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中学入試、環境問題の価値観は人間中心主義ではない


東京大学の文系の現代国語の問題では、100字から120字の論旨要約問題が出されています。

最近の例では近代社会は能力主義の名のもとに格差が確定化し自由、平等とは有名無実化してしまった、という内容のものが出題されていました(2020年度)

私立中学でも100字程度の要約問題を必ず出題する学校はいくつかありますが、首都圏では江戸川取手中学がその代表です。この学校は医学部進学の教育目標を掲げており、東京の江戸川女子校も姉妹校として同じ教育理念でいるようです。

医学部はどこの大学でも600字から1000字の小論文の問題を出題しているので小学生のうちから要約問題を練習しておく事は理にかなっていると言えるでしょう。

一例を挙げますと、平成16年の問題では松井孝典著「宇宙人としての生き方」(岩波新書)から、地球環境の「汚染の本質」を要約させる問題が出題されていました。

地球システムにおいて、20世紀になって過去に例のない大変革が起きた、それは人間圏の異常な拡大である。人間の生存圏、生活圏が異常なほどふくれあがった、それは人間圏に異常なほどに物質とエネルギーの流入量が増大したことによるのだ

物質科学のレベルで考えるならば、この人間圏の異常な拡大が地球温暖化を招き、地球環境システムを破壊していると言えるのです。

20世紀の石炭から石油へのエネルギー革命がまさにそれに当たります。

石油、石炭だけではなく、コンクリートの原料である石灰石や砂、砂利、あるいはガラスの原料となる二酸化ケイ素類や電気の銅線となる鋼やアルミの流入量も都市圏を中心として増大していると言えるでしょう。

ところが人間は「汚染」の問題を善悪の倫理問題にすり替え、「地球に優しい」と言う人間中心主義のスローガンで「汚染の本質」を見誤っていると言うのです。

「汚染の本質」とは、地球システムにおける物質世界の構成要素の大きな変化、偏りの問題であり、人間圏に物質が非常に集中したことによるものだ、とするのです。ここには、科学のリアリズムに徹する冷静な合理主義があります。

「地球に優しい」と言う人間のご都合主義では、地球環境問題の根本的解決は不可能だということです。

人間が自分の生活圏に物質とエネルギーを集中し、豊かで快適な文明生活を満喫しているようでは、「地球に優しい」はずもありません。

同じような価値観は、最近の若き環境活動家、グレタさんも持っていると思われます。
経済の永遠の発展というおとぎ話はやめてくれと言った根底には人間中心主義のぬくぬくとした文明の安楽椅子に座る大人に対して怜悧な刃物を突きつける鋭さがあります。

中学入試は、このような価値観を学ぶ良いチャンスです。今、この地球で何が起きているのか。まずは知ることが大事なのです。

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