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【感想とか】ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

私のお気に入りの本

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー。」

これは、ここ数年で出会った本の中で、私が最も気に入っている本のタイトルだ。

今日は、この本の感想とか、本の中のお気に入りにのフレーズを残しておこうと思う。

この本はこんな本です

この本の主人公は、イングランドに住む、とある地域の中学生。
小説ではなく、作者の息子さんのリアルな中学校生活の最初の1年半が綴られている。
中学校生活の様子と、それを通して交わされる母である作者とその息子さんのやりとりや、起こる出来事に向き合う様子から目が離せなくなるのだ。

この本では、中学生の息子さんが出会った人種差別、性的少数者、いじめ、貧困など現代の社会の在り様が描かれている。

彼の視点は、とてもクリアでまっすぐに思えた。
そんな彼の視点にハッとさせられたり、胸が苦しくなったり、感心したり、大きな感情の起伏はないけれど、文章から、彼らの言葉から、確実に私の心の目が離せなくなる。

どうしてこの本に惹かれるのか

なぜ、彼らの言葉が私を惹きつけるのか、時々この本を読み返さずにはいられなくなるのか、ふと考えることがある。
それはきっと、舞台は遠く離れたイングランドの地であるけれど、そこにも、そして私が暮らすこの場所でも同じことが存在すると想像できるからかもしれない。
確かに社会構造は少し違うかもしれないけれど、この本に出てくることは本の世界の向こうの誰かのことではなく、確かに私のことでもあるし、私の周りのことでもあるし、自分事なのだろう。
それが、この本を手放せない理由かもしれない。

印象に残っているフレーズを挙げていきます

一人一人はいい子なのに、みんな別人みたいになって、どこまで行くんだろうって胸がどきどきした

p51

自分たちが正しいと集団で思い込むと、人間はクレイジーになるからね

p51

「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」

p60

分断とは、そのどれか一つを他者の身にまとわせ、自分のほうが上にいるのだと思えるアイデンティティを選んで身にまとうときに起こるものなのかもしれない

P65

つまり、シンパシーのほうはかわいそうな立場の人や問題を抱えた人、自分と似たような意見を持っている人々に対して人間が抱く感情のことだから、自分で努力をしなくとも自然に出てくる。だが、エンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだとは思えない立場の人々が何を考えているのだろうと想像する力のことだ。シンパシーは感情的状態、エンパシーは知的作業とも言えるかもしれない。

p75

僕は、人間は人をいじめるのが好きなんじゃないと思う。……罰するのが好きなんだ

p196

反撃したら、するだけ傷つく。反撃して傷ついて、またそれで相手を憎んで反撃して傷ついて、また憎んで反撃して、で、それで終わりはどこにあるの?

p204

けれども人の中にある意識や感情というものは、あの茂みのようにいっぺんに刈ってしまえるものではない。
「表出する」ということと「存在する」ということはまた別物なのだから。

p211

どこかに属している人は、属していない人の子とをいじめたりする。それは悪い部分だよね。でも、その反面、属している仲間のことを特別に守ったりするでしょ。生徒会長が僕にやさしくしてくれるみたいに。でも、僕はどこかに属している気持ちになれないから、それがどちらもないんだ。悪い部分も、いい部分も、ない

p220

自分の子どもともこんな風に語り合えるか

こんな風に、うちの子が中学生になった頃、共に会話を交わせるだろうか。
ここまで、感情と思考のバランスの取れた言葉で伝えたいことを伝え合えるだろうか。
子ども自身も、こんなに自分の言葉を持てるようになるのだろうか。

そのために今、必要なことは何だろう?
言葉を使うこと、言葉を選ぶこと、言葉を表に出すことを怖がらずに伝えていくしかない。
そして何より、私自身が世の中に対する考えを常にブラッシュアップさせて、整理していくことなのかなとも思う。

感情と思考のバランスのとれた人になりたい

どうしてこの本が気に入っているのか、この記事を書きながらもまた考えていた。
先にも書いたけれど、きっと感情と思考のバランスがうまく表現されている本だからかもしれない。
そして、感情が大事にされているのはもちろんだけど、目を逸らしたくなることでも避けてはいけないことから逃げない理性、そしてまたそこから生まれる感情がうまく結びついているような気がする。
きっと、私もそういう人になりたいのだ。

この本を読んだ方がいれば

ぜひ、この本を読んだ方はお気に入りのフレーズ、場面を教えてください。
そして、いっしょにお話ができたらうれしいなと思います。

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