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逃げ出した郷里の味・ケサディージャを作るの巻


「ほら、メキシコ人は陽気だっていうじゃない。きっと楽しいわよ!」

アメリカ生活にやっと慣れてきたのに、そんな得体の知れない国に行くのは嫌だと泣きじゃくる小4の私に、母はそう言って励ました。

確かに、最初は全部が真新しくて楽しかった。
メキシコ人も日本人よりは陽気だった。

でもどこかに影があった。

飽きっぽい性格もあり、1年もすれば真新しさを感じなくなった。
お腹壊す。治安悪い。空気が汚い。ご飯がまずい。そんなマイナス点だけが目立つようになった頃、私は日本に帰りたいと言いだし、両親も子供たちの受験のタイミングでもあるからそれも良いだろうと、父だけを残して帰国することになった。

逃げ出した形である。


しかし都合が良いもので、帰国してから、「どこの帰国なの?」「アメリカとメキシコです」のやりとりを幾万回も繰り返すうちに愛着を覚え始め、そこにアイデンティティーさえ感じるようになった。今となっては第3の故郷と言っても良い。都合が良すぎる。

当時を偲んでメキシコ料理を食べることも多くなってきた。

しかーし!どのお店に行っても知らない味がする。
おかしいぞ日本のメキシコ料理店。

なぜトルティージャは小麦なのだ!?
タコスの肉はそぼろなのだ!?
それにあれが決定的に足りてない! フリホーレスが!!!


こうなったら自分であの味を再現するしかない。
まずはケサディージャから始めてみよう。


ケサディージャとは、その名の通り、queso(チーズ)をtortillaで挟んだ、炭水化物×脂質のギルティーなファーストフードである。

私の中では、これにフリホーレスを加えたものをよく食べていた記憶があるのに、日本でそれを期待して注文すると大抵挽肉が入っている。落ち込む。その度に、あの味が食べたい!という思いが募ってゆく。

今回こそは雪辱を晴らしたい!


トルティージャ作り

メキシコシティのスーパーでは、とうもろこし製のトルティージャが山積みにされ、専用のスタッフが頼んだ枚数を包んでくれる。さすが主食だ。
一方、小麦のトルティージャは商品棚を探さないと見つからないという、かわいそうな扱いぶり。

当時は、なぜメキシコ人はこんなパッサパサしているとうもろこし製を好むのか謎だったが、日本でここまで出会えないとなると、急に恋しくなる。
そういえば、メキシコはパンもパッサパサだったから、メキシコ人の唾液腺は我々よりも発達しているのかも知れない。

KALDIでとうもろこし製を見かけたけど、今回は買いに行く暇がなかったので妥協して、小麦で作ることにした。

入れるのは塩、薄力粉、油、水だけ。

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これをコネコネして、

伸ばす。

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めん棒なんてないからラップの芯で代用。我ながら貧困層はしぶといね。

そして焼く。

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これは良い焼き色だあああああ。


フリホーレス作り

フリホーレスとは、茶色い豆だという記憶しかなかったが、調べるとインゲン豆のことを言うらしい。

メキシコ人はこれをスープやらペーストやらにして、よく食べる。ブラジル人にとってのフェイジョアータみたいなものだろうか。なのにメキシコ料理店では出てこない。なぜ。Japanese  Restaurant で納豆が出てこないみたいなことだろうか。

豆を探したら、成城石井に1缶120円で売っていた。安い。助かる。

今日作るペースト状のものは、フリホーレス・レフリトスと呼ぶらしい。

香味野菜を先に炒めればいいという知識を駆使して、
まず玉ねぎとニンニクを炒めた。

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そしてフリホーレスの水煮を投下。

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塩、胡椒とクミンで味付けして煮詰めれば、

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これヨー、これこれ〜!!!

ようやく出会えたね、フリちゃん。ホーレス君!


これで素材は出揃ったので!

こうして!

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こう!

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はあ、これはこれは、

豆のホロホロ感と、チーズのトロトロ感と、トルティージャのモチモチ感が相まって、

MUY  RICO ね!!

大変よくできました💮

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