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プロスペクト理論「損失回避の法則」と向き合う

人事関係を中心にビジネス書を読んで読書感想文を書き始めていますが、昔から読んでいる好きなテーマに「行動経済学」があります。
『経済は感情で動く』(マッテオ・モッテルリーニ=著 2008年)ぐらいから読むペースが上がってきた分野ですが、今回はその行動経済学のテーマの1つ「プロスペクト理論」の中の1つの法則と向き合う自分を書き留めておきたいと思います。


プロスペクト理論とは

1979年に心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが行動経済学として提唱されました。プロスペクト(prospect)とは、”見込み”や”展望”、”期待”といった意味ですが、理論として検索すると以下になります。

不確実性下における意思決定モデルの一つ。選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルである。

wikipediaより引用

要するに、何か考えを決定する時には、見込みや期待値を込めてしまうというものだと私は捉えています。プロスペクト理論自体もとても好きなテーマなのですが、そこは置いておいて、今回向き合いたいテーマがありますので掘り下げていきます。

🄫オプキャリ相談所

こちらのグラフが気になった方は検索してみてください。

「損失回避の法則」

プロスペクト理論の中に「損失回避の法則(心理)」というものがあります。プロスペクト理論は上述の未来への期待値の話なんのですが、その中で利益が確定している場面で表出してくる理論です。今回はこちらがメインテーマです。
ちなみにカーネマンさんたちの実験について簡単にご紹介します。次の選択肢のうち、あなたならどちらを選択しますか?

A:100万円を無条件に手に入れる
B:コインを投げて表なら200万円受け取れ、裏なら何も受け取らない

Bが50%の確率で200万円受け取れるので、期待値という意味では両者とも100万円となります。ほとんどの場合はAを選ぶそうです。ちなみに、200万円の借金があるという設定になると、感情の歪みからBを選ぶそうですので、あくまでも環境しだいという話ではありますが。(ざっくりとした説明で恐縮です。)
Bの可能性よりも確約したAの100万円を選ぶことがこちらにあたります。

Image: toranosuke/Shutterstock.com

この実験で、私が何を感じたかというと、言葉通り ”利益(確約)を持っている人は「損失を回避」する” ということです。受け取れる権利の喪失より、喪失のない100万円入手です。「手に入れる」より「損をする」ことを回避するのが人間であり、「価値関数」で表現されています。気になる方は「価値関数」もネット検索してみてください。

損失回避と正面から向き合う自己キャリア

では、アラフィフのわたしは「損失回避」の思考になりすぎて、実は損していないかと考えるようになりました。もう少し突っ込んで言うと、「損失回避思考によって自分のキャリアが”逆に”大切にできてないのかもしれない」というテーマと向き合うことにしてみました。

大卒入社から一社勤めで27年目。決して周りが羨むようなキャリアを重ねてきたわけではないですが、現在はそこそこ管理職として、経験豊かな人事職員として、相談しやすい先輩?として(思い込みかもしれませんが)、社内の歴史を知る古株として、、、積み重ねてきたものがあるのではないかと自認しています。

そんな私ですら、この27年の積み重ねが失われると考えると回避したくなる思考が発生します。これが損失回避の思考です。改めて考えると、居場所や存在意義が設定済みなのは心地よく、人として必要とすることは自然な考えだと思っているので、コントロールが難しいテーマだなと感じています。

ちなみに、わたしですらこのように考えるので、もっと豊かな経験を重ねてきた方々はもっと大きく損失回避の思考がのしかかってくるのでしょう。たぶん。

向き合ってみて

1)損失回避思考と市場価値(転職)

損失回避思考が一番ダイレクトに刺さったのがキャリアを考えるタイミングです。さすがに転職適齢期はとうに過ぎていると認識していますが、自分の価値を世の中と照らし合わせる作業が、年を重ねるごとに億劫になってきています。今のポジションや収入や労働環境の損失回避思考により、億劫になり、感度に歪みや停滞があることを感じました。
損失回避思考を受け入れながら自分を見つめなおせたことは、わたしの心をフラットにすることとなりました。これは、プロスペクト理論・損失回避思考と向き合えた大きな成果です。

2)言動が損失回避の制限を受けていないか

次に、本業での言動です。ほんとうに正しいと思ったこと、従業員のためになると思ったこと、心の底から思えたこと、を素直に言えているかどうかです。言ってしまうことにより、自分の価値損失とならないのか?躊躇している自分がいるのではないかと振り返りました。青臭いかもしれませんが、損失回避している(であろう)自分と出会えました。
会社員である自分は「わたしのキャリア」で見ると一部分であり、目の前の損失は大きく見えても人生では小さな出来事だと気持ちを整理できる機会となりました。

3)最後に

キャリアコンサルタントの仕事を始めて、「キャリア」についていろいろと学ぶ機会があり出会いにとても感謝しています。今回はその感謝の気持ちの1つを「損失回避の法則」として振り返ってみました。損失回避の思考に陥らずに意思を大切にしたいと感じています。


今回の振り返りは、「わたしの今までのキャリア」が損失したくないと感じられる「大切な価値」であることが認識できたことが一番かもしれません。

image:adobe stock

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