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中学受験の社会は暗記科目ではない

社会を教えていると「扇状地」と「三角州」の区別がつかない子供がいます。扇状地も三角州、三角州も三角州なのです。三角形に見える地形は全て三角州なのです。

なぜこのような事態が起きるのか、原因はいくつかあります。

まず第一は社会は暗記科目であるとする、大人のまちがった通念、第二に形状について似て非なるものと注意して教えない点、第三に、自然科学的な構造性を教えない点です。

地理を教える時に科学的な差異化を認識させることでかなり、間違った記憶は防げます。

扇状地は山間部から平野部、特に山の斜面だと教えないといけません。山間部の山の斜面にできた、扇型の地形で小石や砂でできているため、みかんなどの柑橘類の栽培に適しています。

柑橘類は水はけのよい斜面で砂や小石の多いところでないと育ちません。斜面に水が流れると、細かい砂は流されて、小石や砂利が露出します。斜面ですから日当たり良好です。そのためおいしいオレンジやレモンができるのです。

一方、三角州は海沿いです。海の河口付近にできます。理科ではデルタ地帯といいます。ギリシャ語のデルタが三角形だからです。

デルタ地帯は渡り鳥の巣がよく作られるところです。ガマやヨシなどなどの草もはえていることが多く、干潟がそばになって生態系が豊かでエサにも困りません。草地に巣を作れば、タカやワシなどの天敵から隠れる場所になるのです。

昔、NHKのテレビで見たドナウ川のデルタ地帯の映像はすごかったです。何千羽ものモモイロペリカンの営巣地帯になっていたのですから。

デルタ地帯と三角州が同じであると言えばオレンジやレモンの生える扇状地と混同するはずもありません。

理科の先生も社会の先生も「デルタ地帯」と「三角州」は同じだと言って、今のような差異化を常日頃から心がけていれば子供達は三角形に見えるものを何でもかんでも三角州と答えるはずもないのです。これは教える側の問題でもあります。

今の塾はカリキュラムの消化に追われて、ゆっくりと説明する時間もありません。また親の側でも、てっとり早くすぐ点数を上げる方法を求めたがります。

教材もコンパクトで薄く全部載ってるものでないと売れません。用語は1行で解説され、さくっとわかることばかり求められる世の中です。

社会もコンパクトな用語集で暗記テストばかりやらされます。考えて理解するよりも反射神経で反応することばかり求められるのです。

当然、子供の認識は表面的、皮相的なものとなり、正しい理解と識別を問われる問題になると総崩れで点数を落とすのです。これは子供だけに責任をぶつけるのも酷です。

社会を暗記科目にすると成績が悪くなります。暗記だけで社会が通用するほど今の中学受験は甘くありません。

正確な理解と、なぜそうなるのかという科学的因果関係の説明が論述問題で要求されるのです。社会の先生が論述問題のできない子供を国語力のせいにしてはいけないと思うのです。

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