小沼枝里子

小沼枝里子

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  • たあいもないはなし。

    あたしに色んな事を教えてくれた大切な人と作っていたリレー小説。 やり取りしていたのは2014年頃。 出来上がっているところまで公開してみようと思い立ちました。 どの部分があたしで、どの部分が彼かわかるかな(笑)

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エピソード6「たいせつな」

その日も、またいつかの日と同じように、僕の前には彼の姿があった。 特に何て事のない話をしながら、ギターの弦をつまびいて遊ぶ。 「練習」なんて名目はあるものの、正直大した事なんて一つもしていない。 開けた窓からやわらかく差し込む陽射しと風と、ギターの音。 それだけでいいや、と思う。 向かい側の彼は、その視線を手元に落として、指を懸命に動かしている。 まぁ、大抵は10分くらいで飽きて、煙草を吸ってのらりくらりして、それに飽きたらまた始める、って感じだけども。 楽しいんだか楽しく

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    • エピソード5「寝息とカラス」

      俺は誰も信じない。 誰にも信じて欲しくないから。 神様なんて尚の事でえらい上の方から見定められるのなんかまっぴらだ。 どっか行けよ。切実に。 昼間、神様について聞かれたせいで寝付きが悪い。 珍しく俺も哲学的な波にやられていた。 まぁ、負ける気しないけど。 窓を開けて煙草に火をつける。 吐き出したはずの煙はすぐに部屋に舞い込み部屋中に広がった。 「悪いものに好かれるのか俺は」 少し可笑しくて、すぐくだらなく思えて窓を閉めようと手を伸ばした窓枠の先、一番近い電信柱のてっ

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      • エピソード4「月色時間」

        「またね」って言葉は、あんまり使った事が無い。 と言うよりも使う相手が本当に限られていた。 ただ、彼女があんまりにも自然に「またね」って言うもんだから。 今考えてみたら、携帯番号を交換するでも無し(まぁ持ってなかったからどっちにしろ無理だったけど)、名前すらも聞かず、「またね」なんていっそ馬鹿げた話でもあったんだけど。 何故だか。 疑いとか違和感なんてものは無くて。 あれから数日経った僕の体はあの公園にあって。 目の前には正に。 彼女が居た。 あの時と違うのは、空に浮かぶ

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        • エピソード3「少女と誰かと探し物」

          少女は視線を外さなかった。 見なくてもわかった。 瞳が焼き付いたから。 言い訳も思いつかないくらいの距離。 猫が静寂を裂く事もなく 耳鳴り。 わずかに聞こえた首輪の鈴の音。 足は止まったまま。 夜は嫌いかも。呼吸の乱れもバレやすい。 急にかっこ悪くなって 「こんばんわ」 って言ってしまった。 間違ってない唯一の言葉を出したつもりだが、 少女に自分が場違いだって事実を悟られない事を願った。 「こんばんわ」 少女の声。 耳鳴りとほぼ同じボリュームだけど確かに聞こえた。

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        エピソード6「たいせつな」

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        • たあいもないはなし。
          7本

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          エピソード2「言葉と主観と音」

          僕の両目と両耳は 一切の機能を失っていた。 ────ような感覚に襲われた。 そう言った方が正しい。 でも、暗くなってから起きた時はいつもそうだ。 開けた瞳は暗闇に慣れず、耳も寝ぼけるのか音にあまりいい反応をしてくれない。 寝た状態のまま何度か瞬きをしてみると、だんだん目が暗さに慣れてきて、天井の輪郭がうすぼんやりと見えてきた。 聴覚もやっと働く気になったのか、家の少し先にある道路を走る車の音を捉えた。 「………………」 目に見えるこの景色だけが、耳に届くこの音だけが、肌

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          エピソード2「言葉と主観と音」

          エピソード1「ひとりぼっちのかみさま」

          正午。 彼の携帯が鳴った。 「………おっと。やれやれ。また徴収だぜ」 言い方から察するに、おそらく会社だろう。 時々、休みの日でもこんな風に連絡がくる事があって、急遽休日出勤を余儀なくされる時がある。 実にお疲れ様だ。 「大変だね」 「ま、繁忙期だし仕方ねぇな」 電話を終えて、ギターをケースにしまい始めた彼に声をかける。 「稼げる時に稼ぐさ」 言って屈託なく笑う顔を、時々眩しいと思う。 多分、僕には出来ないから。 何か悔しいから言わないけど。 「あーぁ、また大して練習できな

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          エピソード1「ひとりぼっちのかみさま」

          プロローグ「始まりの人」

          眠らない人なんていないでしょ? だから当たり前過ぎてみんな気付かないだけでさ 君は昨日と今日は繋がってると思う? そう。昨日と今日。 だって君だって昨日寝たでしょ? 一度途切れてるじゃない? ………「今」が。 僕が言ってる事わかるよね? さぁ。ならもう一度聞くよ? 昨日の君と今の君は同じ君だって証明できますか? プロローグ「始まりの人」 「はぁ?お前何言ってんの?」 ………そんなに素っ頓狂な声を出さないでもいいではないか。 まぁ、素っ頓狂な事を言ってんのは

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          プロローグ「始まりの人」

          技芸祭、今回何となくこんなイメージ。 小沼→スサノオ 尚子しゃん→ツクヨミ 弥衣さん→アマテラス でもって、小沼が歌う「恵みの雨」の時は、 風→hirocoちゃん 火→泉さん 水→真帆ちゃん 土→小沼 な、イメージです。

          技芸祭、今回何となくこんなイメージ。 小沼→スサノオ 尚子しゃん→ツクヨミ 弥衣さん→アマテラス でもって、小沼が歌う「恵みの雨」の時は、 風→hirocoちゃん 火→泉さん 水→真帆ちゃん 土→小沼 な、イメージです。

          あたしには何も出来ない。

          5/27の技芸祭の、第一回目のリハをして参りました。 何かもう、感無量。。(笑) 振り入れを見ながら、自分が描いた世界が形になっていく事が、何かもう良くわかんないくらい幸せでした。 多分あたし、仕切るのはあんまり向いてない。と、思う。 どちらかと言えば使われる方が得意な人間だし、創りたいものは浮かんできても、自分が率先して動いて行くのは、普段まるで使わない部分をたくさん使う感じがします。 自分ひとりだけが動くなら、今までずっとやってきたけど。 今回は、自分も入れて

          あたしには何も出来ない。

          あじさい技芸祭・出演者紹介⑤

          トリは勿論この方。 柚楽弥衣(ゆらやよい)さん。 (写真は今宮神社に一緒に行ってくれた前川裕子ちゃん撮影) 初めてお会いしたのは、件の鴻神社で歌った日の夜。 ……あ、こう書くと何かすごいな、縁だな(笑) アウェイクニングボイスレッスンという歌のレッスンスクールを開講されていて、尚子しゃんも奏子ちゃんもそこの生徒さんだったそうで。 2人の先生なら気になる!ということで、一回完結型のWSに参加してみたのでした。 正直その時はね、小さくて可愛らしい方だな、って印象だけだったん

          あじさい技芸祭・出演者紹介⑤

          あじさい技芸祭・出演者紹介④

          では歌い手の紹介に移ります。 写真は結成配信ライブの時の(笑ΦωΦ) めとめとひらくのメンバーでもある佐藤尚子さん。 小沼は尚子しゃんと呼んでいます。 (ちなみにこの「○○しゃん」呼び、始めたのは2013年に出演した、芸術集団れんこんきすたさんの「雲隠れシンフォニエッタ」の現場から。 「年上だけどため口で話せる親しさの人」をこんな風に呼んでる子が居て移りました笑) 小沼が唯一持っているオリジナルソング「プリズムソング」の生みの親。 初めて会ったのは確か…昨年9月かな?

          あじさい技芸祭・出演者紹介④

          あじさい技芸祭・出演者紹介③

          踊り手最後のご紹介はこちら。 hirocoちゃん。 初めましては2014年のIMT旗揚げ公演・音楽劇「ジャンヌ・ダルク~フランスの大地に聴け」。 役者、踊り手、歌い手、とそれぞれで分かれて稽古する事が多かったので、hirocoちゃんともそこまでたくさんお話したわけではなかったのだけれど。 「おぬまんが一緒に袖に居ると安心する」と言ってくれた事をいまだに覚えてます。嬉しくて(笑) オープニングで歌いながら、踊るhirocoちゃんと目が合うたびに泣きそうになってたなぁ(笑)

          あじさい技芸祭・出演者紹介③

          あじさい技芸祭・出演者紹介②

          2人目は北村真帆(きたむらまほ)ちゃん。 お写真はTwitterから拝借しました。 (ツーショットないから今度撮ろうね笑) 初めて会ったのは昨年7月の岡島沙緒梨劇場。 三瀬さんととっても素敵なダンスを披露してくれました。 その時のあたしの歌を聴いて「踊りたい!」と言ってくれた言葉にがっつり甘え(笑)、10月の岡島沙緒梨劇場でコラボ。 神馬彩ちゃんにも声を掛けてくれて、とっても素敵なパフォーマンスをしてくれました。 ちなみに、ソロパフォーマンスもめっちゃ素敵だったんだよ!

          あじさい技芸祭・出演者紹介②

          あじさい技芸祭・出演者紹介①

          そんなわけで。 小沼の神社愛をぶちまけたところで、今度は一緒に奉納して下さる皆様への愛をぶちまけたいと思います← まずはこの方。 小早川泉(こばやかわいずみ)さん。 初めましては、「戦国北条記─虹は東に─」の時。 でも、公演中はそこまで親しくお話させて頂いた事はありませんでした。 なのに、何で誘わせて頂いたのかと言えば。 完全に直感(笑)確か、LINEやらFBメッセンジャーやらで、皆様にお正月のご挨拶をさせて頂いてた時に、泉さんは丁寧にお返事を下さった方の一人で

          あじさい技芸祭・出演者紹介①

          神社で歌うということ。②

          こちらの続きです。 運命の出会い(笑)から3か月。 10月の半ば、小沼は埼玉県は北本市におりました。 ヘイワールドというショッピングモールがあるのですが、ご縁があってそちらで歌う機会を頂きまして。 (しかい軽い気持ちで引き受けたはいいけどマジ遠かったぜ北本) 控室に行くと、あたしをお誘いして下さった主催の方が、1枚のチラシを目の前に置きました。 「ここのライブ終わったら、こっちも出てね!」 「………………はい?」 チラシには「鴻巣ロックフェス」の文字と、そしてまごう

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          神社で歌うということ。②

          神社で歌うということ。①

          アメブロがあった頃に記事にして書いたのですが、あたしが初めて神社で歌う事になった時の事を書こうと思います。 というか、何でそもそもこんなに神社が好きかというとですね。 きっかけは 何となく御朱印帳を買ってしまったからでした。←2015年の1月頭。 浅草の今戸神社に行った時のことです。 こちらは、招き猫発祥の地として有名な、浅草七福神のひとつ。 神主さんがイラストレーターさんで、とっても美人なんですよー♡ 御朱印帳に使われているイラストも、こちらの神主さんのデザインだとか

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          神社で歌うということ。①