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【超短編小説】気にしてほしかったな。

 彼に送った最後の連絡から一週間が経った。未だにそのメッセージには「既読」の文字が現れていない。私は日夜気になって、来る日も来る日も彼のオンライン状態を確認する。自分でもわかっている。こんなのはストーカーだ。

 今日もまた仕事が終わって、帰りの電車の中で彼とのメッセージを確認する。私が最後に送った文章、「23日って空いてるー? 駅前のカフェ一緒いこ!」に今日もまた、相も変わらず何の文字も付いていない。帰宅ラッシュの満員電車の中、ひとり落ち込むリアクションを押さえ込む。

 最寄駅まであと3駅。まだ時間があると悟った時には、私は既に、彼と繋がっている別のアプリを開いていた。完全に無意識だ。そのアプリでは、リアルタイムで誰がオンラインなのかが表示される機能がある。つまり、彼がスマホを見ているのかどうかを確認できると言うことだ。

 アプリが立ち上がると同時に、私は即座に彼のアイコンが見えるページまで飛び、彼のオンライン状況を確認する。

「オンライン中」

……は? 私は途端に悲しくなり、ただもう一方で怒りも湧いてくる。いくらページを更新しても、彼のアイコンはずっとオンライン状態を示している。この時点で、アプリのバグでオンライン表示になっているという可能性がほぼゼロであることを確信させられた。

 それでも、メッセージの返信が通知されることはなく、電車は無事に最寄駅に到着した。私はスマホを消灯し、内心ガックリを肩を落としたまま車内を後にする。私の後ろからもゾロゾロと降車してくる人並みに呑まれるように、止まることなく改札機まで一直線だ。

 ピピッと改札機を通り抜け、どしゃ降りの屋外へ。ボーッとしていた私は、大雨を自覚しながらも、鞄に入れていた折り畳み傘を開くことも忘れしばらく歩いていたらしい。駅が遠くなったころ、トントンと通りすがりのサラリーマンに肩を叩かれ、ようやく私がずぶ濡れであることに気がついた。

 私はもう、傘を取り出す元気もなくして、そのまま歩き続けることにした。スマホは羽織っているコートのポケットの中のまま、ただ濡れながら夜道を歩く。

「ヴーヴー」

そのバイブレーションに体ごとビクつく。もしかしたらと降りしきる冷たさも忘れて、私はスマホの画面をつける。

「むりかm」

彼からの返事だ。私は一旦それを保留にし、彼と繋がるもうひとつのアプリを確認する。すると、彼は珍しく新規投稿をしていた。

「まじで最近ひまだったわー遊び行ける人ぼしゅう!」


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