音痴が語る「歌が下手でつらかったこと」

歌下手の人たちならわかることだろう。
歌が下手というだけで人生の多くを損している。

おれ自身、人生を振り返った時に

「歌がうまければ・・・」

と思うことは何度もあった。


例えばカラオケの場面。

カラオケと言えば2次会の定番である。

会社の人なら、友達なり楽しく騒いで飲んだら次はカラオケに行こー!!
となるのがほとんどだ。


おれはカラオケが本当にいやだ。

別に最近の曲を知ってるわけでもないし、盛り上がる曲を気持ちよく歌えるわけでもない。
1次会は楽しいし、たくさん笑ってみんなを楽しませる。
しかしカラオケに行くと、胸が苦しくなりさっきの勢いはどこへやら、
借りてきた猫のようにシュンと小さくなる。なぜなら、

カラオケで無理やり歌わされた結果、
下手すぎて盛り上がってたみんなが渋い顔をするのが
苦痛でしかたがない。


大学時代の合コン

大学時代、友達に誘われた合コンにウキウキで参加したら
カラオケが個室についてる居酒屋だった。
大きな四角いテーブルが真ん中にあり、男女8人ぐらいがその周りに座る。
部屋の左奥にはカラオケの機械が置いてあり、マイク2本と、歌詞を表示するであろうディスプレイ。

一気にテンションが下がった。本当に歌いたくない。
当時ルックスには自信があった。人生初の合コンでモテることを
本当に楽しみにしていた。
なぜ合コンでいきなり歌を歌わされなきゃいけないんだ。
その場から逃げ出したかった。

「カラオケがついてる個室にしたんだー♪」

女の子の幹事が言う。


本当に余計なお世話である、、。


世の中歌いたいやつだけじゃない。
歌いたくない人もたくさんいるんだ。

なぜ歌がうまい奴、カラオケが好きな奴というのは
世の中全員がカラオケ好きで歌いたいと勘違いしているのか。

自分の楽しいことは他人の楽しいことではない。

合コンが始まり簡単な自己紹介が始まった。
そのままお互いの大学のことや地元のことなどで話が盛り上がり、
人生初の合コンを楽しんだ。

「あれ?!これカラオケやらなくね?!このまま話が盛り上がって
終わるんじゃないか?!」

そんな流れを感じ、テンションが上がった。
安心したおれはリラックスして女の子とのトークを楽しんだ。

しかしそんな時、

バカ幹事が
「ねー!せっかくカラオケついてるんだから歌おうよー!!」

と言い出した。

ブチ切れそうだった。まじで楽しく話してるんだからやめてくれ。

強制的に女の子にマイクを持たせるバカ幹事。

「えーやだー。恥ずかしい・・・。」

という女の子


(いいぞいいぞ!!もっと抵抗しろ!!)

心の中で呟いた。



それでも食い下がるバカンジ、無理矢理にも曲を入れ、

「一緒に歌うなら〜」

と周りの女の子も説得に応じた。


一番恐れていたカラオケが始まってしまった。


歌い出した女の子たちは完全に歌いなれていた。
すごく可愛いし、お上手。
もう本当にしんどい。


女の子が歌い終わると当たり前のように
「次は男子が歌ってー!」
とマイクを渡される。

おれが拒否すると、
じゃあ、、、とお調子者の男が歌い始めた。

しっかりと場を温める。

みんなそれぞれ歌い、

「なんか歌わない?」
と女の子も男どももおれに聞いてくる。


「・・・いや、おれはいいや。。」


とさっきまですっごい楽しそうにはしゃいでたおれは
しょんぼりとテンションが下がってしまった。

それを見て

「めっちゃテンション下がってるじゃん!」

という女の子たち。


もうほっといて欲しい。


結局おれは何も歌わず、黙ったまま合コンを終えた。
場の雰囲気を壊してしまった自分と、
歌が歌が下手な自分への無力感。

普通にトークだけならいい印象を持ってもらってただろうに
歌が下手でカラオケに参加しなかったことで女の子から押される
「つまらない奴」という烙印が帰りの電車で自分を押し潰しそうだった。


「またこのメンバーで集まろう!!」とLINEグループもできて計画も立ったのだがそれ以来おれは一度も発言をせず遊びにも参加しなかった。

音痴ということは女性との関係を持つことの障害になることを初めて体で
知った1日となった。

3対3のカラオケ合コン

大学時代は最初の合コン以来、カラオケで歌うことはなかった。
カラオケに行こう〜!となればごめん用事あるからとそそくさと帰宅し、
どうしても行くことになればほとんど歌わず、歌ったとしても
酔った勢いでテンションが高いだけのどうでもいい曲を誰かの歌声に混じって歌う程度でその場をしのいだ。

大学を卒業し社会人となるも、会社の飲み会なども特にはなく、
接待でカラオケに行くこともない。

しかしうっかりカラオケに行ってまた自己否定に陥る出来事があった。

きっかけはめっちゃ女遊びしているイケメンの先輩との出会いだ。

「可愛い子たちと遊ぶから来なよ!!メンバーいなくてまじで困ってるんだよね!」

そのイケメンには仕事ですごくお世話になってたし、プライベートでも彼と仲良くしたかったところだ。もちろん行きます!と言いたかったのだが
その遊びの内容がカラオケだからおれは躊躇した。

「えー、、カラオケですか?おれ歌下手ですしいいですわー。」


「大丈夫だって!ふざけて歌って楽しめればそれでいいじゃん!まじ必要だから頼むから来てー」


何度も何度もLINEで断るおれを「絶対大丈夫だから!」と先輩はしつこく
説得した。その説得に負けて


(まぁちょっと軽く歌えばそれでいいか・・・。)


ついにおれは「行きます」と答えてしまったのだ。


いざカラオケでの合コンが始まった。
夜ではない。昼間のカラオケ合コンだ。
お酒は一滴も飲まない。

女の子の中に一人、めちゃくちゃ可愛い子がいた。
どうしようもなく可愛い。


「なんか歌ってよー」
と女の子にいう先輩。

こういうのは男からじゃん〜〜と返す女の子。

「・・・じゃあ。。」

と渋々マイクを持って先輩が入れた曲は
米津玄師のLemonだった。


おれはビビった。
鳥肌が立つほどうまかった。
もう米津玄師なんじゃないかというくらいうまかった。
歌い終わったあと、

「やばーッッ!!♡♡♡♡♡」

と拍手喝采の女の子たち。

もう終わったと思った。

その次には先輩ともう一人の連れが二人で
コブクロやらなんやらを歌い始めた
めっちゃ綺麗な歌声で完璧なハモリを披露。


楽しく歌おうって言ったじゃん??
なんでそんなしっぽりバラードやら歌うんですか???

つれもまたうまくて女性歌手の曲を自分の曲のように歌っていた。

死にたかった。大袈裟じゃなく死にたかった。

みんなでワイワイ歌うカラオケじゃない。
みんな歌い手の歌をじっくりと聞くカラオケ。

初めてこんなのを経験した。

女の子もめちゃくちゃうまくて
今度は女の子の歌に先輩がツレが即ハモリ初めて
女の子は目をハートにして感動っ。

おれがいる場所じゃない。

そんなこの世の地獄で
マイクを渡され歌うしかないから
おれ一人で歌った。


全員の顔が見える。
笑いをこらえている。

(うわっ、下手じゃん。なんでこいつきた?)

と言わんばかりの苦々しい顔で
さっきまで楽しそうだった女の子たちがこわばる。

おれが音程を外し
「ブフッ!」

と一番可愛いなと思ってた女の子が笑った。


もう歌はいいと思った1日だった。

本当に今思い出しただけでも胸が苦しくなるし
顔から火が出るほど恥ずかしい。


歌うまのイケメンに公開処刑にされ
こんなにも惨めな自分を見るのは生まれて初めてだった。

歌が下手というだけでここまで嫌な気持ちになって
人生を楽しめないことが悔しくて仕方なかった。


好きな子を車に乗せた時、
彼女の好きな曲を流した。

小さく鼻歌を歌う彼女が可愛い。

(あぁーー、、一緒に歌えたらなぁ。)

切なくなる。もう声が喉から漏れそうだ。
思わず歌ってしまいそうだ。
でもおれには許されないのだ。

好きなこと一緒に歌いたい。
歌を楽しみたい。

運転しながらさらっと口ずさんで
「上手だね!」
って彼女に言われたい。

ギターを始めた彼女に、ちょっとだけコードがわかるもんだから
教えてあげた。

「これがCコード、Gコード、Dコード。」

(あぁ。歌いたい。弾き語りがしたい。
コードだけ鳴らしたって仕方ないじゃん。このコードでチェリーだって歌えるじゃん。)

本当にもどかしかった。悔しかった。


女の子との出会いの場に誘われることはよくある。
しかし会場にカラオケが設置されてたらおれは行かない。
もう行かない。

歌が下手というだけで新しい出会いや付き合いを逃してる自分が
悔しい。でも行きたくないのだ心から。



歌で失敗した経験を書いたらキリがない。
ただめちゃくちゃしんどかった経験をここに書いた。
歌ってしんどかった経験だけでなく、
歌えなくてしんどい経験も。


何度も諦めたし、惨めな思いはした。


だけど今、おれはボイトレ教室に通っている

やれることはやりたい。
後悔はしたくない。
この先何十年、もう歌下手で惨めな思いはしたくない。
人生を楽しみたい。
そんな思い出勇気を持って、お金を出して通い始めた。

結果はどうなるかわからない。

ただこの記事や、僕の経験、挑戦が他の音痴で歌下手のみんなの希望になることを願っている。

頑張ろう。自分を変えてみよう。おれもやってみるから。









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