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「あそこに行けば何かある」 drip〔ドリップ〕・一ノ瀬 遼

OPEN MAGAZINE "Interview"では、「場づくり」に焦点をあてて、その領域を担う人物にインタビューを行うことで、未来へのヒントを探ります。

今回は、東京・池尻大橋の駅前商店街にあるカフェ・喫茶 drip〔ドリップ〕。店長の一ノ瀬さんは、ファッションやテレビCMに出演する現役のモデルであり、さらに料理人としても活動されています。様々な顔を持つ一ノ瀬さんですが、どのような経緯で今に至ったのか。今後の展望も含め、お伺いしました。

食の価値観が合うモデル仲間と開業

-- 突然ですが、モデルを目指したきっかけは何だったのでしょうか。

一ノ瀬さん:きっかけは、大学生の頃、美容師さんに声を掛けていただいたヘアーショーでした。結果的に全国大会まで進み、入賞することもできたんです。この時からモデルという職業を意識するようになりました。

当時、京都大学に通っていたのですが、就活に励む友人が多い中で、僕は迷わずモデルになると決めて、卒業を待たずして上京しました。

-- では、料理人として活動をはじめたのはいつ頃でしたか?

一ノ瀬さん:2019年頃ですかね。モデルの空き時間を使って「何かやりたいな」と考えていた時に思い立ったのが料理でした。母親が料理好きでおいしい料理を食べさせてくれていたので、いつか自分でも作ってみたいなと考えていました。

まず、自分の手料理をSNSに投稿する『のせごはん』という活動からスタートさせて、その後は知り合いが開催するイベントで料理を振る舞うようになりました。

-- 今までで1番印象深かったイベントはありますか?

一ノ瀬さん:以前所属していた事務所で、お世話になったクライアントや関係者を招いたパーティーがありました。そこで僕が出席者100人分の料理を作ることになったんです。慣れないことばかりでしたが、出席者の方々もすごく喜んでくれたのでとても嬉しかったですね。

そのパーティーにはWWDJAPANの編集長さんも参加されていて、少しお話する機会があったのですが、有難いことに『のせごはん』の活動も評価していただいて、料理の連載企画をやらないかとお声掛けいただきました。

-- チャンスはいつ訪れるか分からないですね。では、副店長の滝澤さんと出会われたきかっけや、drip開業に至った経緯についても教えていただきたいです。

一ノ瀬さん:滝澤とは共通の友人を介して知り合いました。彼女も食が大好きなので直ぐに意気投合して、共同でイベントを開催するまでになりました。

そもそもdripは飲食店のデザインやコンサルを行っているTRACTION〔トラクション〕という会社が運営していて、ここは事務所としても使われているんです。

開業前のこの場所でイベントを開催した時に TRACTION〔トラクション〕の代表が「一緒に面白いことやらない?」と声を掛けてくれて、drip開業に至った経緯があります。

-- なるほど。食に対しての価値観は様々だと思いますが、滝澤さんと共通する価値観はどういったものなのでしょうか。

一ノ瀬さん:僕たちは食事をする時間そのものを楽しみたいと思っています。味だけではなく、食事を共にする人や場所は自然と大切にしている気がします。

あとは、美味しいと思うものは自分たちで決めているところですかね。飲食業界はマーケティングも大事なのですが、売り方や見せ方だけに固執しているお店が増えているように思います。彼女も同じような考えを持っていて、互いに通ずる価値観があるからこそ、一緒に店舗運営をすることが出来ているんだと思います。

クラファンを通して伝えた「想い」

-- 開業するにあたってクラファンにも挑戦されていましたが、率直に挑戦してみていかがでしたか?

一ノ瀬さん:そうですね、もしクラファンに挑戦しようか迷われていたら、絶対に挑戦すべきだと思います。

当たり前かもしれませんが、自分がやりたいことは自分にしか分からなくて、それを周りに伝えない限り、応援なんてしてもらえないですよね。なので、クラファンを通してやりたいことの具体や、応援の仕方までをしっかり伝える必要があると思っています。

リアルな場所で起こる化学反応

-- dripにはどのようなお客さんが普段来られていますか?

一ノ瀬さん:自分の感性を大切にされている方が多いかもしれません。モデル、役者、ミュージシャン、アパレル、デザイナーなど、様々なアイデンティティを持った方が来てくれています。

過去にはお客さんとして来てくれた方が声を掛けてくれて、モデルのお仕事に繋がったこともあります。

-- 思いがけない出会いがあるのは実店舗ならではの良さかもしれませんね。では、リアルな場所を持つ「意義」について、一ノ瀬さんはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

一ノ瀬さん:僕は最終的にリアルが大事だと思っています。コロナ禍で辛い時期もありましたが、人が集うからこそ生まれる価値があると思うんですよね。

店長だと事務的な仕事も多く地味な一面もありますが、スタッフとお客さんが和気藹々としている姿や、イベントを楽しんでくれている様子を見るとなんだか嬉しくて、やり甲斐を感じられます。

-- 「場づくり」で何か心掛けていることはありますか?

一ノ瀬さん:「あそこに行けば何かある」みたいな雰囲気づくりは大事にしています。そういった雰囲気を感じ取ってくれた方が、ひとつの場所に集うからこそ、化学反応が起こって、新しいモノゴトが生まれると考えています。

実際に、dripで出会ったお客さん同士が一緒に仕事をするようになったり、イベントを開催してもらったりと「いつ何が起こるか分からない」そんな面白さがあります。

地域を楽しんでほしい

一ノ瀬さん:この地域は良い意味でカオスだと思っています。dripがある商店街を見ているだけでも、子どもからお年寄りはもちろん、若い世代でも幅広いカルチャーが行き交う面白い地域なんです。

-- 多様な人たちが集まる地域で、何か貢献していきたいと思っていることはありますか?

一ノ瀬さん:以前、近隣に店舗を構える古着屋EFKのオーナーさんが「dripは外から人を呼んでるよね」と言ってくれたことがあります。

池尻大橋の良さって実際に訪れないと分からないことが多いんですよね。魅力的なお店は多いのですが、SNSをやってるところが少ないんです。だからこそ、僕らはSNSを使って外から人を呼びたいと思っています。dripだけじゃなくて、池尻大橋という地域を楽しんでほしいです。

気取らず楽しめるお店を目指して

-- では、今年2年目を迎えられたdripですが、これからどんなお店にしていきたいと思っているのでしょうか。

一ノ瀬さん:そうですね、もっとカジュアルに愛されるお店にしたいですね。夜はバーとして一面もあるので、少し緊張されてしまう方もいるかもしれませんが、この空間を気ままに楽しんでほしいです。

その為には人を選ばず、より多くの人に楽しんでもらえるような場所を作る必要があると考えています。2年目はよりカジュアルなお店を目指して、お客さんと一緒にdripを盛り上げていければと思っています。

--最後に、一ノ瀬さんが今後挑戦していきたいと思っていることがあれば教えていただきたいです。

一ノ瀬さん:食をきっかけに色んな方々と出会って、面白いことをやり続けたいですね。その為には、まず自分からdripという場所を動かして、入口を常に整えておく必要があると考えています。

まだdripに来たことがない方も、気軽に足を運んでいただいてこの空間を味わっていただけたら嬉しいです。


drip 〔ドリップ〕

Open = 14:00〜20:00 〔土曜日 12:00〜20:00 /  日曜日 12:00〜21:00 〕
Regular holiday = 火曜日 / 水曜日
Address = 東京都目黒区東山3丁目14-2 東山共同ビル2階

Instagram
店長: 一ノ瀬 遼 さん / のせごはん
副店長 :滝澤 咲子 さん
Creative studio:TRACTION


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