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大井屋が漆塗りにおける有機溶剤と手を切ったきっかけの話

こんにちわ。静岡の山奥で民芸屋やっております大井川めんぱ大井屋の前田です。どもども

最近大井屋は井川メンパの塗り直し修理の作業をやっております。年々依頼が増えてついに今回は150組をいっぺんに修理することになり、もういくらやっても終わらない量となっております。半分ボランティアの仕事なのでこればっかりやってるとちょっとやばいんですが、まあご先祖のおかげで今の商売やらせてもらえてるわけですから真摯に向き合うわけですねえ。


丸型3Sと
ティースプーンのお食い初めセット

実は大井屋今までの井川メンパから飛び出していろんなサイズ感のめんぱを作っていたのですが、ここ一年くらい劇的に忙しくなってしまい全くもってこういうお子様向けなど作る余裕がなくなっております。早くいつものいろんな商品を作れるスケジュールに戻して行かねばと日々焦ってはおります。

そんな制作スケジュールを圧迫し始めた修理事業。これだけの市井に出回っているメンパを修理するにしてもそのうち大井屋のメンパだけになってしまう日が来るかもしれません。そういう意味でもめんぱ職人の育成は急務なのです。石関さん期待されてますよ、ファイト!!

井川メンパなどの塗り直し作業をやっていて気づいたことがある


井川メンパだけではなくて、いろんな産地の曲げわっぱも漆塗り直し作業を行う大井屋。そんな仕事の中から気づいた事実があるのです。どういうことか?


前々から大井屋の漆にはシンナーなどの有機溶剤を混ぜていませんよ!と喧伝しておりますが、いまいちこの意味がお客様に伝わっていないということがずっと続いております。

実は漆塗りにはシンナーなどの有機溶剤を添加して塗るということはそもそも漆器業界のスタンダードだということをまず理解して欲しい

自分も井川めんぱの修行時代を通じて最初から漆には有機溶剤、つまりテレピンシンナーを混合させて作業をするという風に習ってきました。これは何もめんぱ屋に限らず、漆塗り教室でもスタンダードに教えられる常識といってもいい事実になっていたのです。


そう、何を隠そう漆器業界全体がもうだいぶ前から漆にはシンナー混ぜるもんやということになっているのです。そこを前田というか大井屋は覆したいと思っており、今回は前田がまずなぜその事実に気づきアクションをどのタイミングで行ってきたのか?をお伝えしておこうと思います。


そもそもめんぱの師匠もそうですし、漆塗り教室の先生もそうですし、ほとんどの漆教則本にも漆にはシンナー混ぜましょう!と胸張って指導されてます。ちょっと考えてみてください。シンナーが存在しない時代から漆塗りってあったわけですけど、その当時どうやってぬってたの?なんでそのやり方やめて今はシンナー混ぜてんの?ということに大体すぐみんな気づくものだと思っていたのですが、そうでもないようなのでこのあたりを前田が調べてこりゃダメだ〜となって色々試行錯誤し始めたのが何を隠そうもう5年以上前です。


一番最初に気づいたきっかけは?

自分でも薄々食器にシンナー混ぜて塗って大丈夫なんかな?という思いは昔からありました。実は私の実家が自動車塗装業をやっており10年以上前ですが1年ほど家業を手伝っていたことがあります。ですので有機溶剤の人体への影響というのは一通り理解していたので、そういう危うい事実に気づいたというか気づく前提の要素があったように思います。

諸々の疑問を先達にぶつけてみても、揮発するんだから大丈夫とかうるしのメーカーが危険性は無いと言っているとか、そういう曖昧な事実誤認の上に現在の漆器業界があるというのを理解するに至ったそのきっかけ。


それはまさにめんぱの漆塗り直し作業をやっている時だったのです。


大井屋として独立して1年ほど経った時です。めんぱの塗り直し作業をやっておりました。何十組とあるメンパを管理するには管理札が必要です。油性マジックで木札に名前とか番号を書き込んだ札で管理するのですが、メンパに入れていた木札が時々字が滲んでしまい危うく誰のものか?わからなくなる時があったのです。


作業をする中で木札が滲むものはメンパに入れた状態でそのメンパを暖かい場所に放置した場合だということに気づきました。


どういうことかというと、メンパを水研ぎしたりした後に早く乾かそうと思い日向にしばらくおいておいたわけです。すると数日後メンパを開けると木札の油性マジックが滲んでいる。つまり、何かしらのメンパ内に揮発してきた成分で油性マジックが溶ける。という現象が起きたということなのです。


漆に混ぜたシンナーは常温では揮発するも、その中に含まれている成分には揮発点の違いで高温になった場合に始めて揮発してくるものがある!

諸々を調べていくうちにそういう事実に気づいたわけです。


うるしの食器に漆塗りする時は有機溶剤は混ぜちゃダメ!


とてもシンプルな答えが前田の中で出ました。それが5年前。そこから下塗りから全てにおいて有機溶剤と手を切りました。漆塗りには食器以外のジャンルもあります。外装や家具や仏壇などに塗るには溶剤は可としても良いと思います。しかし、食器に関しては絶対NGだろと思うわけはここにあるのです。そして今回は話をすっ飛ばしますが、うるしの神秘の力はこの保温力の中から醸し出されるタンパク質の分解酵素反応にある!と大井屋は気付いておりそれを引き出す際に毎回シンナーくさくては元も子もないわけですということなんです



本当に安全で美味しいご飯が食べたいですよね?

メンパをご利用いただく皆様に問いたいのは、値段が安い井川メンパが欲しいとか見栄えが良いものが欲しいという以前に大事にして欲しいことがあります。美味しく安全に飯を楽しむことそのものです。


あれから5年。口酸っぱく言い続けました。そして変化はおきました。


現在井川メンパも大井川めんぱも漆塗りにおいて一才の有機溶剤は混ぜておりません。静岡の皆さんの食の安全と喜びを底支えする造りになりました

大井川めんぱ憲章より


これは誇りにすべき事実なのです。漆器業界のスタンダードを緩やかに戻すその一歩を踏んだと信じています。まずはその一歩として井川メンパのスタンダードを更新するに至ったわけです。



皆さんに何度でもお伝えしたい。


本当にご飯が美味しくなる神秘の力をもった大井川めんぱを大井屋はこれからもクリエイトしていきます。何が真実で何を皆さんは求めるべきか?値段を追いかけ、情報を追いかけ、真実は追いかけないでは意味がないじゃ無いでしょうか?目をカッと開いて覗き込んでみてくださいよ


そういうことをこれからも大井屋は世に問い続けたいと思っております。そしてそれを自らが実践し、世の中を緩やかに導く。ここを読んでいる皆さんがその一助になりさえすれば未来1000年に漆塗りのまげワッパは残るだろうと思うのです。それこそが私達が #未来に残したい風景  な訳です

そこへのご協力ぜひ賜りたいものでございます。つまりめんぱ飯が好きで、その文化を子や孫にも感じさせたいと思うあなたはわたし達大井屋の仲間だ!仲良くしましょうね!

よろしくどうぞ

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