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「建築業界の当たり前を変えていく」 AROUND ARCHITECTURE 〔アラウンドアーキテクチャー〕 ・ 佐竹 雄太

OPEN MAGAZINE "Interview"では、「場づくり」に焦点をあてて、その領域を担う人物にインタビューを行うことで、未来へのヒントを探ります。

今回は、"建築のまわり" を専門領域とするクリエイティブカンパニー・AROUND ARCHITECTURE〔アラウンドアーキテクチャー〕。

AROUND ARCHITECTURE の活動拠点は、東京都・下赤塚の閑静な住宅街のなかにある、塔のようにそびえ立つ3階立ての建物。そこは住居でありつつ、1階は時よりワークスペースとして活用されており、一角はコーヒースタンドにもなっています。

また、ミニギャラリースペースも併設。真っ白な壁が採光を引き立て、訪れる人々を包み込む心地いい空間が広がっています。

本取材では、AROUND ARCHITECTURE 代表・佐竹さんに「紆余曲折あった」というご自身のキャリアについてや、建築業界で革新的な取り組みを進める「その訳」についてもお話しいただきました。

勝手な使命感に動かされて。

-- "ものづくり"の魅力に気づいた幼少期を経て、建築業界の道に進まれたそうですね。その後のキャリアについては「紆余曲折あった」とお聞きしましたが、、。

佐竹さん:そうなんです笑。建築の大学・大学院を卒業したあとは、独立するという夢を追いかけるためにアトリエ設計事務所に就職しました。
ですが、いざ働いてみるとなかなか多忙で。目の前の仕事にひたすら打ち込む一方で、なかなか将来が見えない現実に焦りも感じていました。

そもそも設計事務所を構えるためには、"一級建築士"の資格が必要なんです。若手は目の前の仕事で精一杯で、試験勉強に打ち込めない、なんて人も多くて。

-- なるほど。その状況下で佐竹さん自身はどのような選択を取られたのですか。

佐竹さん:まず、アトリエ事務所を辞めた後、すぐ次の会社に行くのではなく、時間的融通が効くフリーターという道を選んだんです。日中は試験勉強、夜はアルバイトをするという生活を1年間続けて、一級建築士の資格を無事取得しました。

--  "これから" を歩むための準備期間と言えますね。その後どのようにしてキャリアを築かれていったのでしょうか。

佐竹さん:独立するにはまだまだ経験不足だったので、住宅の設計を手掛ける会社へ再就職しました。そこでは着実に実績を積み重ねていったのですが、独立するという私の目標にはどこか縁遠い気がして。周りの建築家と差別化できるような自分の長所を見つけられずにいたんです。

それでベトナムに行って現地の設計事務所で働いてみたりもしたのですが、気候はもちろん、建築様式や工法などが日本と違って壁を感じ数ヶ月で帰国、、。なんてこともありました笑。前向きではありますが、挫折した気持ちで戻ってきたんです。
帰国後は不動産会社に転がり込みました。実はそこでの経験が今の僕のビジネスモデルの礎になっているんです。

-- なるほど。紆余曲折あった、というのはこの辺りのお話ですかね笑。その不動産株式会社ではどのような業務を担当されていたのでしょうか。

佐竹さん:建築家が家を建てる時に生じる不動産に関連する相談事に乗るのが主な仕事でした。土地やマンションなどの不動産探して、住宅ローンのマネジメントをしたり、地主さんに対して土地の有効活用の相談に乗ったりもしていました。

実は、建築や設計のことを理解した人が不動産の相談事に乗ることは滅多になくて。建築と不動産は近いようで実際はすごく離れているんですよ。なので、建築家と不動産会社がちゃんと協働できるように、両方の専門性を持ちつつ、それを一般の人に届ける橋渡し的な役割が必要だと思ったんです。

それに当時の僕は「建築家の役割の大事さが多くの一般の方に伝わっている」という実感を得られずにいました。それ以外にも建築業界には立ち向かうべき課題が沢山あるのに、、。少なくとも、このより多くの人に建築・建築家の事を伝えるという事は、このままだと誰もやらないかもしれないと思って、僕自身が立ち向こうことにしたんです。

-- 使命感で動いた結果、独立という目標に自然と辿りつかれた印象を受けました。AROUND ARCHITECTUREの具体的な事業内容について教えてください。

佐竹さん:僕らは建築の知識や専門性を持ちつつも、"建築の設計をしない"と言い切っている会社なんです。逆を言えば建築に関係してさえいれば「設計以外」は何でもチャレンジします。社会における建築のより良い在り方を模索しつつ、不動産探しから、仲介、不動産事業の企画・戦略のコンサルティングに加え、メディア運営やイベント企画、建築を題材にしたエンターテイメントコンテンツの制作など、建築領域で幅広く事業を展開しています

ふらっと来て、フラットな会話を。

-- 事業内容からも革新的な取り組みをなさっている印象ですが、なぜ自社でコーヒースタンドをやることに至ったのでしょうか。

佐竹さん:建築や不動産の事をより多くの人に知ってもらうためです。それに、この下赤塚という地域に開かれた場所を作りたかったんです。

建築や不動産は私たちの生活に密接に関わっているのに、気軽に話が出来る場が少ないですよね。建築に詳しい不動産会社が運営するコーヒースタンドであれば、ドリップを淹れている合間に建築・不動産の話がフラットにできたりするんです。僕らはそういった機会を増やしていきたくて。みなさんにも建築を身近に感じてもらいたい一心なんです。

-- なるほど。まさにコーヒースタンドを起点とした場づくりと言えますね。佐竹さんと言えば、 "建築ラップ" も代名詞ですよね。

佐竹さん:建築ラップ〔 活動名:カタチトナカミ 〕は、HIPHOP〔 ヒップホップ 〕という音楽を用いて、建築にまつわるトピックを歌い、動画サイトなどに投稿する取り組みです。より多くの人が建築に興味を持ってもらうための"取っ掛かりを増やす”試みになります。

はじめたきっかけですが、日本建築学会〔 建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達をはかることを目的とした学会 〕が130周年を迎えるタイミングで、若手建築家の作品を展示・発表する機会があったんです。そこに僕も参加したのですが、発表する実績がなかったので、代わりに建築ラップを披露したんですよ笑。

その甲斐あって、無名だった僕を多くの人に知ってもらうきっかけになりました。当時出会った同世代の建築家ともいまだに交流がありますし、一緒に仕事をしたりもしています。

-- なるほど。佐竹さんのターニングポイントと言える出来事かもしれませんね。次に下赤塚という地域についてのお話も聞かせてください。

地元のような安心感。

-- 下赤塚に拠点を構えるに至ったきっかけについて教えてください。

佐竹さん:僕自身は下赤塚に縁もゆかりもなくて。ですが、妻の地元がこっち方面なので、生活の場と仕事の拠点を近くに据えようと思って。仕事上、都心に出ることが多かったので、アクセス良好な点も下赤塚にする決め手の一つでした。

-- なるほど。下赤塚という地域にどのようなイメージをお持ちですか?

佐竹さん:下赤塚は赤塚一番街通り商店街を中心に、アットホームな飲食店や昔ながらの八百屋さんなど、落ち着きのある通好みなお店が多く集まっています。

また近隣には「光が丘公園」といった大きな公園もあります。幅広い年代の人々が集っていて、園内はいつも平和な空気で満たされています。

どんな方が訪れても懐かしく思える。下赤塚はまるで地元のような安心感を覚える地域だと思います。とても歩き甲斐もあるので、是非うちのコーヒーを片手に散策してみてほしいです。

-- どんな方が訪れても懐かしく思えるという表現がとてもしっくりきますね。"AA MAP" の取り組みについても気になりました。どういった経緯ではじめられたのでしょうか。

佐竹さん:AA MAP〔 = Able Architecuture MAP 〕は、東京にある "建築家設計の〇〇ができる建築" を集めた建築マップになります。このMAPがあれば、食べる、泊まる、鑑賞する、買い物するなど、建築視点で東京を巡り、楽しむことができるんです。

これも、建築をより身近に感じてもらうために、そして建築が私たちの生活に密接に関わっていることを知ってもらうために制作したものなんです。一般の方もより楽しめるようにイスナデザインという設計事務所にイラストを描いてもらいました。建築視点で街を巡れば、より建築の身近さを感じることができます。誰でも楽しめるMAPになっているので、まずは気軽に手に取って眺めてみてください。(現在、アラウンドアーキテクチャーが主催している「建築家との家づくり勉強会」の参加者のみへの配布)

建築業界の在り方を問う。

-- 最後に、今後の展望について教えてください。

佐竹さん:建築業界をもっと開いていければと思っています。建築家ってこうだよね、みたいな固定概念に囚われて閉ざしているだけでは、ただただ可能性を狭めるだけです。それはとても勿体ないことですし、なによりも悔しくて。

僕らは建築業界の在り方を問い続けながら、新しい取り組みにも積極的にチャレンジしていきます。前に出て立ち向かう。そんな僕らの姿勢を見て建築に興味を持ってくれたらとても嬉しいですね。


AROUND ARCHITECTURE〔アラウンドアーキテクチャー〕

「建築のまわり」を専門領域とするクリエイティブカンパニー。 不動産仲介・不動産コンサルティング・イベント企画運営・エンターテインメントなど、領域横断的に事業を展開している。

Address = 東京都板橋区赤塚二丁目2番18号大東総業ビル205
WEBInstagramカタチトナカミ


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