見出し画像

2021年度 大学入試共通テスト 生物 所感と解説

―――初めに―――
・この記事は,2021年1月17日に実施された,大学入試共通テストの生物の所感や解説を,心赴くままに書いたものです。
・問題は適宜ダウンロードしてください。
―――――――――

第1問 出たな乳糖不耐症。牛乳飲んだらお腹壊す症状のことですよ。

問1 今から長々と話すことは,まぁ知ってても知らなくても構わないんですが,小腸上皮細胞が腸管内のグルコースを体内に吸収する仕組みとして,SGLT(ナトリウム-グルコース共役輸送体)とGLUT(グルコース輸送体)とナトリウムポンプが協調していることは,私立医大などで時折出題される内容ですね。ナトリウムポンプのはたらきによって上皮細胞内はNa+濃度が低く保たれており,腸管内と上皮細胞内との間でNa+の濃度勾配が生じます。この濃度勾配を利用して,SGLTでNa+とグルコースを一緒に細胞内に取り込みます。腸管内のグルコース濃度に関わらず,ATPを利用してナトリウムポンプにより形成したNa+の濃度勾配をエネルギーとしてグルコースを細胞内に取り込むため,これは能動輸送に含まれます。その結果,細胞内のグルコース濃度が毛細血管内よりも高くなるため,グルコースはGLUTを通って血液中へと流れ込みます。これはグルコースの濃度勾配によるため,受動輸送です。この内容から分かることは,ラーメンの炭水化物は塩分と一緒に吸収されるということ。面白いのは,腎臓でグルコースの再吸収を行うときも同じ仕組みがあること。小腸も,腎臓も,体外にあるグルコースを体内に取り込む点では一致していますね…。
 今回は上記のようなタンパク質の協調を知らずとも,問題文に「グルコースを小腸管内の濃度にかかわらず取り込む」ことから,受動輸送でないことは明らかですね。

問2 「L無の“成人”の頻度が0.16」とあるので,0.16は遺伝子頻度ではなく個体の頻度。L有とL無の遺伝子頻度をそれぞれp,qとすると,p+q=1かつq^2=0.16。よってq=0.4≧0であり,p=1-0.4=0.6。ヘテロ接合の頻度は2pq=0.48でFA。

問3 選択肢を順にみていきましょう。
 ① オペロンは原核生物の転写調節に見られる遺伝子発現の単位なので×。
 ② DNAポリメラーゼがはたらくのは複製のときなので×。ここがRNAポリメラーゼなら〇…として差し支えないと思うが,真核生物のRNAポリメラーゼが認識するのはプロモーターに結合した基本転写因子であり,基本転写因子と共にプロモーターに結合することには注意してもらいたいところです。
 ③ 選択的スプライシングにより,×。B細胞のBCRと抗体産生細胞の抗体では,選択的スプライシングにより,細胞膜表面への結合部位をもつものともたないものを発現し分けていますね。
 ④ タンパク質合成…つまるところ翻訳は核外で起こります。×。
 ⑤ 筋細胞では筋細胞の,神経細胞では神経細胞の形成・維持にはたらく遺伝子がはたらいていますね。だからこそ形や機能が違う。これが〇です。

問4 第1問から進化を扱うというのは,なかなか面白いかもしれません。実験を1つずつ追いかけてみましょう。
 実験1 アジアやアフリカではSNPの塩基がCである人の割合が1.00であり,ヨーロッパでは1.00ではないことが分かります。
 実験2 タンパク質Yはラクターゼ遺伝子の転写を促進するということは,タンパク質Yが発現すればラクターゼ遺伝子が発現し,乳糖を分解できる(表現型がL有である)ことが分かる。問題文よりタンパク質YはDNA結合タンパク質であり,Cを含む配列には結合しないことから,実験1と合わせて,SNPがCである人が乳糖不耐(L無)であることが推測される。
 実験3 チンパンジー,ゴリラ,オランウータンは乳糖不耐(哺乳類なので乳児期は乳を飲んで育つはずなので,成長に伴ってラクターゼ発現量が低下するのかもしれません)。
 さて,実験を追いかけたら選択肢を検討します。
 ① アフリカで不利なら,アフリカでCの人が1.00にはならないでしょう。×。
 ② 実験2,3から,ヒトの祖先型がC=L無対立遺伝子だと分かるので×。
 ③ ヨーロッパのL有対立遺伝子=Tの頻度はせいぜい0.68で,L無対立遺伝子=Cの頻度は0.32ということは,0.32^2≒10%の人はL無ホモ。「ほぼすべての人がL有対立遺伝子をもっている」は言い過ぎでしょう。×。
 ④ 実験2,3から,ヒトの祖先型がC=L無対立遺伝子だと分かるので,T=L有対立遺伝子が突然変異によって生じたというのは十分考えられること。〇。
 ⑤ ヨーロッパ(スウェーデン)ではC=L無対立遺伝子<T=L有対立遺伝子なので×。


第2問 グリーンアノールは,日本では特定外来生物指定。でもこの問題の舞台はフロリダ半島で,グリーンアノールを在来種として扱う問題。こういうのいいですね,好きです

問1 ①,② あります。明らかにこの選択肢は誤りではない。
 ④ 移入されるまでは,外来生物と在来種は同所的に存在していないので,共進化関係を有することはあり得ません。
 ③ 外来生物を駆除して生態系を復元する試みは,世界中でほぼ成功してい…るわけありません。日本各地のブラックバスの駆除にどれだけの人と時間と金がかかっていることか。

問2 まずは実験結果の解釈から。
 非導入区のグリーンの個体数がほぼ一定であるのに対し,導入区のグリーンは1996年から1997年の間に大きく個体数を減らしました。問題文に「寿命は1年半」とあるので,1995年に生まれたグリーンの個体は,導入されたブラウンと種間競争を起こし,1996年から1997年の間に寿命を迎える前にあまり多くの子を残せなかったというストーリーが考えられます。さて,選択肢を見ていきましょう。
 ① ちょっと何言ってるのか分かりません。どこから突っ込んだらいいものやら…。×。
 ② 個体群の成長はS字曲線を描き,環境収容力に達した個体群はその成長を止め,個体数は理論上一定になります。図1からは,導入区のブラウンの個体数が一定になっている様子は読み取れないので,×。
 ③ でしょうねぇ。〇。
 ④ 実際に計算してみるといいでしょう。値が全然違うので×。

問3 これも実験結果の解釈から。これはまた,綺麗な結果ですね…美しい。
 実験2 導入区のグリーンは,非導入区のグリーンと比べて生活空間の高さが上昇しています。元々暮らしていた高さには導入区のブラウンが陣取っており,これはグリーンとブラウンが生活空間をめぐって種間競争を起こした(グリーンが元の生活空間を追われた)というストーリーが考えられます。
 実験3 導入区のグリーンと非導入区のグリーンを比べると,前者の方が指先裏パッドの表面積が増加するという変異が生じています。卵を採取して人工環境下で育てても同様の結果が得られたということは,この変異は遺伝的変異であることが分かります。…例えば,様々な国から赤ちゃんを日本に集めて育てる様子を想像してみてください。彼ら彼女らは日本語を話すようになるでしょうが,髪の毛や肌や虹彩の色は平均的な日本人のようにはならないでしょう。日本語は後天的に学習するものですが,髪の毛の色は遺伝的に決まっているので,育つ環境が変わってもその影響を(あまり)受けません。グリーンの卵を採取して人工環境下で育てる実験は,その変異が遺伝的変異か環境変異かを見分けることに貢献します。ブラウンの導入から15年後とあるので,寿命が1年半であることから少なくとも10世代が経過したことが分かりますから,世代を経て指先裏パッドの形質に変化が起きた(進化が起こった)と考えても矛盾はありません。さて選択肢を見ていきましょう。
 ① 明らかですね。〇。
 ② 非導入区のグリーンは生活空間の高さを変えていないので×。
 ③ 導入区のグリーンは,生活空間の高さを変えてブラウンとの住み分けを果たしているので×。
 ④ ブラウンの指先裏パッドについては何も調べていないので×。
 …もう少し,選択肢に工夫はなかったんですかねとは思います。実験結果は非常に綺麗で,めちゃくちゃ面白いことが分かっているのに,①の選択肢がそのまま過ぎて…ううむ。

問4 ① 実験1より,導入区のグリーンの個体数はかなり影響を受けていますね。×。
 ② 実験3から,グリーンの卵を採取して人工環境下で育てても同じ傾向が得られたということから,これは遺伝的な変化であると分かります。×。
 ③ 実験2から,非導入区のグリーンに生活空間の上昇は見られないので×。
 ④ 見事な住み分けですよね。同属異種の生物は,近縁であるがゆえにニッチが重複しやすく,同所的に存在すると激しい種間競争が起こるので,共存しにくいと言われます。逆に,近縁な2種が同所的に存在するも競争排除が起こっていない場合,どうして競争排除が起こっていないのか(どのようにして種間競争が緩和されているのか)というのは,生態学上の重要な研究テーマなのです。この辺,面白いですよ…!


第3問 「グラフ読めますか?計算できますか?」な問題。ソラさんとユメさんの会話文ですね。試行調査にいたアスカさんとシンジくんはどこにいったんでしょう。

問1 まずはグラフの解釈から。初夏のグラフを見ると,優占種Pは典型的な広葉型の生産構造図ですね。他種は低い所にも葉が多いようなので,イネ科型の生産構造図を示す草本もPの周りには多いのでしょう。
 ① 確かに,早春の最上部は第3層で,初夏の最上部は第5層ですから,第1層の葉は第3層へと上がっていてもおかしくないと思えるかもしれません。しかし,これは単に茎の先端が伸びただけでしょう。そもそも葉は持ち上がりません。低いところの葉は低いところのまま,茎が伸びて新しい葉を古い葉の上に展開します。よって×。茎頂分裂組織が,葉を展開しながら上へ上へと伸びていく様子をイメージしてみましょう。
 ② このグラフから個体数は分かりません。×。
 ③ 臆さず計算してみましょう。早春ではPの20cm以下の葉以外の器官は3.5+5=8.5g/m^2くらい。初夏でも同じくらい。×。
 ④ 臆さず計算してみましょう。早春では,Pの20cm以上の葉の乾燥重量は葉以外の器官の乾燥重量とほぼ同じなので,葉の割合は50%くらい。初夏では,20cm以上では明らかに葉の乾燥重量の方が多いので,葉の割合は50%を大きく上回ります。よって〇。
 ⑤ 高木による遮光の影響は,もっと高いところに現れるはず。×。

問2 ア 臆さず計算してみましょう。Pの第3層の葉の乾燥重量は,早春は2,初夏に6。3倍ですね。
 イ 臆さず計算してみましょう。30cmラインの光量は,早春は100,初夏に10。0.1倍ですね。

問3 ウ 臆さず計算してみましょう。早春の葉は1gあたり250cm^2で,それが2.0gあるので総面積は500cm^2。1時間当たりCO2吸収量は0.175mg/cm^2なので,総面積をかけて87.5mg。
 エ 臆さず計算してみましょう。初夏は,早春と同様に計算すると126mg>875mg。初夏の方が多いですね。
 初見の計算問題だからってビビっちゃだめですよ。何も微分積分をやれと言われるわけじゃないんです,だいたい四則計算とか,連立方程式くらいしか要求されません。京都大学の入試で,光屈性の程度を計算する際に三角比をガッツリつかう問題が出たことがありますけど,たかだかそれくらいじゃないですかね。


第4問 どうもマクロな生物学が目立ちますね。

問1 単純な知識問題。
 (a) 「刷り込み」は学習のド定番。後をついて歩くようになること自体は生得的行動ですが,何を親とするかの部分は,一定期間内は学習によって修正が可能です。ヒナの眼が開いた瞬間,たまたま目の前を車が通りすぎた場合,その情報を修正できないのはちょっと困りますよね。〇。
 (b) 婚姻色が学習によるものだと面白いですよね。「いろんな色を試したけど,この色のときだけめっちゃモテるわ」じゃないんですよ。×。
 (c) 刷り込みと同じく学修のド定番一つ,アメフラシのこの行動は「慣れ」ですね。〇。

問2 表1の解釈とともに。…若鳥の聴覚の有無って何ですかね,何かで耳を埋めるとかですかね。
 A種は歌を聴かせようが聴かせまいが,若鳥の時期に聴覚があろうが無かろうが,自種の歌をさえずるようになります(→(d))。明らかに生得的で,遺伝的に歌が固定されているのでしょう(→Ⅱ)。
 B種は,若鳥の時期に聴覚があり,しかも自種の歌を聴かせられないと,自種の歌をさえずるようにはなりません(→(g))。明らかに学習で,生まれてからどのような歌を聴くかが大事なのでしょう(→Ⅰ)。

問3 なんとまぁ,繁殖干渉じゃないですか。これも生態学上の重要な研究テーマです。ある種の生物の繁殖活動が,他の種の繁殖活動に干渉してしまうこと―そしてその干渉の結果,干渉を受けた種が残す子孫の数が減少することを指して言う言葉です。例えば,近縁な2種の植物が同所的に存在していて,2種間では雑種ができるが,その雑種が生殖能力を持たないとします。そのとき,雑種の形成に使われた花粉や卵細胞は,その次の世代を残すことに貢献せず,雑種の親にあたる個体にとっては,その分残せる子孫の数が減ることになります。あくまでこれは一例で,様々な事例が観察されています。第3問 問4のところで書いた,“近縁な2種は共存しにくい(はず)”というテーマともつながっている,大きな大きな研究課題です。さぁおいで…おいで…(沼へのいざない)
 さて問題に戻りましょう。「種に固有の歌」が「なわばり防衛のアピールや自種の雌に対する求愛」であるならば,「混ざった歌」はその役を為さないでしょう。繁殖には〔失敗(ア)〕しそうですし,個体群の成長は〔妨げられる(イ)〕でしょう。近縁種どうしは共存し〔にくく(ウ)〕なります。

第5問

問1 ① 胚乳核の核相は3n,受精卵の核相は2nです。胚乳核の方が,極核1つ分DNA量が多くなるので×。
 ②~④ 教科書レベルの知識問題です。全部〇。

問2 第3問の生産構造図の解説でも触れた茎頂分裂組織がここで出題。茎「頂」なので,その分裂組織の位置はYです。また,葉原基(これから葉になるところ。図2のP1とかP2とか,図1のXとか)のサイズは問題文よりP2>P1で,単純にP2の方から先に出来たから大きいと考えます。

問3 これも綺麗な実験結果ですね。図4が,葉原基Iが正常な葉となっていること(図4の処理の有無が,異常な葉の形成に関与しないということ)が分かると,一気に解きやすくなると思います。さらに図5から,葉の表側は隣接するMの向きに寄るものだと分かれば楽勝ですね。
 (a) 図3,5と図4の比較から分かります。IとMを隔てているかどうかが違っていますね。〇。
 (b) 図3と図4から,P1とP2はIが扁平になることに関与しないことが分かります。×。
 (c) 図4と図5から,Iは隣接するMの方向に表側を向けることが分かります。〇。

問4 ① オーキシン添加だけでは根のクロロフィル量は変化してないですね。×。
 ② サイトカイニン添加では根のクロロフィル量はやや増加するようです。〇。
 ③,④ ②が〇なら③と④は×ですね。
 ⑤ 茎から切断することで根のクロロフィル量が大きく増加しているので,茎と繋がっている根はクロロフィルの増加を抑えられているかもしれません。関係ないとは言えないですね。×。

問5 これ,結局,①~⑤の中でオーキシンの寄与の大きい現象を答える問題なんですよね…?なんだこの問題…と思いつつ…
 ① 気孔の開閉…というか閉鎖はアブシシン酸ですね。アブシシン酸は,私は勝手に「耐乾燥ホルモン」と思っています。アブシシン酸が促進する種子休眠も,種子の中で化学反応が進まないよう脱水する過程がありますよね。
 ② 果実の成熟はエチレンですね。エチレンは落葉も促進します。今は昔,ガス灯の近くの街路樹の葉がやたらと落ちることが,エチレンの発見につながったのは有名な話。
 ③ 春化はフロリゲンの発現促進に関与します。
 ④ 頂芽優勢はオーキシンの代表的なはたらきですね。頂芽を切除すると側芽が成長するが,頂芽の切り口にオーキシンを添加すると側芽が成長しないという,教科書にも載っているあの実験です。
 ⑤ 花芽形成はフロリゲンによるもの。

問6 「息を吹き込んだ」→どれくらい?というのがネックです。「息」というのは非常に量が調節しにくいので,定量的な実験には向きません。
 ①,④ そもそもヨウコさんの吹き込んだ二酸化炭素が,石灰水を濁らせるのに十分かどうかを確かめる必要があります。もし十分でなければ,根を入れようが入れまいが,石灰水は濁りません。
 ② 光合成をしていれば試験管内の二酸化炭素は減るでしょうが,試験管内の二酸化炭素が減っているからといってそれが光合成である保証はありません。仮説として光合成は示唆されますが,ひょっとしたら化学合成しているかもしれません。光をあてれば石灰水が濁らず,光をあてなければ石灰水が濁るのであれば,光が関与しているであろうということが分かり,光合成であるという仮説の確からしさが上がります。
 ⑤ 「石灰水が濁らなければ,光合成しているだろう」という推論をより確からしいものにするためには,光合成をすることが確実な葉でやってみて,確かに石灰水が濁らない―ということを確認することも大事です。立てた推論に,「…ほんと?」と一度突っ込んでみてください。
 ③ ちょっと何言ってるのか分かんない

問7 ここで問題文と問1に戻りましょう。要するにヨウコさんは,モデル生物であるシロイヌナズナを用いて行われた,オーキシンやサイトカイニンや茎との切断が根のクロロフィル量に与える実験(図6)について,ランで同じことをしたいんですよ。シロイヌナズナで言えることは,ランでも同じことが言えるかもしれないし,言えないかもしれません。言えなかった場合は,なぜ言えないのだろうということがテーマになるわけです。だから,クロロフィル量やオーキシン濃度やサイトカイニン濃度を測定する。
 まぁ,ひげ根の長さの総和も,測りたかったら測ったらよろしいがな…とは思うんですけどね。そこから別の何かが分かったり,別のテーマが生まれたりするかもしれませんよ。


第6問 発生が出ないなぁと思ってたら最後に来ました。

問1 「眼ができる」ためには,眼杯自身が分化する網膜だけでなく,表皮から眼杯によって誘導される水晶体や,表皮から水晶体によって誘導される角膜が必要です。つまり,誘導の連鎖が必要です(②〇)。
 ① DNAに比べれば圧倒的に不安定なmRNAが,受精卵の時期から眼球形成時まで残ってたら脅威です。×。
 ③ ホックス遺伝子の変異によって眼ができるのであれば,移植片由来でない眼ができるように思います。そもそもホックス遺伝子の発現するフェーズが終わっているようにも思います。ちょっと調べてみよう。
 ④ 「再生」というのは,もともとそこにあったものに使う言葉です。もともとそこに眼はないので,×。
 ⑤ 二次胚を生じさせる形成体は原口背唇部なので,「頭部の領域」ではありません。×。

問2 図1より,領域Mのうち,タンパク質Xのないところに眼が形成されていることがわかります。したがって,眼を形成しなくなった種では,領域Mがタンパク質Xの分布する範囲に入ってしまった場合であると考えられるので,タンパク質Xが分布する範囲は〔著しく拡大(ア)〕したと考えられます。逆に,タンパク質Xが分布する範囲が〔ほとんど消失(イ)〕すると,それは図1右の図で,両の眼の間がだんだん狭くなってくるということですから,終いには〔中央に一つ(ウ)〕の眼ができると考えられます。

問3 ①,② そんなことはないですね。むしろ正常のオタマジャクシの方が,そして赤色光の方が遅いくらい。×。
 ③ 0分から20分の間は遅くなり続けているので×。
 ④ グラフより,赤色光と青色光への応答は正常なオタマジャクシとノーアイのオタマジャクシとで変わらないし,かつ,どちらも色に応じた異なる運動をしていることがわかります。このことから,ノーアイのオタマジャクシも,正常なオタマジャクシと同様に,赤色光と青色光を見分けていると考えられます。〇。

問4 これも綺麗な実験結果ですね…実験1と2をよく見比べていきましょう。
 図4から,正常なオタマジャクシはトレーニングによって赤色光を忌避する(赤色光を照射された時に,そこに長い時間滞在しない)ことが分かります(①~③×)。また,図4より,正常なオタマジャクシは電気ショックが無ければ赤色光を忌避しません(④×)。さらに,実験1とあわせると,ノーアイは赤色光と青色光の見分けはできたものの,電気ショックによるトレーニングを受けても赤色光を忌避しません。このことから,赤色光を忌避するのに眼が必要であることが分かります(⑤×⑥〇)。

問5 赤色光の忌避は問題文に「学習行動」とあるので,生得的な反射ではなく,脳で処理していると考えるのが妥当でしょう(①×③〇)。「胃方向」の学習成功率は0%ですし(②×),正常なオタマジャクシとテイルアイのオタマジャクシの学習成功率は,どこをどう見ても同じではありません(④×)。


感 想

 私が農学…特に生態や進化の分野をよくやっていたこともあり,グリーンアノールとブラウンアノールの種間競争や,鳥類の繁殖干渉など,出題の背景となっている実験やテーマは非常に興味深いものでした。
 生物基礎と同様,「国語化」が進んでいると思います。選択肢はもう少し捻った方がいい問題になるような気もします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?