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小菊セレッソの前半戦までの挑戦と苦悩~サポーター目線で読み解く~

J1リーグも折り返しです。7勝8分4敗の7位で前半戦を折り返したセレッソですが、ここまで私が感じた小菊セレッソの戦い方を振り返りたいと思います。


驚きを与えた第1節

第1節、去年の終盤戦に感じた閉塞感は何処へと思わせるほどのサッカーを展開しました。結果は引き分けですが、サポーターは今シーズンのセレッソに大きな期待を寄せました。

ファーストディフェンスの攻略法

去年はサイド攻撃がメインでした。監督のコメントの中でも中央からどのように攻撃していくかを練習する必要がある等のコメントが残されていました。それを踏まえて、キャップからどのように中央経由で崩していくかをメインで取り組んだのでしょう。

開幕戦の相手、FC東京は困惑していた印象です。最終ラインを3枚残し、登里をアンカーの田中の横に配置しました。FC東京は4-4-2ブロックを組んでいましたが、前線2枚の守備を無力化。

サイドハーフが最終ラインにアタックし、中央へのパスコースを消せば、登里が外に広がり外経由に変更する形を取り、最終ラインのビルドアップはGK含めて6人で完結させる形を仕込んでいました。
最終ラインから中盤へのパスコースを複数個、提供することでファーストディフェンスの攻略法が第1節から私たちに見せてくれました。

ボールを触りに来ないということ

ボールを持っているのは1人ですが、サッカーは11人全員でどのようにボールを運ぶのか、更には相手があってのスポーツです。そのため、攻撃時は各々がどこにポジションを取るのかが大きく関わっていきます。

第1節で見せた動きの1つにIHが降りてこないという点が印象に残りました。
ビルドアップ時に自陣の深い位置に多くの人員を割くと、そこに対して相手も圧力がかけやすい形になります。別に低い位置で守備ブロックを構える戦術を取っていれば話は別です。自分たちの後ろに攻撃の選手の枚数が少ないのであれば、前から圧力をかけてボールを取りに行く形を取っても、後ろは枚数が揃っているため蹴られても問題なしと捉えることができるので、多くのチームは圧力をかけに行くでしょう。

前から圧力をかければスキップパスでIHやWGへ

開幕戦の相手、FC東京はこうしたギャップを何度も突かれてしまい、4-4-2ブロックの状態で試合を進めていくしかない状態でした。

中盤の田中・登里にボールが入ると、ファーストディフェンスを剥がした上に複数のパスコースを与えた状態でプレーをすることも出来ました。

ロングボールは逃げじゃない

ロングボールは逃げという認識を持っている人も多少はいるでしょう。
セレッソはロングボールの蹴りどころと立ち位置も考えられていました。

先ほど、上記であげたスキップパス以外にもIHが高い位置にいることの重要性があります。ロングボールを蹴る位置は2箇所はです。SB裏かレオへ。レオは競る際に勝つ可能性があるSBの方へ流れて競り合います。SBへロングボールを蹴る際にもレオは同サイドへ流れ、更に高い位置にいるIHも回収役へ加わることができます。

こうして蹴る=逃げではないということも仕込んでいました。

押し込めば前線のパワーを活かす

今シーズンからルーカスが札幌から加入し、更なる前線のパワーアップが図られました。

左サイドは登里が内側に入っており、インナーラップ・オーバーラップまでの距離が遠いため、アイソレーションがメインでした。
後ろで左SBと左CBが後方支援+カウンター対策要員として待機しました。


対して、右サイドはアイソレーションもあるがSBの毎熊の攻撃力も活かしたい意図もあり、IHの選手と共にインナーラップする場面が多々ありました。

前線からの守備構築は継続

監督・コーチ陣ともに、前線からの守備組織の構築は就任当時から高い水準だと考えます。

毎試合、相手のポイントを押さえ、基本的には前線5枚を中心にボールを奪うというよりかは、各チームの危険な箇所を抑える形を取ります。パスコースを限定させ、田中で刈り取るorハイラインを設定しているDF+GKに跳ね返してもらう形を取りました。

第1節で感じた一抹の不安

第1節では2失点したものの選手・スタッフ・サポーターまでも手ごたえを感じたことでしょう。しかしながら、私はこの攻撃が封じられる要因があるなと感じていました。

WGへのパス供給

当時、第1節のマッチレビューを書く際に試合を見返しました。WGへのパスコースが長いのは意図的なのか?と感じていました。

https://note.com/ooo_waa/n/nedf402c0ee69#57dcfd3f-2eac-4095-ba39-f4f349fbe39d

詳しくは、私の第1節マッチレビューを見ていただければと思います。
攻撃時の形から、最終ラインからWGへ一気にパスを付ける必要がありました。しかしながら、WGの選手の立ち位置が高く、パスを出してもカットorゴールに対して背や横を向ける状態でのパスを受けるのではないかと感じました。また、出し手側もスピードがあるボールを出す必要があります。結果的に開幕戦の多くは、舩木→カピシャーバへのパスの多くが裏へ出すことが多かったです。タッチラインもしくは、キーパーキャッチが多く、有効打のようには見えませんでした。

考えられる可能性

では、WGが相手のSBをピン留めすることでその手前のスペースを使うという作成かと思いきや、スタメンだったIHの香川・奥埜はそのスペースに流れ込むことはほぼなく、そのまま試合が進んでいきました。

結果的には中央のケアが試合終了まで出来なかったFC東京に救われる形で中央突破→サイドという流れで試合を進めることは出来ました。

そびえ立つ壁

セレッソの攻撃対策はほとんどチームが共通していました。

ウォールマリアが目の前に

どのチームもセレッソには大きな壁を構築して対抗しました。
※ウォールマリアとは進撃の巨人で出てくる大きな壁のことです。

中央経由からの展開を抑えたいチームの多くはセレッソの自陣で組み立てる5人に対して、守備も5枚で嵌めてくることが増えました。
IHより前と最終ライン+中盤の選手を分断させることが主な目的です。田中+登里のパスコースは前線3枚が背中で消し、仮にパスが通った場合でも後ろには追撃部隊が待ち構えているので、簡単に前を向くことが出来ませんでした。

回避するには

桜の発射台

サポーターの中にも記憶に残っている人が多いでしょう。配置の特性上、両WGは大きく幅を取り、逆サイドにボールがあってもタッチライン上にいます。
右サイドのWGに対して、左CBの舩木が対角へロングボールを展開します。
こうして、詰まった中央を経由せず一気に打開する形でプレス回避を行いました。

ピン留めの前

上記で両WGが意図的かは不明だが、高い位置を取ることで相手のSBをピン留めしている利点を活かします。

左右のIHでそれぞれ役割が異なるので主にこれをやっていたのは左サイドで、香川がメインでした。香川不在時は奥埜、ルヴァンカップでは北野も実施していました。ただ、同試合の中で2、3回ほどだったので、アドリブか(香川以外は真似をしたのか)戦術的なのかは不明のままです。
しかしながら、一気に相手の前線5枚を剥がすこの立ち位置は有効になりました。

攻撃と守備は繋がっている

更なる問題が徐々に発生しました。

カウンター対策

セレッソは序盤戦からボールを持つ時間が増えました。しかしながら、各チームはセレッソへの対策としてカウンター攻撃を仕込んでいました。

基本的にはCB+内側に入っているSB+アンカーの5枚で中央を固める形で最短距離のカウンターは埋める対策をセレッソは施していました。しかし、ボールをロスト後、前線の守備をしていたFWが大外の大きく空いたスペースに走りこんでボールを受けるシーンが増え、そのままピンチに直結する場面が多くありました。


更には右SBが攻撃で内側を取るシーンが多いため、何度も両SBが空けたスペースを使われました。
数試合、同じような流れでピンチを迎えましたが、セレッソはSBが全速力で戻るか、CBがサイドに流れて対応する形を取っていましたが、町田戦など実際に失点することもありました。

攻撃選手投入による守備崩壊

小菊さんは去年から負けている場面で守備的・バランスの選手に変えて、攻撃的な選手を投入します。ここで起きてしまうのが、ゾーンディフェンスとカウンター対策の崩壊です。

田中・奥埜を起用している場合は、お互い中盤での守備の振る舞い方を知っているので、ゾーンディフェンスはなかなか崩壊しません。また、左サイドが為田であれば、上記のようなシーンが起きても中央の広大なスペースを埋めてくれます。
監督のコメントで「柴山・北野は中盤の守備も理解してくれた」という内容を残しています。しかしながら、負けている場面ではボールを取らないといけない点からゾーンディフェンスが崩壊していきます。
そもそもゾーンディフェンスとは簡単に言うと、決められたエリアを守りながら、別の選手がエリアから外れた場合、近い選手がカバーをするということです。チャレンジ&カバーこそがゾーンディフェンスであるといっても過言ではないです。

カウンター対策も攻撃の選手を多く投入すれば脆くなります。

点を取るために、前に選手が多くいるため最終ラインはCBのみ、もしくはSBが1枚がプラスで残っているかどうかなので、最終ラインの労力は計り知れないです。神戸戦の4失点目やルヴァンカップ町田戦の3失点目のような失点パターンになります。

ゴールを取るために、前の選手を投入する意図は伝わりますが、結果的に守備が脆くなることもあります。
失点理由を最終ラインやGKが関わっているように見えますが、尻拭いをしていたという事実が存在しています。

2年前は投入選手が活躍したはず

では、2年前のセレッソはなぜ、途中交代の選手が活躍できたのか
理由は1つです。形を崩さず、攻撃と守備を行えていたからです。4-4-2の守備強度をそのまま落とさず、適正ポジションに適正選手を起用し、攻撃時も4-4-2の形が崩れないままゴールに迫ることが出来たからです。
シンプルなサッカーでありながら、選手・監督の目線が一致した状態で攻守を行えていたということが理由です。

両翼の離脱と停滞感

大阪ダービーでは毎熊・登里と序盤戦の中心人物だった2人を一気に怪我で欠くような展開になりました。

桜の発射台の無効化

セレッソは序盤戦、舩木が右サイドへロングボールを飛ばすのを1つの武器として活用していました。しかしながら、それらも相手に対策されつつあります。

両IHとも裏抜けする回数が0ではありませんが、あまり多くありません。理由として考えられるのは、「ロングボールは逃げじゃない」に戻って見てください。ロングボール回収というタスクがある分、IHが裏抜けをして最終ラインを壊すタスクが二の次になっているように感じました。
裏抜けが少ないと分析しているのか、左サイドにボールがある場合でも、右SBは内への絞りが甘く、発射台ケアをしているようでした。徐々に舩木の逆サイドへのパスが減ってきた要因がこれにあたると考えます。

どこまでもついてくる相手

最終ラインを迎え撃つ壁、ウォールマリアの対策としてIHがWGの前に現れてボールを受ける動きを香川中心で行い、ボールの新たな出口として機能していました。

しかし、その出口ですら相手のDFが食いついてくるようになりました。食いついてきた後の元のスペースを使えばよいのではとなるのですが、サイドに食いついて来ることで疑似的な4-4-2ブロックになるので、なかなかスペースが見つからず、前進が難しい試合が増えました。

柴山を起用してみるが

IHまでにボールを供給することがなかなか出来なくなったセレッソは町田戦で柴山をIHとして起用しました。理由としては、狭いところでもボールを受けることが出来る、柴山を起用することでFW陣と後ろの選手とを繋ぐ役割を期待したのでしょう。
しかしながら、結果は惨敗。柴山は空いているスペースを有効活用してはいましたが、それ以上に守備の強度やリスク管理の部分に大きな問題を抱えていたように見えました。

舵を切ったアビスパ福岡戦

セレッソが大きく舵を切った試合はアウェーアビスパ福岡戦です。5月に入り、勝利が無かったセレッソはビルドアップとカウンター対策にテコ入れを行いました。

ビルドアップの基準点変更

この試合以降の中心人物は奥埜とSBです。今までのセレッソは最終ラインを3枚にして、どちらかのSBが内側に入ってIHの選手は各々WGの立ち位置に近い箇所に立ち、ビルドアップの形を作っていました。

純粋に幅を取ったセレッソのSBに食いついてくる選手が福岡のWBなら裏、シャドーなら中のスペースにボールを運ぶことで前進を図りました。
アビスパ側からしたら、アンカー田中に対しては中盤の前or松岡が見る形で、中央に入ってくるSBはシャドーで消しながら、セレッソの最終ライン3枚とアビスパの前線3枚のミラーゲームで対応しようしたかったのでしょう。
蓋を開けてみると、セレッソはSBは幅を広く取り、中盤には田中・奥埜と6枚に対して、アビスパは前線3枚+中盤2枚で数的不利の状況でした。

SBへボールが渡ればシャドーの選手がプレスに行くが、ザヘディの連動がそこまでないので、ザヘディ周辺にいる選手が基本的にフリーになり、セレッソはビルドアップのやり直しが何度も出来ました。
外が開けば外へ、外をケアしだすと内へとどこが空いているのか的確にセレッソは突いていきました。セレッソの後ろの枚数が多いということで、アビスパはWBの選手がSBまでボールが来そうなタイミングでプレスに行きますが、今節のセレッソはそこをエサにしてWBの裏へパスを出し、終始セレッソペースで展開していきました。

カウンター対策○

特に狙われていたのが内側絞ったSBの裏へ対してロングボールを送る形でした。

仮に中盤で奪われていたとしても、中盤には奥埜と田中がフィルター役として、更にSB可変によって狙われていた、裏のスペースもSB+CBで対応しやすい人数と配置によってカウンターを防いでいました。これも奥埜効果でしょう。
人数を多く割くことで、今シーズン取り組んでいるハイラインも継続した状態で攻撃を行うことが出来ました。

守備もソリッドな4-4-2へ

小菊監督は相手のビルドアップに合わせた守備配置をすることが得意な監督です。しかしながら、この試合のブエノの役割はアビスパの最終ラインプレス+中盤の選手に対してのパスコースを背中で消す役割でした。
今までの形では田中の相方の一角として守備時のタスクが割り振られるパターンもありました。今節は田中・奥埜でセットとし、危険ゾーンは防ぐ。言わば、ブエノの切り替えや守備の戻りを考慮せずとも、予め組み合わせを決めておくことで、守備のギャップを端から最低限に抑えておく狙いだったかもしれません。

後半戦に向けて

6月22日に行われた19節ジュビロ磐田戦で前半戦が終了しました。ここから先、セレッソが上位を目指すにあたって私が感じた現在のセレッソについて最後書かせていただきます。

奥埜を微調整

浦和戦では、奥埜の攻撃時のポジションを微調整しました。
ビルドアップは少し下がり目ではあったが、センターラインを越えるとゴール前まで顔を出す位置まで上がるようになりました。カウンター対策は6枚から5枚に変更し、中央の枚数を1枚減らしてリスク管理を行いました。
少しづつですが、個々の選手の役割を変えているように見えます。

ビルドアップが詰まった時

どんなチームでも後ろから運ぶ際にビルドアップやプレス回避が上手くいかない瞬間があります。セレッソはその時にロングボールを蹴るポイントして相手のSB裏かレオを目掛けて蹴ります。

大前提、ロングボールは逃げじゃないです。詳しくは、「ロングボールは逃げじゃない」を再度確認してください。
※一部抜粋
セレッソはロングボールの蹴りどころと立ち位置も考えられていました。

上記と比べて、最終ライン+中盤2枚がビルドアップに参加しているため、前半戦の序盤から見せていたロングボールの回収役が1人減った状態になってしまいました。後ろの安定化を図った弊害ではありますが、どちらか取るのか、それともどちらも取るのかは気になるところです。

中央の裏抜けの少なさ

セレッソは中央にいる選手の裏抜けが少ないです。

裏抜けが少ない分、相手は体の向きをボール方向に向け、目線が揃った状態でセレッソの攻撃を待ち構えることが出来ます。

他のチームの裏の使い方を見てみましょう。
まずは、サンフレッチェ広島です。サンフレッチェは3-4-2-1の形を保持したまま前進を図ります。

最終ライン3枚に同人数でプレスが来た場合、大外の高い位置開いているWBにパスを出すか、WBにSBが食いついてきた場合はその裏へ飛ばしてシャドーの選手などが裏抜けをし、一気に打開します。手前に来るなら奥へという相手のDFを逆手に取って攻撃をします。

次はヴィッセル神戸です。ヴィッセルはCBとSBの裏へFWが走り抜けます。

FWがDFを奥に引っ張ってできた。手前のスペースをIHの選手がポジションを取り、ボールを受けます。大前提、試合開始からFWが何度も裏抜けをし、そこへボールを提供しているので、DFからすると裏抜けが無視できない状況となり、最終ラインと中盤がFWを見なければならない状態を作り出しています。そうして出来た手前のスペースをIHの選手が取ることで下のパスでの前進方法を確立しています。
奥を見せておいて手前を上手く利用している例です。

両チーム共通しているのが、手前・奥の関係性です。DFラインを破壊するのがどのタイミングかが異なる以外は同じです。如何でDFの目線を外すか、小菊さんが発言している、DFラインの破壊はどのように今後行っていくのかが、楽しみです。

後半戦のキーマン

私が思う、後半戦のキーマンは上門と奥埜です。
上門は、攻撃時の最終ライン破壊の裏抜けがセレッソの中で1番上手いと思います。また、守備の時もパスコースを消しながら前に出てくることができ、サイドに追いやった選手へのプレスも相手の死角からプレスにいきます。守備のタイプはカンテに近いなという印象です。
奥埜は、何年も前から欠かせない選手です。現在のセレッソで奥埜に課されているタスクは一番多いと思います。奥埜のタスクを同等のプレー強度とプレースタイルを保てる選手はセレッソの中では香川・平野・田中という認識です。ベテランに差し掛かる年齢でもあるので、試合に出続けれることが難しい場合もあるので、誰がその役割を果たすのか、それとも奥埜が最後まで走り抜けてくれるのかを注目したいです。

まとめ

まだまだ、上を目指せるチームだと思います。上昇気流に乗るべく、まずは後半戦の初戦である鳥栖戦をなんとか勝ってほしいです。私もゴール裏で微力ですが、応援します。

後半戦のセレッソが素晴らしい形になるように心から願っております。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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