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【毎週ショートショート】一方通行風呂

 僕は風呂場だ。僕は君の心の垢を言葉で洗い流して、僕の心に一方通行に流す。本物の風呂場みたいな一方通行。

 君の醜い言葉の垢を、僕は必死に受け止める。

「そうだね笑」
「確かに……そうかも笑」
「それは大変だったね……」
「全然大丈夫だよ!」
「何でも言ってね!」
「いつでも話きくから」

 いつも、君の素っ裸を見ているつもりだった。風呂場の特権で。ここでしか、君はそんな、醜い言葉は言わないだろう?

 だからいつでも、何度でも、どんな言葉が流されようとも、僕の心に繋がる管を詰まらせるなんてできなかった。君の心の風呂場の難点だ。

 ある日から、君とのLINEのペースが急激に落ちた。僕は心配になったが、君に何も送れなかった。いつだって一方通行に利用されるだけの存在だと、その時自覚した。僕は本当に一方通行風呂だったのかもしれない。

 「彼氏できたんだ~笑」

 悪びれのない一方通行な君の綺麗な喜び。澄んでいるはずのその言葉に、僕は一瞬で詰まった。
(412字)


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