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【試し読み】撮像新時代CMOSデジタルイメージング イメージセンサー編

 2023年6月に発行した電子書籍「CMOSデジタルイメージング イメージセンサー編」。≪CIS(CMOSイメージセンサー +デジタル≫ の壮大な進化を技術動向の観点で紹介します。「撮像技術一筋」とおっしゃる著者の名雲文男さんの,半世紀にわたる豊富なご経験がこの本に詰まっています。同書の第1 回「CMOS イメージセンサー(CIS)の性能進化」より,一部を抜粋して紹介いたします。ご執筆は名雲文男先生(名雲技術士事務所所長)です。

第1 回 CMOS イメージセンサー(CIS)の性能進化

はじめに

 本書のテーマ“CMOS デジタルイメージング” とは本書の造語である。CMOS イメージセンサー(以降CIS)とCMOS コンピュータチップ の融合が創出する高度な撮像技術をいう。CCD はアナログセンサーだがCIS は基本的にデジタルセンサーだ。デジタル機能を搭載するCIS は今や撮像性能を成熟させ,技術開発の舵を機能追及へと切り替えている。さらに,CIS とコンピューティングの融合がそれらの進化を加速させる。
 こうしたCIS の進化を2つの世代に分けて考える。人が観る用途 =イメージング=向けの“性能進化” と,機械が情報を撮る用途 = センシング = 向けの“機能進化” の2 つの世代である。本書ではその境界に“裏面照射技術” があり,目下第二世代の成長期にあると考える。
 今回はその第一世代であるCIS の性能進化の過程を振り返ることでCIS の特質を紹介し,次回に第二世代,現在進行形のセンシング機能進化を解説したいと思う。
 それらの解説だが,幅広い読者層を想定して,半導体知識無用のマンガ的直感的な表現で解説する。お忙しい方やご専門の方は文章を飛ばして筆者のマンガ解説を苦笑しつつご覧いただきたい。それで進化の大河を再認識していただけるはずだ。なお,一歩踏み込んだ情報として,技術解説サイトのURL(QR コード:QR#m)や参考文献を各回の最後に紹介する。

§1 CIS の性能進化

 安かろう悪かろうで始まったCIS 第一世代はモバイル(携帯,スマホ)という巨大市場を駆動力にして急速な性能進化を遂げた。
 図1 に民生用実用化をベースにしたCIS 進化の過程を示す。性能進化のキーワードは“埋込型画素”,“列並列ADC”,そして,ゴールの“裏面照射型” である。

1.1 CIS の基本構成
 最初にCIS の基本構成を考える(図2)。その構成要素は2 次元アレイの画素部(P),列回路(C),そして出力回路(O)である。
 CISの画素部(P,図3)は光電変換部 = PD (Photo Diode),電荷電圧変換回路 = FDA (Floating Diffusion Amp),そして行選択スイッチからなる。CIS の第一の特徴は,画素内に超高効率のFDA を設けたことにある。
 図3初段のPD(バケツがその例え)は入射光を受け,光電荷に変換しそれを蓄積する。FDA はその電荷を超高効率に電圧に変換して(V = Q/C,Q:電荷量,C:容量,メスシリンダーがその例え),後段で発生するノイズへの耐性をもたせる。画素出力部の行選択スイッチは行読み出しのタイミングを決める。

 図4 に列回路(C)と出力回路(O)の構成を示す。上段(a)は原初型の主流,下段(b)は現在主流の構成である。
 原初型では初段にCDS (相関2 重サンプリング;QR#1)を設ける。これはFDA で生じたノイズを相殺する重要な機能を担う。列出力部の選択スイッチは列読み出しのタイミングを決める。その後,出力回路(O)のADC( A-D 変換回路)を経てデジタルの撮像信号を出力する。
 原初のCIS は汎用のCMOS 工程を利用できる低コストのメリットでWEB カメラ等へ採用されたが,“安かろう悪かろう” の低画質で苦戦が続く。そこに救世主が登場。携帯カメラに採用されて飛躍が始まる。

1.2 進化1:埋込型PD = ダークノイズ削減
 続いて携帯メガ画素カメラの時代に入る。そこでCISの前に高画質のCCD が立ちはだかる。阻まれたCIS は敵CCD の技術を取り込んで対抗する。その技術が“埋込型PD” だ。これが暗電流ノイズを劇的に減らす。

続きは電子書籍でお楽しみください

電子書籍ですが,紙の書籍をご希望の方にはPOD(オンデマンド)書籍もありますよ。(POD版は電子書籍とは価格が異なります)

以下は本書の目次です。

目次

序文
第1回 CMOSイメージセンサー(CIS)の性能進化
第2回 CMOS イメージセンサー(CIS)の機能進化(1)
第3回 CMOS イメージセンサー(CIS)の機能進化(2)
第4回 CMOS イメージセンサー(CIS)の機能進化(3)
第5回 DPS型CMOS イメージセンサー(CIS),異能異次元への進化
第6回 赤外線イメージングの話題


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