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21世紀の戦争において戦車は役に立つのか? ドローンと戦車

ロシア軍はさいきん、「亀戦車」を開発したようだ。滑稽な姿だが、これは要するにドローン対策であり、ジャマーも搭載している。安価ながらも効果的な追加装備で、侮れないものがある。

いつものことだが、こうしたロシア軍の知恵を馬鹿にするウクライナ信者がいる。ドローン対策の金網も登場した頃は笑われていたが今では戦車に必須の装備となっている。マイケル・コフマンという軍事研究者のえらいひとはこう言っている。「現段階で、FPVドローンに対処するもっとも効果的な手段は電子戦と戦車への追加装甲やその他のシールドを含むさまざまな種類の受動防御だ」。つまり、「亀戦車」は現段階では最も合理的なドローン対策ということだ。

クラスノホリフカで目撃された第5自動車化狙撃兵旅団の亀戦車。A7Vのような見た目。

こういう戦車が登場しているということはウクライナにおけるドローン戦争が新たな局面を迎えた証拠でもある。

ロシア軍は安価に効果的な兵器を作るのが上手だ。ロシアの滑空爆弾は前線で猛威を振るっている。高価なハイテク兵器ではなく、通常の爆弾を滑空爆弾化できる安価な滑空キットこそがゲームチェンジャーだった。亀戦車もドローン戦においてゲームチェンジャーとなるかもしれない。

そのような中で、New York TimesがDo Tanks Have a Place in 21st-Century Warfare?と題された記事を公開した。つまり、「21世紀の戦争において戦車は役に立つのか?」

というわけで、ニューヨーク・タイムズの戦車とドローンの関係を論じた記事を抄訳してみた。

21世紀の戦争において戦車は役に立つのか?

自爆ドローンが戦場で目立つようになるにつれ、強力な米国のエイブラムス戦車でさえもますます脆弱になっている。

ウクライナでのドローンの戦いは、現代の戦争を一変させている。アメリカの軍事力の最も強力な象徴の一つである戦車にも致命的な損害を与え始めており、将来の紛争における戦車の運用法が書き換えられる恐れもある。

ロシア軍は過去2か月間で、昨年の秋ペンタゴンがウクライナに送ったアメリカ製M1エイブラムス戦車31両のうち5両を破壊したと、米国政府高官が語った。また、少なくとも別の3両が中程度の損傷を受けている。
ドイツのレオパルト戦車はすくなくとも30両が破壊された。だが、エイブラムスは、世界最強の戦車の一つと広く考えられている。エイブラムスが、当局者や専門家の予想よりも遥かに簡単にドローンの餌食になっていることは、「ウクライナでの戦争は現代戦争の本質そのものを塗り替えるものだ」とハドソン研究所のKasapoglu氏は述べた。

今週末、米国下院は、切実に必要とされている防衛兵器を含む、ウクライナに対する610億ドルの支援パッケージを採決する予定だ。これが戦車にとってなぜ重要なのか見てみることとしよう。

高精度で低コストのタンクキラー

戦車は強力とはいえ、貫通不可能なわけではない。上部、エンジンブロック付近、車体と砲塔の間といった装甲のもっとも薄い部分では、戦車は脆弱である。戦車は、長年にわたって、地雷や即席爆発装置だとか、あるいはロケット推進グレネード、対戦車誘導ミサイルなどの「ヒットアンドアウェイ」的で肩に担いで撃つ方式の兵器の標的にされてきた。それらは戦車の頭上から飛来し、最大で90%の確率で命中させることが出来るため、ウクライナ戦争の初期には広く使用されていた。

いまではドローンが戦車に対して使用されており、またドローンはもっと正確に目標を攻撃できる。一人称視点ドローン(FPV)はカメラを搭載しており、操縦者はリアルタイムで映像を確認しながら戦車の最も脆弱な部分に誘導するのである。ライスナーによると、FPVドローンは、地雷や対戦車ミサイルによってすでに損傷を受けた戦車に「とどめを刺す」ために送り込まれることもある。戦場から回収されて修理されないようすにするためだ。

ドローンの値段は500ドル程度と安価になった。このような些細な投資で1000万ドルのエイブラムス戦車を破壊できるのだ。また、いくつかのドローンは、RPGの弾頭やイラク戦争でIEDによく用いられた自己鍛造方弾薬を積載することで爆発の威力を強化することも出来る。

簡単な、あるいはそれだけで十分な防御方法は無い。
エイブラムス戦車を受け取って数週間後の11月、ゼレンスキー大統領はこのように語った。「戦場において、エイブラムス戦車が最も重要な役割を果たすと言うことは難しい。数が少なすぎるからだ。」

当局者や専門家には、ウクライナ軍の司令官は、将来の攻勢のためにエイブラムス戦車を温存するつもりで、数少ない戦車を失うリスクのある前線に投入することを拒否したと考えている者もいる。ところがむしろ、今年の初めウクライナ軍はアウディーイウカを維持するためにエイブラムス戦車を第47機械化旅団に配備した。アウディーイウカ維持の試みは失敗し、2月にロシア軍の手に落ちた。

ライスナー大佐は、第47旅団はキエフ防衛に役立っているドイツ製のゲパルト自走式砲が備えているような短距離防空システムのを備えていなかったため、ドローンはエイブラムス戦車を狙い撃ちにできたことだろうと述べた。
FPVドローンは、ジャマーによって操縦者との接続を妨害することで停止させることができる。ウクライナの戦場では、ショットガンや単純な漁網でさえも、ドローン対策に使用されている。

「現段階では、FPVドローンに対処するもっとも効果的な手段は電子戦と戦車への追加装甲やその他のシールドを含むさまざまな種類の受動防御だ」と、ワシントンのカーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアプログラムの上級研究員マイケル・コフマン氏は述べた。同氏は、FPVに対処するには「戦場での状況に応じたアプローチ」が必要であり、ウクライナ軍はますますそれに熟達しつつあると述べた。

しかし、ライスナー大佐は、ウクライナは防空システムを切実に欲しており、従来は前線に配備されていたゲパルトや他の短距離対空兵器を都市や重要なインフラの防衛に当てていることで、戦車は完備された防御を奪われていると指摘した。

第47旅団の広報担当者はコメントに応じず、ウクライナ国防省もこの件について議論することを拒否した。しかし他のウクライナ軍は、高度な地対空ミサイルやその他の防空システムをFPVドローンに対して使用したことはほとんどないと述べた。これらの兵器は通常、ジェット機やヘリコプターを撃墜するために必要だからである。また、効果がないのではないかと疑問視する専門家もいる。ドローンは小さすぎるし速度も速いので、命中したりレーダーに捕捉されたりしないからだ。

NATOのデビッド・M・ファン・ウィール氏は、一部の軍隊はすでに、攻撃してくるドローンをエネルギーで燃やして破壊できるレーザー光線をテストしていると述べた。こうしたいわゆる指向性エネルギー兵器は、他の種類の弾薬よりも安価で供給量も多く、FPVドローンのような小型の標的を攻撃できる可能性もある。しかし、すべての新しい形の戦争と同様に、レーザー兵器を無力化する対抗手段が発明されるのは時間の問題だと、ファン・ウィール氏は金曜日のインタビューで語った。

では、戦車はもはや時代遅れなのか?
ライスナー大佐は、戦車が戦場で使用されるかぎり、軍事エンジニアは戦車を破壊するための新たな方法を模索し続けると述べ、また、FPVドローンによってエイブラムスやレオパルトのような他の先進的な戦車に時代遅れになったわけではないと語った。

「領土を制圧するには戦車が必要だ」とライスナーは、戦車という地上戦で最も強力な兵器について語った。

一部のアナリストは、未来の戦争では、兵士は地下に潜り地上では遠隔操作兵器が戦うようになると考えているが、FPVはその重要な要因である。
このような環境では、視界と無線電波を維持するため、兵士は近くの地下壕から兵器を操作して戦うようになるだろう。

大佐は、このような地上戦は主に一人称視点のドローンと無人地上車両の戦いになるだろうとし、「『ターミネーター』のように互いに戦うことになるだろう」と語った。

https://www.nytimes.com/2024/04/20/world/europe/tanks-ukraine-drones-abrams.html


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