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〈ゲーム感想〉【Machinarium(マシナリウム)】ずっと眺めていられる、街とパズル


マシナリウムの箱庭世界

スチームパンクなブリキの街『マシナリウム』が舞台のポイント・アンド・クリック型パズルアドベンチャーです。作品が世に出たのはちょっと昔の2009年。

教育テレビチックのイラストアニメーションで、その細かな書き込み具合と、ちょっとボケたような線からちょっとしたノスタルジーを感じてしまいました。

古め作品のためちょこっとネタバレもしていきます。


グラフィック − 言葉がなくとも心はわかる

作品全体を通して色鉛筆で書いたような手書きアニメーションが特徴的です。それこそ最初に書いた教育テレビのみじか〜いクレイアニメような雰囲気があります。

スチームパンクだからでしょうか、出てくるほとんどのものが金属由来ではありますが、サビや壊れた部品が散らばり、ガラクタをつなぎ合わせたような登場人(?)物たちがこの仄暗い油と鉄の灰色な世界を彩ります。

主人公のジョセフを含め出てくるのは皆インダストリアルなロボットなのに、直線が少なく描かれているためか柔らかい印象を抱きます。ひとつひとつのリアクションもコミカルで、表情なんてほとんどないのにこの作品特有の愛らしさがあります。

特にリズムに乗ったジョセフのダンスが可愛い。

ところで、実はタイトル画面を見た段階だと「げ、失敗した?面白くなさそう…」と不安を感じていたおぽのです。遊んでみたら外れどころか大当たりだったわけですが…。

不安になった原因はフォントにあります。

日本語にローカライズされた作品には結構見られる特徴なのですが、システム周りのフォントが“ザ・ゴシック体”というぐらいゴシック体で表されています。

イラストがいいだけにそこはかとない不安。

インディーゲームは特に、予算が少ないなどの外側の要因により、ローカライズの際のフォント選びは優先されにくい傾向にあると考えています。世界観にあった書体を探すのは時間がかかる割に、いざ遊んでみるとマイナスになりそうな要素が潰れるだけでプラスには働きにくいですからね。

(もちろんインディーですし予算をかけられないことが悪いのではありません。他の要素にもお金をかけない作品の存在により、ちょっと警戒心が強まってしまっている心の狭さゆえの不安です。)

もっとも話者じゃない方々にとって、ひらがな・カタカナ・漢字の3種混ざったフォント選びは苦戦することが想像に難くありません。

であればいっそのこと、この作品は最初のチュートリアル以外一切文字が出てこないので、別言語にして違和感を減らすのも一つの選択肢だと思いました。


世界観 − 自分だけが外側の世界

グラフィックでも書きましたが、おぽのにとってはどストライクな世界でした。

この柱の間から覗くカメラの良さを伝えたい…。

常に曇ったような空の下、鋼鉄の隙間から蒸気が漏れ、はみ出たケーブルからは電流が走り、歩くたびにガシャガシャと鳴る空間。

なんとも奇妙な街を舞台に、プレイヤーは何一つわからないままゲームがスタートします。ジョセフって名前も公式のサイトで初めてわかるぐらいです。

ジョセフは目的を持って機械の街へと侵入するのですが、プレイヤーは謎を解くだけです。しかしパズルを進めていくうちにジョセフの思いも彼を取り巻く人々の関係も少しずつしかわからないようになっています。

ストーリーラインはよくあるわかり易い内容なのですが、プレイヤーがストーリーにたどり着くための情報の隠し方・出し方がうまいんです。

砂の城を壊されただけの関係…?

どんどん遊んで進めていくことによって「あ、そういうこと!」「なるほどなるほど!」と頷く回数も増えていきます。ストーリー重視のゲームではないですが、所々に散りばめられる要素が、この街はなんなんだろうという考察心をくすぐってきます。

ここに住み、生きているロボットたちがいる。そしてそれを眺める自分自身。『マシナリウム』とはこういうことか…。


ゲーム性 − 全パズルジャンルからの挑戦状

パズルゲームなので、ここも語ります。このゲームはパズル内に言葉が一切ないため、ひたすらにポイント・アンド・クリックをしながらジョセフが反応するオブジェクトを探し出すことが基本です。

もうね。背景に溶け込みすぎちゃって結構見逃すんですよ。

これに加えて、五目並べやインベーダー、絵合わせパズルなどのミニゲーム、パズルゲームが行く先々で現れます。

これがなかなか難しい。教育テレビと表現しましたが、教育テレビの対象年齢だと難しい問題もきっとあるレベルです。

意味は分かるけど意味が分からない。

当然物語は一本道で、戻ることはもちろん、パズルで詰まっても解かなければ絶対に先に進めません。苦手なジャンルのパズルが来たときは詰みかねることになります。

そんな時は誰かの力を借りるのもよしですが、二段階のヒントも用意されています。

1つ目のヒントはゴールのイメージをジョセフが考え出してくれます。ただしそこに至る経路は一切わからないので、ヒントにならないことがありましたよ…。

それをしたいんだけどわからないから聞いたのに…。

2つ目のヒントはおぽのは使いませんでしたが(強調)、ちょっとしたミニシューティングゲームをクリアすると現れるそうです。漫画のようにコマ割りがされていて、それがヒント…というか答えが提示されるようになっています。

物によってはそれを使わなければわからない可能性があるほど難しい。それはなぜか。

文字情報がないことに加えて、割と突拍子もないこともしないと辿り着けません。「それそうやって動くの!?」と何度も驚くことでしょう。むしろ手当り次第触ってみたほうが悩んで止まるよりもどんどん先に進めるかもしれませんね。


良いゲームと出会えると本当に楽しい。

プレイヤーがクリックをミスしている時、ジョセフがいくつかリアクションをしてくれるのですが、「ェッ」って小さく拒否して首を全力に横に振るのが個人的なツボです。無駄に連打したくなります。

トンネルからひょこっと頭を出すのもかわいい。

アクアリウム、テラリウムに次ぐ新たなリウム、『マシナリウム』を眺めて楽しみました。

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