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合コン編、Kさんの場合 後編

彼のキスは優しくて心地よかったのを覚えている。

ただ、手際を見ていると6年彼女がいなかっただけでなく経験も少ない様子で、本番になるとうまくすることができず途中で断念することになった。

横になりゴロゴロしていると、数年前好きだった人にいい感じのところで振られてしまった話を聞かせてくれた。

「みんな気づいたら俺の周りからいなくなる」

そう言いながら少し泣かれた。

口先で慰める事はできるけど、そんな話をされたところで私にはどうすることもできない。
好意のある人に話すことではないと思った。ホテルに来てることもあり、この人は私と恋愛をする気はないとやっと気づき始めた。

・・・

その日から案の定彼からの連絡頻度は落ちた。

焦った私はなんとか繋ぎ止めたくて必死になった。もちろん裏目に出たと思うけど。どちらにせよもう遅かった。

合コンに参加していた女性側の幹事が彼と昔からの知り合いだというので、彼について聞いてみると、デートする女の子は絶えないのになぜか彼女を作らないのだと教えてくれた。

「デートするだけの女の子」のうちの1人に、私もなってしまっていたんだと悲しみに暮れた。

・・・

その後なんとかもう一度デートをしたけれど、この日の彼はまるで今までとは別人のようだった。
待ち合わせから冷たく会話も適当、帰りもさっさと帰りたがった。

こんなにもわかりやすく?と思うほど私への気持ちがないことを示している。

「正直今日会うの面倒くさかった?」と聞いてみると、「面倒なら断ってる」と彼は言った。

これだけ態度で示されているのに、まだほんの少し期待を持ちそうになる。

「今後もしまた会う約束をしたとして、関係が進展する可能性はあるのかな」

自分がだるい女になっているのは承知の上だったが、焦りと不安に耐えきれずつい口走る。

「わからない」

彼が一言、答える。
そう言うしかないのだろうけど、それ以上言葉が聞けないということはそれまでということなのだろう。もうこの気持ちに終止符を打ちたくなった。

「Kさんのこと好きだった。ホテルもKさんとなら行ってもいいと思えた」

そう伝えるが、彼は「わからない」の一点張りだった。
もちろんそれ以上の言葉はない。

何を言ってもわからないとしか言わない。なんでもかんでもわからないという言葉の影に隠れようとする姿に少し嫌気が差した。

帰り道、駅まで送ると言われたが謎の優しさが辛かった。

・・・

帰宅してから、答えづらい質問をしたことを謝罪してもう一度気持ちを伝えて終わりにするつもりだった。

「ありがとう。でも自分はわからない」

と、彼から相変わらずの返事が届く。
「わからない」ってなんなの。と思った。

彼の性格なのだろうか。時間はかかっていたけれど、私が返信すれば必ず律儀に返してくれる。気持ちがないならいっそのこと無視してしまえばいいのに。

宙ぶらりんとなった気持ちは行き場がなくなり、しばらく生きた心地がしなかった。

彼の気持ちを推測したが、自分が相手を傷つけたという格好にしたくないとか、とりあえず繋ぎ止めておきたいとか、そういうことしか考えることができない。

だらだらとやりとりをしていても何も変わらない。意を決めてこちらから連絡を断った。自分から断っておきながら毎日泣いた。

・・・

数ヶ月経ってもさりげなく心の片隅に彼がいたので、一度だけ他愛もない連絡をしてみたがやはり相変わらずだった。

私から連絡をするのはもう金輪際やめようと思った。なんだかとても惨めに思えたからだった。

その後、別の人とお付き合いをすることになった私は、友人経由でそのことを彼の耳に入れてもらうことで改めて彼への気持ちをリセットできた。

結局この時お付き合いした人もワケありでうまくいかなかったのだけれど、この人のおかげでKさんを忘れることができたのは確かだった。
恋の傷は恋でしか埋められないと身をもって感じた。そして、穴埋めの恋愛という悪いループにハマることになるのだけど…。

・・・

自分のことを好きだった人が別の人と付き合ったと知ると、どんな形であれ繋ぎ止めたくなるものだろうか。

冷たかったKさんから後日お誘いがあり、2度ほど遊びに行ってみたが、以前のような気持ちを持つことはなかった。なんとなくまたホテルを狙われている気がして余計に冷めた。

たまに友人経由でKさんの近況を聞くが、相変わらず一定数の女の子と遊んでいるらしい。もしかすると以前好きだった子にふられたトラウマから、多くの女の子と遊ぶことで承認欲求を満たしているのかもしれない。

彼は結婚願望が強いタイプだったので、いつか幸せにはなってもらいたいけど、それは私が幸せになってからであって欲しいと思ってる。

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