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【相互探求の文化づくり】プロダクト体験会レポート#1 | “聞く”ことから何を感じ取った?

聴覚障害者の困りごとを解決したいと、ONTELOPE(オンテロープ)代表の澤田真吾(さわだ しんご)さんが「音が目でわかるプロダクト」の開発に着手したのが約2年前。そこから社会実装に向けて、プロダクト開発を進めてきました。

プロトタイプ完成を機に、聴覚障害者の方の協力を得て、プロダクトの有用性を確認して特許を取得。プロダクト開発の目処がたったところで、「相互探求の文化づくり」を本格的に始動すべく、2023年4月2日に体験会を開催しました。


相互探求の文化づくりとは?

ONTELOPEでは、「プロダクトづくり」と「相互探求の文化づくり」の両輪でプロジェクトを行っています。このうち、相互探求の文化づくりの活動を開始したのは2023年2月でいま現在(※)、約50名のプロボノメンバーが参加しています。

ところで、「相互探求」とはどういうことなのでしょうか——。

この言葉を用いることになったきっかけは、PLAYWORKS株式会社が実施した「視覚・聴覚障害者との共創」というオンラインワークショップに澤田さんが参加した際、リードユーザーである視覚・聴覚障害者の1人の方の言葉に端を発します。

「相互理解はできないが、相互探求はできる」ということを話していたそうですが、澤田さんはその言葉にとても共感したそうです。

広辞苑によると、相互は「どちらの側からも同じような働きかけがあること」、探求は「ある物事をあくまでさがし求めようとすること」とあります。相互探求は1人では成り立たず、必ず自分以外の「誰か」が必要です。

たくさんの人と出会い(=自分以外の存在とつながる)、いろいろな違いを知っていき(=自分以外の存在を知り、気づく)、得た経験や情報を発信していく、そのサイクルを皆で回し続けることができる社会をつくることが、澤田さんが目指す「相互探求の文化」です。

※2023年11月現在

「聞こえの気づき」を広げる、体験会

今回の体験会の目的は、プロトタイプを触ったり、ノイズキャンセリング++ピンクノイズ +防音イヤーマフを使い音が聞こえない状況をつくり、ボードゲームをしたりして、「聞こえの気づき」を広げるということでした。参加者は6名、全員聴者です。

「音が目でわかるプロダクト」は、自分に届く音を視覚刺激に変換して、直感的に音がわかるシステムです。初めて見るプロダクトのプロトタイプに多少戸惑いながらも、参加者の皆さんに実際に装着してもらい、他の参加者がマラカスやカスタネット、カエルの鳴き声の楽器などを使って音を出し、それを目で見る体験が行われました。

音が目でわかるプロダクトのプロトタイプ

また、ボードゲームは『チャオチャオ』というウソを見破るゲームが行われました。

筒の中にあるサイコロの数字を見て、他のプレイヤーに数字を申告、伝えた数字が“ウソ”か“本当”か、他のプレイヤーは申告者の声や表情を観察し、判断します。見過ごされたらコマを進めることができ、ウソを見破られたらアウト、手持ちの別のコマでスタート位置からやり直しです。

このゲームでは、参加者の1人がヘッドフォンを装着し、外部音を遮断した状態でプレイしてもらいました。ゲームを終えた後に感想を聞いてみると、「音が聞こえないので、表情をよく見ていました」とのこと。声や会話のテンポなどによる非言語コミュニケーションに無意識に頼っていることに気づいたという方もいたようです。

実際の体験会の様子は以下の動画をご覧ください。

実は、社会は音から情報を得ることが前提でデザインされています。デザインというと、壮大なクリエイティビティあふれるものをイメージしがちですが、身の回りのもの、例えばボールペンひとつをとっても、ノック式であれば芯が出る時に「カチッ」と音が出ますし、電子レンジなどの家電製品は操作音・動作音などで状況を知ることができます。

このように聴者にとっては「音」が当たり前にあり、無意識的に「音」から情報を得ているということなのです。

内面をつなぐ世界を形成すること。それが「音が目でわかるプロダクト」

今回、体験を通して人は「聞く」ということから何を感じ取っているのか、その気づきを広げていきました。音を視覚刺激として聞いてみると、音の認知がどれだけ複雑なのか、身をもって感じた参加者もいたようです。

私たちは一人ひとり違う現実を生きていますが、会社や学校、家族など何かしらの社会や集団の中に存在し、その文化の中で生活をしています。

「音が目でわかるプロダクト」は、この広い世界の中でたった1つの“モノ”でしかないかもしれません。ただ、その“モノ”が社会に浸透し、使用されながら私たちの内面をつなぎ、世界を形づくっていけると考えています。
 
より良い世界をつくるために、相互探求をし、人と社会の関係を知り続けるために、これからもONTELOPEでは、モノだけではなく目に見えない大切な何かを社会実装していきます。


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