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「金曜日の煮凝り」開発秘話-②

前回の記事では、「金曜日の煮凝り」は、原発処理水海洋放出決定をきっかけに構想が始まり、調べてみると可能性を秘めていたので商品開発に動いた、ということを書きました。今回の記事では、約1年かかった開発の具体的な裏側を中心にまとめています。

おのざきの煮凝りの方向性

商品開発の一番最初にやったことは、既に市場に出回っている煮凝り商品を片っ端から購入して食べてみたことです。他社商品をすべて食すことで、これから開発する煮凝りを他社商品とどのように差別化していくかを決めるためです。そもそも煮凝り商品をオンラインで販売している事業者は、確認できる限り3社ほどしかありませんでした(笑) すべて取り寄せて食べてみると、、、どれもなんとなく人工的な固さ!そして具材があれまぁ小さいこと。。煮凝りとは本来は天然のゼラチンで自然と固まり、食感はぷるぷるなのです。そこで我々は、他社との差別化を図るために、ぷるぷる食感でゴロッと具材が入った贅沢な本格自然派煮凝りを目指して試作を重ねることになりました。差別化要素はもちろんお客様にとってそれが必要であることが前提です。

「金曜日の煮凝り」の他社との差別化ポイント
・煮凝り本来のテクスチャ(おそらく日本一食感がぷるぷる)
・常磐ものだけを使用した具材がゴロゴロ(おそらく日本一具材が大きい)
・本物志向を大切にしたいので冷蔵販売(流通するほとんどの煮凝りが常温販売を実現するため強引に煮汁を固めている)

何かを取れば何かを捨てる。

お世話になっている食品会社の社長から以前にこう言われたのを思い出しました。「いいかい、小野崎君。商品開発は複数同時に進めなさい。」
商品開発には障壁がつきもので、大抵はうまくいかないのです。だからこそ、どれか一個がボツになっても、他のどれかが一個でも生き残って無事商品化できるよう、商品開発は複数同時に進めるのがセオリーということです。まさしく我々もいくつもの壁にぶつかりました。

障壁①「温度帯」
ひとつめの障壁は、販売する「温度帯」です。売り手の都合で恐縮ですが、やはり販路拡大を考えると、冷蔵・冷凍よりも「常温販売」可能にしたかった。(お客様にとっても常温の方が扱いやすくてよい?)しかし、本来の煮凝りにおいては、人工的に強引に固めない限りは常温販売などありえないのです。なぜなら、本来の煮凝りとは煮汁が冷えて自然と固まったものであるため、常温だと溶けてしまうからです。我々はホンモノの煮凝りを皆様にお届けしたかった。わがままだけども、それに加えて、流通の都合で常温販売を実現させたかった。両方を同時に実現すべく試行錯誤をしましたが、やはり技術上困難でした。それを乗り越えるためには大きな設備投資が必要と判明。非常に悩みました。。最初からそこまで投資できないので、まずは冷蔵販売でスタートを切り、やがてはホンモノ志向と両立させる形で常温販売を目指したいとは思っています。

障壁②「容器」
続いての障壁は、「容器」をどうするかの議論です。「瓶 or プラカップ」で意見が割れました。社内外で、「瓶」にすべきだとの意見多数。瓶派の意見としては、瓶は高級感が出る、一方でプラカップは世間の脱プラの文脈から避けるべきだというものです。しかし、大事にすべきは「お客様にとってそれがどうか」なのです。瓶は、運ぶのに重たいし、割れるリスクもある、そしてゴミを捨てるのが少々面倒です。瓶派勢力を少々強引に押し込み、最終的にはプラカップにすることにしました。実は、この容器論争で時間とエネルギーを割と食いました(笑)

瓶のサンプル。原価も高いですねー。プラカップは瓶のおよそ半額です。

障壁③「味付け」
最後の障壁は、「味つけ」です。お客様に、煮凝りだけで召し上がっていただくのか、ご飯にかけて召し上がっていただくのか、で味付けが変わってきます。そのまま食べるのであれば、味付けは薄めにした方がよいです。(ターゲットが首都圏30代女性なので、なおさら味付けはライトがよいです)一方で、白米にかけていただくのであれば、味付けは濃いめにした方がよいです。ただ、煮凝りの召し上がり方はお客様の好みでそれぞれですので、どの食べ方でも美味しく感じられるような味の濃さを目指すことにしました。
試行錯誤の結果、最終的には、具材である魚は個別にしっかり味付けして、ぷるぷる部分(煮汁)はあっさりな味わいにして、バランスを取りました。


以上のように、商品開発は予算が無限にあるわけではありませんので、技術的実現可能性と消費者思考のバランスを取りながら進めていかなければいけません。販路拡大を考えると、常温販売の方がよいが、技術的には冷蔵販売しかできない、といった具合です。何かを取れば何かを捨てないといけない局面が多いのです。商品開発では、最初からすべてを取ろうとするとそれなりの初期投資がかさみますので、販売しながらお客様の反応をみて少しずつ改良を加えていくのが理想的です。

冷えた白ワインと金曜日の煮凝り。最高のペアリングです。

今回もの記事も長くなりごめんなさい。。一旦ここまでにします。今回の記事では、商品開発の過程における苦労話を中心にまとめてみました。

記事の続きはこちらです(最終章)



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