エピソード6「たいせつな」
その日も、またいつかの日と同じように、僕の前には彼の姿があった。
特に何て事のない話をしながら、ギターの弦をつまびいて遊ぶ。
「練習」なんて名目はあるものの、正直大した事なんて一つもしていない。
開けた窓からやわらかく差し込む陽射しと風と、ギターの音。
それだけでいいや、と思う。
向かい側の彼は、その視線を手元に落として、指を懸命に動かしている。
まぁ、大抵は10分くらいで飽きて、煙草を吸ってのらりくらりして、それに飽きたらまた始める、って感じだけども。
楽しいんだか楽しく