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算数と国語の関連性 【中学入試最前線2】渋谷教育学園幕張中学校(千葉県)について 

こちらは下記、記事の続きです。


国語ができると、なぜ算数ができるようになるのか

 算数(数学)は、基本的に思考力(定義と論理)が重視される教科です。
 そのため、数字や図形を扱う前提として、「点とは何か」「線とは何か」というように、言語的定義から始める必要があります。そして、その定義を理解するために、国語力が重要なのです。

 図形の基本となる点や線を定義すると、どうなるでしょう。
 点とは何か。「点とは、長さも幅もないものであるが必ず存在するもの」です。
 線とは何か。「長さは存在しても幅は存在しないもの」となり、点と線とでは、定義上、明らかに異なる概念であることがわかります。
 数学は、このように緻密な概念の積み重ねから成り立っている学問です。
 線といっても「曲線」と「直線」に分かれ、その直線も、端の点で区切られる「線分」や「半直線」など、概念が異なる定義が次々に登場します。

 算数を教えていて、成績が伸びない生徒は、ほぼ100%、この定義を理解していないか、無視している場合が多いです。
 嘘のような話ですが、「正三角形」と「正方形」の区別すらつきません。
 そんな生徒に「この三角形の名前は何ていうの?」と質問しても、平気で「正方形」と答えてきます。その生徒にとっては、「正」とつけば、三角形も四角形も皆同じになってしまうからです。

 同様に「正六角形」と「六角形」も区別ができません。
 渋谷幕張中学をはじめ、各私立中学が好んで出す問題として、立方体の切断面が正六角形になることを問うものがあります。入試問題によっては、正六角形と書かせる場合もあるくらいです。
 その問題を、定義がしっかり理解できていない生徒に解かせると、必ずと言ってよいほど「六角形」と答えます。正解は「正六角形」であると説明しても、そもそも図形の多様性が認識できていないため、この違いが理解できないのです。
 「六角形」は、内角の和が720度の図形すべてです。角度がバラバラな歪んだ図形であったとしても六角形であることに変わりがないため、それこそバリエーションは無限にあります。
 それに比べ、「正六角形」は、一つの内角が120度の図形と決まっているため、定義上、一種類しか存在しません。
 実際の図形を見れば、一目瞭然とも思える、この違いが理解できない小学生が、実はたくさん存在しています。

 どこの塾でも、三角形や四角形について、基本的定義に触れてはいますが、時間的な制約もあり、徹底できていないように思います。
 特に、図形の「直角」部分に対して、注意をするように指導することが不足していると感じます。
 算数の図形問題ができない生徒は、直角を無視する傾向が多いです。直角のある三角形として、「直角二等辺三角形」と「30度と60度の直角三角形」を区別して認識できないのです。
 これでは、中学生の時に学習する「ピタゴラスの定理」や、高校で出てくる「三角関数」も理解することは困難であることは明確でしょう。

図形に対する感性を養うベストタイミングは?

 図形に対する感性は、子供のうち、特に小学四年生のうちに鍛えておくとよいでしょう。経験上、六年生になって慌ててやったのでは、手遅れになる場合が多いように感じます。

 今まで指導してきた経験から、「図形の理解力」と「論説文の読解力」は、正比例の関係にあると言えます。図形のできる生徒は、論説文の理解ができますし、論説文を得意とする生徒は、図形も得意です。このように四年生くらいになってくると、各教科ごとの理解力に相関関係がはっきりと表れてきます。

 渋谷教育学園幕張中学校(渋谷幕張中学)合格の秘訣は、ずばり「図形」と「論説文」です。この二つを四年生から鍛えるようにすれば、かなり合格する確率を上げることができるでしょう。

 現在も定理の名前として残るピタゴラスは、数学者であると同時に、宗教者であり哲学者でもありました。古代ギリシアでは、数学と哲学はイコールだったのです。数学と哲学が不即不離の関係にあることは、なにも古代ギリシャだけに限ったことではありません。現代でも、バートランドラッセルやウィトゲンシュタインなどの哲学者が、数学出身であることは有名です。
 前回もお話したように、国語に比重を置く渋谷幕張中学の入試において、図形の出題率が高いのは、「数学と哲学は同源である」ということを教えるためではないかと考えています。
 そのような意味からも、算数を理解するためには、「まず国語から」なのです。


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