カスタマーサクセス市場の大きな変化予測「SaaSから小売・EC・デジタル体験へ」
海外の調査会社Mordor Intelligence社が2021年-2026年のカスタマーサクセス市場の予測レポートを173ページにて発表しました。このレポートを元に、カスタマーサクセスの大変化についての予測記事を皆様に発表します。
なお、本レポートの目次は下記で、カスタマーサクセスの市場を分析するうえで必要な情報が網羅されており、こちらから大きなトピックを拾って解説します。
①小売、EC領域のカスタマーサクセスのトレンド
小売・ECの業界のデジタル体験に占めるカスタマーサクセスシェア率が向上
従来、カスタマーサクセスはSaaSの領域のものとされており、カスタマーサクセスを取り組む企業としてのシェア率が最も高い業界はSaaS全般とされてきました。
しかし、昨今においては小売業界・(予約サービスを含む)EC業界におけるデジタル体験が占める、カスタマーサクセスのシェア率が高まっています。
小売・ECは従来、CRMによりLTVに投資してきた
小売やEC、WEB予約といった領域は、「カスタマーサクセス」といった言葉が普及する前から、CRM活動としてLTVを高めるためのデジタルマーケティングに投資をしてきました。私自身も、はじめのキャリアはEC業界におけるエンジニアでしたため、この市場をよく把握しているつもりです。10年以上も昔の話になりますが、ECや通販の事業者はSaaS業界よりはるか以前から、複数回購入や定期購入を促進するようなデジタル体験に投資をしていました。
私の過去のシステム開発も、カゴ投入後にいかにクロスセルをさせるか、初回購入後にどのようにF2転換(2回目購入)に結びつけるのかといったLTVを高めるための実装がほとんどでした。
CRMによるLTV経営が「カスタマーサクセス」に統合する
これらの小売やECにおけるLTV経営は、カスタマーサクセスとは別文脈で始まり、そして進化してきました。しかし、昨今のムーブメントを見ると、従来のCRM活動が「カスタマーサクセス」の名の元に新しいものに進化しているのです。つまり、カスタマーサクセスの文脈における小売・ECの存在感が大きく増しているのです。
直近で、興味深く拝読していたのは、日経クロストレンドにおけるLTV経営の特集です。
紹介される会社は、オルビス・日本コカコーラ・アシックス・GDOといった会社が並ぶのですが、これらの会社は昔からCRMのためのデジタル投資に積極的な姿勢を見せてきた会社です。
そして、これらの会社特集を読むと、小売/EC領域におけるCRM戦略からカスタマーサクセス戦略へ進化していく、市場の変化を感じ取ることが出来ます。
従来のCRMは割引による販促施策に過ぎなかった
従来のCRM戦略はロイヤリティマーケティングという名の元でポイント施策・リピーター割引が中心でした。つまり、複数購入における高LTV顧客に対しては割引を行おうというものです。
デジタルマーケティングにおいては、デジタルの広告商品やSNS/スマホの広告枠など、新しい広告手法の登場からCPAが強く注目されてきており、LTVはまだ注目が当てられていなかった事情もあったのでしょう。
デジタル広告枠の競争激化とCookieレスがLTVの注目度を高めた
しかし、SNSやスマホの広告枠が定着&競争激化し、Cookieレスの時代に突入することで市場環境が大きく変わりました。そして、LTVが改めて注目を浴びるようになったのです。Cookieレス時代においては、購入や契約後の顧客IDをベースにしたコミュニケーション戦略が必要となります。
日経クロストレンドのLTV経営特集の企業のインタビューからも、デジタル体験で「商品・サービスの価値を正しく伝える(カスタマーサクセスを促す)」という、割引に頼らない本質的なLTV経営に向かっている様子が伺えます。
掲載企業の各社の取り組みは、つまるところメッセージ設計や、デジタル体験開発といったコミュニケーションのDXです。これらの取り組みはまさに「カスタマーサクセス」であり、グローバルで急激にシェアを伸ばしているのです。
デジタルマーケティング、CRMの部門が「カスタマーサクセス」に改名する
海外の動きは日本国内でも既にその予兆があります。例えば、上記の記事における取材先である花王・鈴木様の部門は「花王DX戦略推進センター カスタマーサクセス部」ですが、これは元々はコンシュマーリレーション開発部、つまりCRM部門の改名です。今後、日本企業においても、デジタルマーケティング、CRM、DXといった部門が、カスタマーサクセス部門に改名していくような動きは進んでいくことで、BtoC企業におけるカスタマーサクセスが存在感を示していくでしょう。
小売市場、EC市場の大きさがカスタマーサクセス市場に大きく影響を与える
SaaS市場よりも小売、EC市場のほうが遥かに規模が大きいため、BtoB企業からBtoC企業へ、急激にカスタマーサクセスのシェア率も変化していくはずです。
市場調査レポートの中でも、小売・EC領域におけるカスタマーエクスペリエンスへのデジタル投資が、カスタマーサクセスにおけるシェアを拡大させていることが記されております。この通りに世の中が変われば、カスタマーサクセスの定義はより広義なものに変わり、一層の広がりを見せていくでしょう。
②CRMが動的なCRMへ
動的なCRM
はじめのMordor Intelligence社の市場レポートに話を戻しますと、もう一つ面白い表現は「動的なCRM」です。
カスタマーサクセスの名のものに、CRMとソーシャルを統合していくような動きが行われているのです。私自身は、マーケター時代にCRM担当とソーシャルメディア担当どちらも経験したことがあったのですが、思えばこれらの活動はカスタマーサクセスに近いものだったのかもしれません。
先ほど紹介したMarkeZineの記事では、CookieからIDへ、つまり契約者・購入者という1人の人間をベースにした取り組みについて記載されています。
市場レポートでは、この購入者をベースにしたソーシャルな交流活動、例えば「オンライン・コラボレーション、フィードバック収集、メディア共有、ブレインストーミング」といった取り組みを『動的なCRM』と表現しています。
人間的な対話型のCRM活動
もう少し噛み砕きますと、オンラインで顧客と交流する、顧客との対話で直接のフィードバックをもらう、顧客の生の声をメディアで活用する、顧客とともに考えるといった、人間的な対話型のCRM活動が小売・EC領域のカスタマーサクセスにおいて注目されているのです。
そして、この活動は、SaaSのカスタマーサクセスにおいては既に当たり前のように取り組んでいる施策なのです。それは、ハイタッチにおけるVoC収集、コミュニティ活動、カスタマーマーケティングといった領域です。
SaaSのカスタマーサクセス経験者が大手企業のカスタマーサクセスに転職する未来
今後起こり得るのは、記事で紹介したオルビスやコカコーラといった、大手企業における『動的なCRM』≒『ハイタッチなカスタマーサクセス』でしょう。SaaSにおけるカスタマーサクセス経験者が大手企業のカスタマーサクセス部門に転職するケースが発生する未来が来ると、私は予想しています。
もしこのような未来が来れば「カスタマーサクセス」の職種や施策としての定義や範囲、役割などが変わってくるでしょう。今後のカスタマーサクセスの進化に目が離せません。
おわりに
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