見出し画像

糸×宝石 わたしの製作秘話

キラキラしたものが好き

キラキラしたものが好きだ。
特に、遊色があるものがいい。シャボン玉を吹いた時に不意に見える紫や緑や黄色……様々な色がせめぎあいゆらゆら揺れている、あの不思議なゆらめきに心惹かれてしまう。
オパールだとか、曜変天目茶碗だとか、そういったキラキラ具合が特に好ましい。

地学好きとまではいかないが、宝石や鉱物が好きで父方の曽祖父が集めていた瑪瑙の原石を譲り受け、飽きることなく眺めていた。
赤と薄い朱鷺色のグラデーションが重なり合い触るとつるりとして冷たく、机の引き出しに大事にしまっていた。

宝石なんてバイトもできない小中学生の身分では手に届くはずもなく、猿とカモシカが闊歩する田舎にはミネラルマルシェもない。
父と行ったガチンコの鉱物採集くらいしか、本物を手に入れる機会はなく、図書館で借りてきた鉱物、宝石図鑑を眺めてはため息をつく日々だった。

花屋時代とリンクする糸と宝石の花

時は流れ短大生になり、花屋でバイトするようになった。
店の隣は上等な宝石店で、美魔女すぎるお姉様方が長い爪によく似合うギラギラのダイヤモンドを指にはめ、高額なお買い物があるとうちに花束を依頼に走ってきた。

貴女も自分でバリバリ稼いで買いなさいな。石はいいわよ〜。裏切らないし、元気が出る!
と、どデカいエメラルドの指輪と何カラットあるか分からない1粒ダイヤを首元に輝かせて小娘の私にケースを見に来るよう勧めてくれた日が懐かしい。

そりゃぁもうガラスケースの中の人達は綺麗だった。カットもさることながら、石留の美しさも素晴らしく、それに比例してゼロが増えていく。


デュモルチェライトと花手毬の耳飾り

私もいつかこんなに宝石を身につける日が来るのか?
私にはなんだか美々しくて、見つめることしか出来ず、手が出せなかった美しいものたち。
この時点では身分不相応だ……という思いが強かったが、その後の好きをつきつめていく過程で、あれ、私って鉱物としての側面が垣間見える標本チックな石とか、素朴で可愛いドロップカットのほうが好きなのでは???という結論にたどり着いていく。

私が作品に使用する天然石のカットにドロップカットやさざれ石が多いのはそういった理由が大いにある。

大人になったらどうせ身につけるなら本物がいい。だから作品に使用するキラキラは宝石を研磨したビーズにしよう!
気負いなく普段使いできる本物の可愛い。そしてフォーマルすぎない。8年目に突入する作家活動の中でようやく地固めが終わった気がしている。

この世界には素晴らしく美しい石が沢山あって、どれもこれもに物語を感じるから本当に困ってしまう。石と糸と、私の中の物語があなたの可愛いに刺さったら嬉しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?