ダンダの屁【胆沢の民話⑳】岩手/民俗
『ダンダの屁』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
昔、長者様があったずもな。盗人除けに刀使いだの、槍使いだの、棒使いだの雇い入れだど。
ある時、刀も槍も棒も何も持たない人が来て、おれぁ絶対に盗人入れない術を持ってるから使ってけろ、と言ったと。
何の術だと聞くと、屁たれて盗人入れないようにするのだという。
長者様はとにかく今夜まぶって(守って)見ろって、戸の口さ、まぶりと(守り人)に立たせた。
その人は戸の口さ、まぶりとに立ったども、すぐにゴロッと横になって、寝入ってしまった。
そだども、その人は寝入ってでも大っきな屁たるんだど。
ダダッと放して、しばらくしてダダッと、とっても大っきな屁だど。
その晩も盗人が来て、戸の口から入るべとしたら、誰だっ、と大声でさかばれ、入るの止めて、しばらく経ってまた入るべとしたら、ダンダッと呼ばれる。
何度も入るべとすとも、ダンダ、ダンダとさかばれる。
何だかおかしいと思って、戸の隙間っこから、まがって(覗いて)見たれば、寝てて屁たってのだから、何だれぁ、と思ったが気になって仕事できないからと、軒下さ吊るされた干し大根持ってきて、シボ穴(尻穴)さねじかって仕事始めた。
なんだかんだ盗って、まとめて背負うべとした時、かってた(ねじ込んでいた)ネジが抜けて、ダダダダダダッと、なんだもないあじゃらな(大きな)音がしたので、盗人は何も持たねで逃げでしまったど。
長者様は知らないふりして見ていたが、その人を盗人除けに雇い入れたとさ。ドンドハライ。