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#25-1 大岡山の外のまちでは…?(岐阜市編)〜美殿町ラボでのまちづくり実践〜

こんにちは✨
これから2回にわたり、大岡山を飛び出した出張編をお届けします!

今年3月、岐阜市の柳ヶ瀬商店街を訪問しました。
東工大は商店街と隣接しているという特性上、商店街でのまちづくりから学ぶことは多いのではないかと考え訪問を決めました。

第一回は、「美殿町ラボでのまちづくり実践」と題して、実際にまちづくりに関わっていらっしゃる方へのヒアリングから、今後の活動につながるエッセンスを紐解きます。

1. 柳ヶ瀬商店街とリノベーションまちづくり

出典:岐阜市リノベーションまちづくりガイドブック

柳ヶ瀬は岐阜市街を東西に横断するアーケード商店街です。中部地方有数の繁華街として栄えてきましたが、高齢化した商店主の引退と後継者不足により空き店舗が増加。シャッター街と呼ばれてしまうほど活気が失われていました。

この状況をなんとかしないといけないと、『やながせ倉庫』の開設から変化のきっかけが芽生え始めます。2014年に『サンデービルヂングマーケット』が初開催され柳ヶ瀬のリノベーションまちづくりが本格化。現在ではこだわりを持ったオーナーが開くお店や施設が増えてきており、新たな魅力を持った場所へと生まれ変わりつつあります。

2. 美殿町ラボ

柳ヶ瀬商店街のお隣の美殿町(みとのまち)商店街内にある拠点スペース『美殿町ラボ』にお邪魔しました!

20年も使われいてなかったというアパートの一室を改修した空間には、たくさんの本が並びつつ昔の名残が残されており、妙な落ち着きのある場所となっていました😌

美殿町ラボを運営していらっしゃる出村嘉史先生(岐阜大学 社会システム経営学環,工学部社会基盤工学科 教授、柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社 顧問)にお話を伺うことができました。

3. 出村先生のまちづくり活動

伺ったお話を、インタビュー形式でまとめました✍️
出村先生のお話はグレー部分となります。

3-1 オープンした2016年から現在までの流れ

美殿町ラボはオープンしてからどのように利用してきたのでしょうか?

美殿町商店街では元々『おとなの学校』が開かれており、余裕のある大人のコミュニティができていました。そこに参加したことがきっかけで、2016年から場所を借りることになりました。
当初は研究室のゼミの場とすること、町の人とプロジェクトを行うこと、商店街の困りごと解決、などを目標としていました。オープニングパーティーはかなり賑わいました。
しかし、岐阜大とまちが離れてしまっていること、それに加え学生が忙しいことからゼミ以外では学生参加の機会を作ることは難しかったです。

私たち東工大生がまちの中にあるのはとても恵まれているのですね...

2年目からは補助が減っていき、ラボの家賃捻出に悩みます。そこで、まちでコトを起こす起業塾『mitonobase』をマネタイズすることで、場所を維持するしくみを構築できました。
その頃になると行政もリノベーションに注目するようになり、岐阜市にリノベーションスクールが誘致され、私も参画しました。

起業塾はご飯を食べながら学生のアイデアを大人たちとざっくばらんに話す場だったそう。とても楽しそう…✨

コロナ禍に入ると起業塾は開催できなくなってしまいます。その際には私のオンライン講義の場として用いたり、建築事務所のシェアオフィスとして利用してもらったりしました。

使い方を定めることはせず、柔軟に変えてこられたのですね!

3-2 美殿町ラボで活動してみてわかったこと

では、これまでの使い方の変化から得られた学びはどのようなものがあるのでしょうか?

初めのうちは研究室や商店街の人たちとの交流が中心でしたが、途中から懇談会の場所だったりコラボレーション、場所貸しなどだんだん多様に展開していきました。
その中でわかってきた大切なことは、
偶発性を許容する余裕を持つこと
コラボレーション
隠れ家的会合のできる、半プライベートのような空間であること
です。

それを実現するために意識したことはあったのでしょうか?

全く異なるコミュニティの人を連れてきて出会わせ、カオスを作ろうと目論んできました。
ほとんどのコミュニティは閉じている(システム空間)のですが、ここでは安心できる属するコミュニティを飛び出し、自分自身と他者という関係でコミュニケーションを取る(システミック空間)ことを目指しています。

なるほど!
色々な人が交流する空間を意図的に作ることでコラボレーションが生まれるのですね🤔

3-3 計画から外れることを楽しむ

偶発性を計画することはできるのでしょうか?

偶発性が生まれる余裕を持つことはできます。用途は決めすぎずに、関わりしろをどう開くかが大事だと思います。
美殿町ラボの場合、サテライト研究室という曖昧な存在が、裾野を広げた活動を可能にしている面があります。

不安定だからこそ、この場所がなんのためにあるのかずっと話し続けることも大切です。

思いがけないことが起きるよう期待しているのがいいのかもしれないですね。

面白いことが生まれている建築でも、余白が残されていることが多いです。
まちづくりにおいては人を信じること、計画から外れた時に生まれる面白さを許容し生かしていけるかが大事だと思っています。

建築を学んでいると余白を残すことの大切さはよく言われます。まちづくりでは思ってもみなかった面白さがカギとなるのですね😶

3-4 イベントを行う意味

イベントを行う際に意識していることはありますか?

イベントなどで出会った人とどうつながり続けていくかが大切です。人のつながりは消えるものだから、努力しないと失われてしまいます。
つながりをメンテナンスするという点においてイベントは有効です。

私たちは今後のイベントを計画中です。
イベントを企画し実施していく上でどのような目標を持つとよいのでしょうか?

まず第一に、一過性の賑わいと活力は違うと理解することです。賑わいが何かを生み出すものにならないと意味がありません。
イベントを一過性の賑わいで終わらせないためには、イベントの成功が賑わいではなくコミュニティや何かが新しく構築されることだと考えましょう。
予期していた成功ではなく、偶発的な出会いや出来事などの思わぬアウトプットを大切にしてみましょう。

賑わったら成功、と思ってしまいがちですがそうではないのですね😓
イベントの際には常に意識していきたい!

3-5 学生主体で行っていること

私たちは学生主体で活動している団体ですが、この場所で学生主体で行っている活動にはどのようなものがありますか?

場所貸し、合同ゼミなどを行っていた他大学研究室とのコラボレーションで、美殿町商店街の夏祭りにワークショップを出店していました。「マイルーム」と題して子供たちに自分の部屋を模型で作ってもらうもので、ちゃんと収入を得ていました。
それを原資に行った、名前などを彫ってもらったレンガでピザを焼くワークショップは、集客がうまくいかず大失敗してしまいました(笑)。集客の難しさを知るいい経験となったことでしょう。

ワークショップで作られたマイルーム

本棚の上にはかわいい模型が!これは子ども達は熱中しちゃいますね🥰
大胆に失敗できるのも学生のうちの特権かもしれません。

よく言われていることですが、ノルマを課すと目が死んでしまいます。
美殿町ラボは、常に誰かしら大人がいるという状態ですが、学生は好きに入って使えます。主と客がある程度決まっている方が上手く回るのかもしれません。
ただ、「べからず」のルールを作って管理することは好ましくないです。

確かに、私たちも主体性が失われてしまっては活動がしづらくなってしまうかもしれません😑
今後のプロジェクト運営でも管理ばかりにならないよう気をつけていきたいものです。

4. 今後の活動に何を活かすのか

出村先生へのヒアリングを振り返ってみると、今後の活動の指針になるようなお言葉をいただけたように感じます。

まず、大岡山のまちでのこれからの出会いと同時に、これまでの出会いも大切にしていかなくてはいけないなと思いました。
東工大生にまちに飛び出してもらうために、私たちもまちに飛び出して関わりを作っていきます!
これまでおおお知るまちプロジェクトに関わっていただいた皆さま、今後ともよろしくお願いします🙇‍♂️

また、私たちが東工大と大岡山をつなぐ存在であるためには、私たちが裾野を開いていなくてはいけないことを学びました。
特に、イベントでは計画していなかった出来事も面白さに変えて行けたらいいなと思います☺️

5. おわりに

長編レポートとなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
ひとつの拠点があるだけでこんなにも多様に交流や活動が広がっていくのだ、と驚かされてばかりでとても興味深かったです😳

次回は、実際に柳ヶ瀬のまちに飛び出したまち歩き編をお届けします。
お楽しみに!

【お礼】ヒアリングにご協力いただいた出村先生、ありがとうございました。

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