。何を食べようかなと考えながら歩いていたら、急に雨が降ってきた。

スコールだし少し待てば止むだろうと、お店の軒下に避難した。

軒下から街の様子をぼーっと眺めていると、道路脇で屋台をやってるおばちゃんたちが急いで店のパラソルを開いて、商品に雨避けのビニールをかぶせて、おばちゃんたちは私たちが避難した軒下に逃げてきた。

あまり焦る様子もなく、毎日やってるよ的な手馴れた一連の作業だった。


しばらく私も含めて何人かが軒下で雨が止むのを待っていた。おばちゃんたちは雨空を眺めながら世間話をしている。道路は見る見るうちに冠水して、バイクや車が川みたいになった道を水しぶきをあげて通り抜けていく。雷もゴロゴロ鳴り出して、東南アジアらしい風景だなと旅の風情がある感じがした。

あまりにすごいスコールと冠水で少し不安になったけれど、おばちゃんたちはいつものことだから大丈夫、みたいな雰囲気を醸し出して談笑している。何だか近くにいてくれて頼もしかった。

傘を渡してくれた人

私がしばらくぼーっと軒下で街を見ていたら、ふと突然若いアジア人の男性が隣にやって来て、私に傘を渡してくれた。
私はびっくりして、しどろもどろな英語でお礼を言うと、彼はすぐ居なくなってしまった。

実は、私は鞄の中に折り畳み傘を持っていた。しかし傘を差している人があまりいないというか、傘も壊れそうなほどのスコールだったので、使わないでいた。そして東南アジアらしいこの風景をしばらく見ていたいと思って佇んでいただけだった。

私は何も言わずにぼーっと立っていただけなのに、彼なりに何か察してくれて、傘を渡してくれた。

軒下でぼーっと雨を眺めている外国人を見かけて不憫に思えたのかもしれないし、困って呆然としている様に見えて、助けてあげたいと思ったのかもしれない。

そのさりげなくて優しい心遣いにすごく感激した。そんな優しい人が異国のバンコクにもいたのかと、ちょっとびっくりした。

大体いつものパターンだと、傘代をぼったくってきたり、レストランやバーの客引きだったり、何かの商売や夜遊びの勧誘など下心のある人たちも多い。

彼から貰った傘を握り締め、彼の素直な気持ちをちょっと警戒してしまった自分が恥ずかしく思えた。

雨が止む

そんなことを考えているうちに次第に雨は止んだ。おばちゃんたちはパラソルを畳み、雨避けを外してまた屋台を再開させた。

そして何事もなかったかのように、蒸し暑くて熱気のある、いつもの賑やかなカオサンロードの夜に戻っていった。



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