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〈ゲーム感想〉【Chants of Sennaar】人と言葉とそれから"私"


まだまだ語り足りなかった

(ネタバレあり)
『Chants of Sennaar』について、前回はそのゲームの特徴と魅力について語りました。今回は世界観、クリアした時の感想を含めて書き記していきます。

↓↓↓ゲームの遊び方とか面白いところを書いたのは↓↓↓

今回は、ガンガンネタバレいたしますのでご注意をば。


五つの民族、五つの文化

五階層からなる謎の塔。それぞれのフロアに異なる民族が住んでいて、使う言葉も全く異なります。おかげさまで主人公は上階に登る度に、新たな言葉と対面することに。

まずは主人公が出会う人々とその文字について…(おさらいも兼ねているので既プレイの方は次項までスキップ可!)

🐈 ☀ 🐈

1階層.教徒たち
目覚めてたどり着いたのは黄金色のエジプシャンな見た目の街並み。青銅色の兜やフードを被った、飾り気のない人々が主人公の最初に出会う民族です

文字はおそらく象形文字。見た目からの推測や文字の構成がわかりやすい。貧困はあるものの苛烈さは感じず、なんとなく素朴な雰囲気を感じます。

一番最初に描かれる人が「挨拶」。
主人公の嬉しさが絵に現れてる。

特に話しかけると殆どの場合で挨拶を返してくれるところが良い。

シンボルは神そのもの。その神に会いたい一心で塔を登ろうとしますが、上階の兵士に阻まれています。当然言葉が通じないので、狼狽えるだけ。

🛡 ⚔ 🛡

2階層.兵士たち
鉄を彷彿とさせるような冷たい青と篝火の赤のフロア。物々しい装備の兵士たちが砦を徘徊しており、主人公は隠れながら進みます。

文字は楔形のルーン文字風。「私」「あなた」に値する言葉が出てきません。下の階の教徒たちを「悪魔」、上の人々を「選民」、自分たちを「兵士」と徹底してその所属で呼びます。

教徒たちに向かって
「悪魔は門を通るな!」って言ってたの!?

序盤〜中盤は逃げ隠れしながらなので、会話を行えず眺めて推測することしか出来ません。

シンボルは使命/兵団を意味しており、はっきりとした序列を好む様子。融通が利かず冷徹に見えますがイチオシなのはこの人らも音楽が好きなこと。

🎭 ♬ 🎭 

3階層.吟遊民たち
キラキラと輝く白い建造物と黄金の河の流れる地中海然とした街並み。植物も豊かで、ここの人々は優雅に過ごしていました。ただし地下には自由を願う「愚か者」たちが働かされています。

文字はインドのようなペルシャのようなニョロニョロの文字。おそらくつまづくとしたらココ。芸術関連の単語がぐっと増えます。豊かさを感じる一方、傲慢さも隠せない人々。

ちょいちょい「君ってバカだなあ」って嘲られます。

シンボルは美しさを表していて、本来は芸術と音楽を愛し向上心を持って前に進もうとする人たちです。いつからか現状に満足してしまったのか…。

🧪 🎩 🧪

4階層.錬金術師たち
3階と4階の間にいる恐ろしい影の怪物から逃れた先に、スチームパンクなオレンジ色の世界。人々はみな、ずんぐりむっくりで山高帽にペストマスクのような仮面をしています。

文字は丸や三角の幾何学模様を組み合わせたような形。最大の特徴は、ここに来てついに「数字」が出てくること。長さが測れるし重さも量れる。時計はここにしか存在しません。

仮に遊んでなくても、
何をどうすることができるのかわかる図

現代語に一番近い上に、文字も体系立てて作られているっぽいので、文字の見た目に反してかなりルールがわかりやすいです。

シンボルは変化/合成。塔の上、門を閉ざしてしまった“妖精たち”に会おうとしているのですが、自分たちが“変化”してしまっています。

🎮 🥽 🎮

5階層.隠遁者たち
最上階で待つ民。
ネオンライトが怪しく光り、暗い紫の建物には雨が振り続けます。BGMはならず、そこにいるはずの人々は謎の筒を被りVR空間に引きこもっていました。

文字は少し特殊。小単位の文字がそれぞれ意味を持ち、その文字を組み立てることで新たな意味が出来ます。漢字に最も近い文字です。

「私」と「行く」を合わせて「来る("私"に"行く")」

しかしこのフロアの文字、なぜだか心惹かれません。誰とも会話をすることなくすべての文字を解読しきってしまいます。

シンボルは孤独。あらゆるコミュニケーションから隔絶された言葉と人々、そのものなのかも知れません。


いっぱい聴けて、いっぱい喋れる

文法について。基本の基本、第三文型(SVO)の形なんですが…曲者言語がありました。

吟遊民だけ、OSVの倒置型!

一言多い民族。助かるけどね。

少しずつ慣れてきてゲームルールも分かりだしたところに放り込まれた、全く異なる言語体系。脳が一瞬理解を拒みます。おぽのが一番慣れ親しんでいないニョロニョロ文字っていうところも大きいですね。

ただ、ここを通り抜けるときすごく気持ち良かったんですよね〜。

高慢ちきなもの言いされてるって気がついて、何なら嘘までついてくる奴らも現れて、言語がわからないストレス、そしてわかった時のすっきり感。

複雑ですが意外とたどり着きやすい。なぜなら、吟遊民が一番こちらと会話してくれます。良かれ悪しかれ興味を持って接してくれる人たちです。そのため、推測の材料が沢山手に入ります。

noteに感想文書き連ねて一方的にいいたい放題のおぽのが言うのもなんですが、対話によるコミュニケーションの大事さを感じますね。

わからないなりに話しかけてみる、話を聞いてみる。推測して行動してみる。文法のお勉強、単語の暗記も必要ですが、実践に勝るものはないというところでしょうか。

その証拠というか、対極の象徴として描かれているのが、_VRの世界に閉じこもった隠遁者、そして、一方的な安寧を提供する“孤独の民”ですね。

語らない。

つなげて、つながる

理由もわからず上へ上へと登ってきた主人公、プレイヤーに明かされる本当の役割に驚きました。

このゲームそんなストーリーがあるの!?

道中もちょいちょいやっていたのですが、自分が見聞きした言葉を使って別の階の別の階の人達の間に立って言葉を“つなぐ”、言ってみれば通訳するパートが本当に楽しかったです。

ゲーム上の操作は文字を打ち込むだけ…なんですが、これはこの言語だとこういう語順で…など考えながら当てはめていくにつれて、その言葉を本当に自分のものに出来た実感が湧いていきました。

これまで右も左もわからないとこをそこにいる人々に助けてもらっていた主人公が、今度は恩返しと言わんばかりに経験を駆使して助けるっていうシチュエーションがたまりません。

そしてなにより、問題を解決したことにより少しずつ人々の交流が戻っていき、塔の中の様子が良い方向に変わっていくのが良い。

おぽのは最終局面のライティング作業が一番好きなポイントです。(遊ばれた方には、この気持ち伝わるでしょうか!?)

壊れてしまった文章。
吟遊民が見つけたのは…怪物…ではなく。

ここまで自分がやってきたことは無駄ではない、と伝わってくるいい演出でした。

この演出も好き。

世界観もゲームシステムも全てが好みにマッチしすぎているせいか、かなりの色眼鏡でものを語ってる感じがします。筆を走らせるあまり、自分の意見に都合の良いような解釈してる部分もあるでしょう。

それぐらい自分の解釈が加わるので、色んな方の感想を読んでみたくなる作品でした。

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