隣人トラブル③

ストーカーのラインをブロックしてから半年間、平穏な生活を送ることができていた。しかし、冬の寒い日の深夜、それは起こった。

深夜の3時頃、何やら物音がして目が冷めると、ベッドの横で僕を見下ろすように人が立っていた。どこから出たのか分からない今まで出した事のない声が出た。恐怖心で体が動かない。

お化けを見てしまったとはじめは思っていたが、顔を見るとストーカーだと分かり、更に恐怖が増していった。すると、ストーカーは無言で僕に抱きついてきた。

抱きつかれながら、ストーカーの気持ちを逆撫でる事がないような、僕が生き残る方法を頭の中で必死に考えた。結果、ストーカーは僕にドッキリをしようとしていた、という事に無理やり持っていくことにした。

「なんだ、隣に住んでる人でしたか。びっくりしちゃいましたよー」

と、なるべく明るめの声で言ったつもりだったが、声が震えすぎてなんとか聴き取ることができるくらいのか細い声になってしまった。まだ、ストーカーは無言で僕に抱きついている。声を出したことで、なんとなく体に力が入るようになった為、相手の肩を掴んで僕の体から離した。

「勘弁してくださいよ」

と、その時できる最大限の笑顔を作って、肩を掴みながら玄関まで連れて行った。僕の方が力が強いためすんなりと玄関まで連れていけた。

夜も遅いので帰ってくださいと言うと、以外と素直に帰ってくれた。ただ、帰り際に

「そういえば鍵空いてたよ」

と、とても冷静な顔で言われた。あの表情はまだ頭に焼き付いている。

扉が閉まった途端、僕は腰が砕けて立てなくなった。3時間くらいその場でうずくまり、ずっと震えていた。

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