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車内の香りとBirdy。
Come on,skinny love,just last the year...♪
車に入った瞬間、篭っていた冷気と共に香水の香りが鼻腔を冷やして癒す。風が遮断された空間で立ち上る香りは、ずっと私が欲していた私だった。Birdyの美しい歌声が私を祝福している。
前から欲しかった香水をようやく買うことができた。今月の給料日までの仕事はこれがやる気を出させてくれていた。
店で再び手に取ったそれはやはり変わらず私の好みの香りだったけれど、他の商品にも目移りしてテスターをあれこれ試したけれど、欲しかった香水は10回以上テスターを試していて、やっぱりこの子だなと決断した。
今日香水を付けずに家を出たのは君のためよ、とプッシュ。
その後いつものように長居した書店でも本を手に取るたびに香り、自然と堂々と歩いていた気がする。香水は自分に自信をくれるのかもしれない。
日が落ちるのが早くなった。洋服を見ていたら気づけば寒さも増して暗くなっていた。
車内の静寂を飾るミドルノートはパープルピオニーやサンザシ。寒さと香りだけで何とも言えない切ない癒し。
冷気を震わすのはBirdyのSkinny Love。
哀しく愛を叫ぶBirdyの歌声で私は映画のラストシーンにいるみたい。それならきっと私はいい女役で、主役で、言葉も心も通じなくなってしまった男に怒りの顔を見せ、独りで泣いている弱い人で、それはそれは美しいバッドエンドを迎えるんだわ。そして最後まで寄り添っていてくれるのはこの香水で、撮影後も演技から抜け出せなくなってしまった私に、憎らしい、けれども愛おしい、そんな愛を植え付ける。肌や髪の色が無彩色にフェードアウトしていき、ブルーがかったモノクロで映画は終わる。
こんな妄想を掻き立ててくれるから、きっと私とこの香水は相性がいいのかもしれない。なんて、いい女を演じてクサい台詞だけ置いてけぼり。
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