【読書記録】西加奈子さん『i』を読んで思う、高学歴で大企業勤めOLな私の罪悪感


西加奈子さんの『i』を読んで、主人公のアイに共感した点が1つある。

自分が恵まれていることに罪悪感を持ってしまうところだ。

私はいわゆる難関大学と呼ばれる大学を卒業し、
大企業に就職した。自分はそれなりに受験勉強をがんばったし、
就職活動も挫折を乗り越えて内定を掴み取ったし、
自分の恵まれた環境は自分の努力によるものだと、以前は思っていた。

しかし、社会人になり地方に転勤してから、高卒の人と出会う機会が
多くなった。マッチングアプリで出会って付き合った彼氏も高卒だった。
彼は、休みは少なく夜勤もあり、私の企業よりも労働環境は過酷だった。

私は特に考えずに、なぜ高卒でその会社に勤めようと思ったのか彼に聞いた。
彼は、本当は理学療法士になりたかったが、親に強く勧められたためその企業に
就職することを決めたのだそうだ。

私は衝撃を受けた。大学に進学することは当たり前では無いのだ。
生まれた家や親の考えによって人生が決まってしまう人間もいるのだ、と。

今の転勤先での上司も高卒だ。私はこの上司のことをとても尊敬している。
管理者としての広い視野、仕事への情熱、培ってきたスキルなど、
尊敬すべきものをたくさん持っており、教え方や話も上手い。
しかし、私とは採用コースが違い、労働環境は私より過酷だ。

私は高卒の彼よりそんなに偉い人間なんだろうか。
私は高卒の上司よりそんなにデキる人間なんだろうか。
良い大学を出て面接に通ることがそんなにすごいのだろうか。


アイは、ずっと自分が恵まれた環境で生きていることを恥じ、
申し訳ないと思っていた。しかしアイが選んだ生き方は、
非力な中でも、苦しみの中にいる人々に想いを馳せ、
行動することであった。

私も、自分で自分を非力であると思っている。偉い人間だとも
思わないし、他の採用コースの人たちより良い待遇を受けていることを
申し訳なく思ったりもする。そんな私でも、世の中の役に立てる
ことがあるなら、全力で力を尽くしたい。苦しみの中にいる人を
支えたり、救いになったりしたい。具体的にどの分野でどう役立つのかは
まだ定かでないが。


自分と向き合い、自分にできること、自分がしたいことを見極め、
行動する。大企業のスケールの大きさを活かして世の中をより良くしていく。
そうやって世の中に還元するという使命が、恵まれた人間にはあるのかもしれない。
その使命を果たしたとき、罪悪感は完全に無くなるのかもしれない。


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