見出し画像

九谷焼・赤絵細描・米久和彦 作陶展の感想

石川県の伝統工芸、九谷焼細描(くたにやきさいびょう)の名匠、米久和彦(こめきゅうかずひこ)先生の作陶展を拝見してきました。

九谷焼とは、陶器や磁器に石川県の九谷で上絵付けをした物で、豪放華麗な絵柄が特徴です。

その中でも、赤絵細描(あかえさいびょう)という、赤絵具と極細の筆で精緻な細密画を描く、超絶技巧を引き継いでおられるのが、米久先生です。

赤絵細描の系譜を受け継ぐ作家は数少なく、また、一つの作品を作り上げるのに、何か月も何年もかかります。

今回の展示は写真撮影と、作品に触れることはできませんでしたが、直に間近で赤絵細描の作品を見られることは、とても貴重な機会でした。

展示場に拡大鏡が置いてあり、老眼でなくても見辛いほど細かな絵を、じっくりと見ることができました。

また、絵付け実演やトークショーも行われており、高名な作家さんの仕事ぶりをその場で体感し、多くのことを吸収することができました。

画像1

赤絵細描の一本の線は、1ミリよりも細いそうです。

その線を、壺や皿の表面を埋め尽くすように刻んでいき、鳳凰、龍、鶴、牡丹などの、縁起の良い吉祥文様を描き出します。

また、赤絵の中に金箔を張り付けて、さらに豪華絢爛な外見に仕上げます。

鮮やかな赤絵具、金箔、吉祥文様が織り成す、実に優雅で煌びやかな作品です。

外見の派手さとは裏腹に、描き方は非常に繊細、緻密で、根気がいります。

絵付け実演を間近で見ることができましたが、普通の蛍光灯の明かりで、肉眼で一本一本線を引いていらっしゃいました。

米久先生は、肉眼で、自分の手で線を引くことに、こだわりを持っていらっしゃいます。

拡大鏡で作業すると、多少のズレが出てしまいます。

なので、老眼になるギリギリまで肉眼で作業するつもりだそうです。

また、人の手で描いた微妙なムラが、温かみや柔らかい雰囲気を醸し出しているとおっしゃっていました。

線の長さや間隔はとても正確で、連続する模様も均等に描かれています。

しかし機械がつけるような模様とは違って、微妙な揺らぎや手描き感があり、主張が強い外見の中にも柔らかさを感じさせます。

米久先生ご自身も、パッと見は上品で近づきがたい感じがしましたが、話し始めてみると、穏やかで驕らない方でした。

実演作業しながらも、周りで見学している人たちの質問に受け答えしており、すごい集中力でした。

私は、作業しているときに音楽を流すことがあるのか、と質問しました。

前は音楽を流していたらしいですが、だんだんと無音の方がやりやすくなってきたそうです。

無の境地ってやつでしょうか。

画像2

米久先生は元々は油絵を描いていたそうです。

その頃から、単色で作品を作ることにこだわりを持っていらっしゃったそうです。

単色で絵を描くときは、余白とのバランスを考えることも大切になります。

先生は、残りの余白を意識しつつ、描いている線ではなく、その先を見て作業しているそうです。

4手5手先を見て描くとおっしゃっていましたが、聞いただけではどういう感覚なのか分かりませんね。

その辺が才能なのかもしれません。

また、陶器の下など、置くと見えなくなる部分もちゃんと描いているそうです。

それは購入した人だけが見られる特別な部分ですね。

大まかな制作工程は、先生が図面を描き、焼き物自体は別のプロの方に発注し、それに先生が絵を描くという分業らしいです。

画像3

絵には、細かく描き込んだり、ずっと連続させると良く見えるという特徴があります。

超絶技巧はできなくても、根気よく描き込むことは参考にしたいです。

画像4

あとついでにペルシャ絨毯とか見てきました。

これも何か月も何年も繰り返し作業を続けてできる作品ですね。

画像5

画像6

画像7

円形、正方形、巨大絨毯はレアだそうです。

画像8

シルクかウールで作るらしいです。

シルクの糸は柔らかくてサラサラで気持ちいい。

おわり

少しでもサポートしていただけるととっても助かります!